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「リストラ助成金(労働移動支援助成金)」で労働者をクビにできるか 中編:社労士にとってのリストラ助成金編

2016/04/20

労働移動支援助成金について、前回の続きです。2部構成で行くつもりが思いのほか長くなってしまったので急遽3部作化。ということで、今回は中編です。

特に注釈がない限り、以下の記事でいう労働移動支援助成金は、再就職支援金(前回記事の①)を指します。

 

リストラ助成金でリストラが増えるか

この労働移動支援助成金に対する批判として、この助成金により企業のリストラが進むのでは、という懸念があります。

リストラを本来の意味でのリストラ、つまり事業のリストラクチャリング(再構築)が進む、という意味ではその可能性はあるかもしれません。不採算部門等を整理縮小し事業を再築する、という意味です。

しかし、単に労働者をクビにする、という意味でのリストラが増えるかといえば、これは疑問です。日本で正社員を解雇するのは難しすぎる上に、かなりのリスクを伴います。これは普通解雇であろうと懲戒解雇であろうと同様です(普通解雇と懲戒解雇の違いはなんですか)。

本助成金のメインである事業縮小のための整理解雇の場合は要件が少しゆるくなりますが、それでも「整理解雇の四要件」と呼ばれる4つの要件を満たさない解雇は、訴訟沙汰になれば企業側は思わぬ痛手を受けることになりかねません。特に、整理解雇に名を借りた恣意的な解雇に対しては裁判所は厳しい。

整理解雇の四要件

  1. 人員整理の必要性
  2. 解雇回避努力義務の履行
  3. 被解雇者選定の合理性
  4. 手続の妥当性

では、整理解雇等の対象となった労働者を計画通りに職業紹介事業者を通して再就職させて、労働移動支援助成金の支給が決定すれば、こうした解雇によって会社が負うリスクがなくなるかといえば、決してそういうわけではありません。せいぜい、整理解雇の四要件のうちの「2」を満たすぐらいです。

国が労働移動支援助成金の支給決定をした、というのは、つまり、国が、その解雇の正当性を認めたということではないのか、と思われるかもしれませんが、残念ながら違います。

なぜなら、助成金を支給するのは行政機関ですが、解雇の正当性を最終的に判断するのは司法機関たる裁判所だからです。三権分立という観点から見れば、行政が下した判断を司法がひっくり返すことなどいくらでもあるわけです。

いくら数十万円単位で助成金がもらえるとはいえ、その解雇が訴訟沙汰に発展すれば、そしてその訴訟で負けるようなことがあれば(というより、負けることのほうが圧倒的に多い)、数百万円単位の損害も十分ありえます。いくらなんでも割に合いません。

 

リストラ助成金は社労士の商品になりえるか

さて、助成金といえば社労士の出番であり、社労士にとっての重要な商品の1つでもあるのですが、このリストラ助成金の場合はどうでしょうか。

まず、大前提ですが、社労士にとって会社が労働者を解雇するほど怖いものはありません。なにせ、社労士には訴訟代理権がありませんから、裁判沙汰になった時点でその案件は自分の手を離れてしまいます。その一方で、解雇裁判の恐ろしさは弁護士が講師のセミナー等で聞かされ耳にタコの耳年増状態でもある。だから、会社が労働者を解雇したいと言い出した時、それをまず最初に止めるのは社労士だといっても過言ではありません。

それでなくても、労働者の解雇をきっかけにユニオンや監督署がしゃしゃり出てくる可能性だってあるわけですから、社労士で会社に解雇を勧めるような奴は、よっぽどの新人かバカだと思った方がいい。

なので、例えば、顧問ではない社労士が営業で「リストラ助成金どうですか?」なんて来たら、蹴飛ばして追い出した方がいいでしょう。

そもそも、この助成金を勧めるということは、「あなたの会社、ちょっとやばいから整理解雇でもしたら」と言ってるようなもの。相手の会社のことをよくわかっている顧問社労士ならともかく、どっかの野良社労士にこれを言われたらどこの会社も腹が立つのではないでしょうか。

なので、この助成金が社労士の商品になりえるかといえば、よっぽどのことがない限り難しいと言わざるを得ません。

中編はここまでです。次回こそ後編「厚労省はどうしようもないバカ編」をお送りします。

関連記事:「リストラ助成金(労働移動支援助成金)」で労働者をクビにできるか
前編:概要編

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名古屋の社労士事務所、川嶋事務所の代表で、このブログの筆者。 新しいこと、もの、特にIT関連が大好きで、社労士としては会社・労働者のITトラブル対策・就業規則作成が得意分野。 2016年4月から9月まで中日新聞で「働く人を守る労働保険」を連載、開業社労士専門誌「SR」に寄稿するなど、メディアでの執筆活動も。