労務管理

懲戒? マイナス評価? 遅延証明書のある遅刻とそうでない遅刻の違いとは

こちらの記事ですが、

ちゃんと早く家を出たのに!遅延証明書があっても「遅刻扱い」 これって問題ないの?

一昨日(5月28日)のヤフーニュースに載ってた記事で、内容を簡単にまとめると、「遅延証明書があってもノーワーク・ノーペイだから、基本、遅刻して働かなかった分の給与は出ないよ。でも、会社によっては払ってくれるところもあるかもね」というもの。

遅刻と遅延証明書の関係性の話かと思ったら、ノーワーク・ノーペイの解説で肩すかし食らってるヤフコメが多数あったので、今回は勝手に追記。

 

遅刻とノーワーク・ノーペイ

遅延証明書があっても、遅刻で働けなかった時間分の賃金が出ないのはノーワーク・ノーペイなので当然のこと。

所定労働時間が8時間の労働者が、電車遅延により1時間遅れて出社した場合、この1時間のあいだ労働者は労働していないので給与は発生しません。

もちろん、遅刻した時間分の賃金を控除しない会社もありますが、それは法律上義務づけられていることではないので、そちらの方が特別と考えてください。

ただ、こうしたノーワーク・ノーペイについては、労働者の多くは普通に受け入れているのではないでしょうか(遅早控除なんてのもありますし)。

 

遅刻と人事評価・懲戒

それよりも労働者が気になるのは、遅延証明書がある遅刻にもかかわらず人事評価への影響懲戒対象となってしまうのでは、ということだと思います。

寝坊のように労働者に責のある遅刻の場合、その労働者の評価がマイナスになったり、あまり頻発するようだと懲戒処分が行われることは避けられません(ただし、懲戒処分をするにはあらかじめ、その旨、懲戒規定に定めておく必要がある)。

その一方で、遅延証明書が出るような労働者本人にはどうしようもないことが理由による遅刻に対して、会社が人事評価をマイナスにしたり、ましてや懲戒対象とすることは人事権の濫用であると考えられます。

なので、遅延証明書がちゃんとある場合は、ノーワーク・ノーペイの分の賃金はしょうがないにしても、基本的には、人事評価や懲戒処分のことまで気にする必要はありません。

 

会社から見た遅延証明書

会社としても、遅延証明書のある遅刻と労働者に責のある遅刻の区別をつけるために遅延証明書の提出を求めていることがほとんどです。

すでに述べたように、後者の場合、あまり多いようだと減給や出勤停止などの懲戒処分も会社は考えないといけないからです。

逆に言うと、遅延証明書の提出を求めて、実際に労働者側がきちんと提出を行っているのに、その労働者を懲戒やマイナス評価の対象にするというのは、控えめに言ってその会社は何かがおかしい(笑)。

正直、何のために遅延証明書を提出させてるのかよくわかりません。

もちろん、遅延証明書のある遅刻であっても、労働者に全く責のない遅刻ばかりではないでしょう(遅延の多い路線を利用する労働者に関しては、それを見越した対応というものが求められる等)。

その場合は、その責に応じたマイナス評価や懲戒処分もできないことはないですが、基本的に遅延証明書がある以上は、会社がその遅刻に対してマイナス評価や懲戒処分することはできないと考えるべきでしょう。

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。行動経済学会(幽霊)会員 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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