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男女雇用機会均等法や育児・介護休業法に違反すると助成金がもらえなくなる!??

2016年3月20日

もう半月しかございませんが、今国会で雇用保険法が改正される見通しなのです。

大体の内容は同業者さんのブログその他で既に出ていますが、当ブログでも法案が国会を通ったら詳しく解説するつもりです。ていうか、改正点が多すぎて、わたしもブログでまとめておかないと頭に入りきりそうにない(笑)。

ただ、1点だけ、改正内容の中身を見て気になったことがあったので、今日はその話。

 

特定受給資格者となる条件

雇用保険法では、通常の失業者を受給資格者、会社の倒産や会社都合での解雇により失業した離職者を特定受給資格者、と分けて扱っています。

そして、後者の理由で失業した労働者のほうがより、手厚い補償が必要だろうということで、支給される失業手当についても優遇されています。

失業者が特定受給資格者となる離職理由は以下のとおり。

「倒産」等により離職した者
(1) 倒産(破産、民事再生、会社更生等の各倒産手続の申立て又は手形取引の停止等) に伴い離職した者
(2) 事業所において大量雇用変動の場合 (1か月に30人以上の離職を予定) の届出が されたため離職した者及び当該事業主に雇用される被保険者の3分の1を超える者が 離職したため離職した者
(3) 事業所の廃止 (事業活動停止後再開の見込みのない場合を含む。)に伴い離職した者
(4) 事業所の移転により、 通勤することが困難となったため離職した者
「解雇」等により離職した者
(1) 解雇 (自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇を除く。)により離職した者
(2) 労働契約の締結に際し明示された労働条件が事実と著しく相違したことにより離職した者
(3) 賃金(退職手当を除く。)の額の3分の1を超える額が支払期日までに支払われなかった月が引き続き2か月以上となったこと、又は離職の直前6か月の間のいずれかに3か月あったこと等により離職した者
(4) 賃金が、 当該労働者に支払われていた賃金に比べて85%未満に低下した (又は低下することとなった) ため離職した者 (当該労働者が低下の事実について予見し得なかった場合に限る。)
(5) 離職の直前6か月間のうちに[1]いずれか連続する3か月で45時間、[2]いずれか1か月で100時間、又は[3]いずれか連続する2か月以上の期間の時間外労働を平均して1か月で80時間を超える時間外労働が行われたため離職した者。事業主が危険若しくは健康障害の生ずるおそれがある旨を行政機関から指摘されたにもかかわらず、事業所において当該危険若しくは健康障害を防止するために必要な措置を講じなかったため離職した者
(6) 事業主が労働者の職種転換等に際して、当該労働者の職業生活の継続のために必要な配慮を行って いないため離職した者
(7) 期間の定めのある労働契約の更新により3年以上 引き続き雇用されるに至った場合において当該労働契約が更新されないことと なったことにより離職した者
(8) 期間の定めのある労働契約の締結に際し当該労働契約が更新されることが明示された場合において当該労働契約が更新されないこととなったことにより離職した者(上記(7)に該当する場合を除く。)
(9) 上司、 同僚等からの故意の排斥又は著しい冷遇若しくは嫌がらせを受けたことによって離職した者及び事業主が職場におけるセクシュアルハラスメントの事実を把握していながら、雇用管理上の措置を講じなかったことにより離職した者
(10) 事業主から直接若しくは間接に退職するよう勧奨を受けたことにより離職した者 (従来から恒常的に設けられている 「早期退職優遇制度」 等に応募して離職した場合は、 これに該当しない。)
(11) 事業所において使用者の責めに帰すべき事由により行われた休業が引き続き3か月以上となったことにより離職した者
(12) 事業所の業務が法令に違反したため離職した者

特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要(ハローワークインターネットサービス)

実は、今回の雇用保険法の改正で、この特定受給資格者の範囲の拡大が予定されています。

(厳密に言うと、上記の基準は厚生労働省令に定められているので、今回の改正をきっかけにこちらも変えてしまおうという魂胆と思われます。)

 

拡大される特定受給資格者の条件

具体的には以下のとおり。

  1. 賃金不払い
  2. 労働契約締結時からの労働条件の著しい相違
  3. 育児・介護休業法で定められた法的義務違反
  4. 妊娠・出産等を理由とする不利益取扱い関係の違反(男女雇用機会均等法違反)

参照:基本手当及び平成28年度末までの暫定措置について(リンク先PDF)

 

1と2については、現行の基準でも特定受給資格者となる可能性はありますが、今のものよりもさらに厳しくなる予定です。

また、3と4は特定受給資格者となりうる法違反を、育児・介護休業法と男女雇用機会均等法にも広げるものとなっています。

 

特定受給資格者を多く出すと助成金はもらえない

辞めていった労働者が受給資格者であろうが、特定受給資格者であろうと関係ない、とお考えの会社の経営者、人事・労務担当者の方は、それは甘いのです。

特に雇用保険の助成金をもらっている場合、何人も特定受給資格者を出すと助成金をもらえなくなる可能性があるからです。

例えば、障害者や高齢者を雇用した際にもらえる可能性がある特定求職者雇用開発助成金では、以下のような基準があります(文言は違えど、他の雇用保険の助成金にも大抵、こうした記載はある)。

次のいずれかに該当する事業主は支給対象となりません。

  1. 対象労働者の雇入れの日の前日から起算して6か月前の日から1年間を経過する日までの間に、雇入れ事業主が、当該雇入れに係る事業所で雇用する雇用保険被保険者(短期雇用特例被保険者および日雇労働被保険者を除く。以下同様)を事業主都合によって解雇(勧奨退職等を含む)したことがある場合
  2. 対象労働者の雇入れの日の前日から起算して6か月前の日から1年間を経過する日までの間に、雇入れ事業主が、当該雇入れに係る事業所で雇用する雇用保険被保険者を、特定受給資格者となる離職理由(※4)により、当該雇入れ日における雇用保険被保険者数の6%を超えて、かつ4人以上離職させていた場合
    ※4 雇用保険の離職票上の離職区分コードの1A(解雇等)または3A(勧奨退職のほか、事業縮小や賃金大幅低下等による正当理由自己都合離職等)に該当する離職理由をいいます。
  3. 高年齢者雇用確保措置を講じていなかったために高年齢者雇用安定法第10条第2項に基づく勧告を受け、支給申請日までにその是正がなされていない場合

 

要するに、1.で書いてあることは、同じ特定受給資格者でも、会社都合による解雇や退職勧奨の場合は1人でも出した会社は一発で助成金がもらえなくなるということ。

で、2.に書いてあることは、例え会社都合による解雇や退職勧奨ではなくても、雇用保険被保険者数の6%を超えて、かつ4人以上、特定受給資格者を出した場合はやっぱり助成金の支給はありません、ということなのです。

今回、新しく設けられる予定の基準はいずれも「1匹いたら30匹」ではありませんが、1人、そういう理由で辞めたら他に出てもおかしくないような理由ばかりなので、会社としてはいくら「6%超え、かつ4人以上」というハードルがあったとしても、気をつけないといけない。

というか、そもそも、上記の基準に引っかかるような会社がおかしいわけで、きちんと育児や介護する人のことをきちんと考え、男女差別することのない職場であれば、賃金未払いや労働条件の無茶な変更をすることもないと思うんですがね。

 

いずれにせよ、実際に省令がどのように変わるかについては、今後も注視する必要がありそうです。

 

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。行動経済学会(幽霊)会員 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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