監督署の臨検調査

平成28年度過重労働解消キャンペーン結果、調査対象の事業場数は大幅増も違反は減少傾向

2017年3月13日

例年11月に、数年前から毎年行われている「過重労働解消キャンペーン」。

平成28年度の結果が厚生労働省から公表されています。

今回過重労働解消キャンペーンとして調査が行われた事業場の数は7014事業場。

うち、労働基準法関係法の違反があったのは4711事業。

よって、調査した事業場あたりの違反率は67.2%。

この数字だけを見ると、相変わらず労働法違反の会社は多いなあ、という印象になってしまいますが、昨年や一昨年のデータと比べると、また少し印象が変わってくると思われるので、今回は過去の過重労働解消キャンペーンとの比較しながら、今回の結果を見ていきたいと思います。

 

調査数は右肩上がりも、違反率は右肩下がり

まず、平成27年度のキャンペーンで調査対象となった事業場数は5031事業場。

平成28年度が7014ですからなんと約2000の増。

一方、違反があった事業場の数は平成27年度は3718で、調査した事業場あたりの違反率は73.9%。

つまり、わずかとはいえ、事業場あたりの違反率は下がっているわけです。

ちなみに、26年度は違反率は83.6%もありました。

平成26年度の調査対象事業場数は4561ですから、この3年間で監督署がキャンペーン中の調査の数を増やす一方で、違反率自体は右肩下がりとなっていることがわかります。

平成28年度 平成27年度 平成26年度
調査がおこなれた事業場数 7014 5031 4561
労働法令違反のあった事業場数 4711 3718 3811
違反率 67.2% 73.9% 83.6%

 

「労働法なんてどこも守ってない」は少しずつ変わってきてる

違反内容ごとに見ても、年度を追うごとに違反率が下がっているのがわかります。

平成28年度 平成27年度 平成26年度
違法な時間外労働があった事業場数(括弧内は違反率) 2733(39.5%) 2311(45.9%) 2304(50.5%)
賃金不払残業があった事業場数(括弧内は違反率) 459(6.5%) 509(10.1%) 955(20.9%)
過重労働による健康障害防止措置が未実施のもの(括弧内は違反率) 728(10.4%) 675(13.4%) 72(22.7%)

過重労働解消キャンペーンのおかげなのか、ここ数年のブラック企業叩きなどで企業のコンプライアンス意識が高まっているからなのかはわかりませんが、いずれにしろ、着実に違反する事業場というのは減っていることになります。

なので、経営者の方々は「労働法なんてどこも守ってない」なんて言ってると、自分の会社だけ置いて行かれてる、ということになりかねませんので注意しましょう。

また「過重労働による健康障害防止措置が未実施のもの」だけ、やけに違反率が不安定ですが、これは以下で説明することと関係があります。

 

健康障害防止措置に対して厳しく指導が行われた平成28年度

さて、そんななか、平成28年度になって、急激に違反のパーセンテージを伸ばしてる項目があります。

平成28年度 平成27年度 平成26年度
過重労働による健康障害防止措置が不十分なため改善を指導した事業場数(括弧内は違反率) 5269(75.1%) 2977(59.2%) 2535(55.6%)

先ほど少し触れた「過重労働による健康障害防止措置が未実施のもの」と違い、上の表の項目は「過重労働による健康障害防止措置が不十分なため改善を指導したもの」となっています。

いずれも「過重労働による健康障害防止措置」の内容は同じで、以下の通達に書かれていることそれにあたります。

過重労働による健康障害防止のための総合対策(平成18年3月17日付け基発第 0317008 号)(リンク先PDF 参考リンク:厚生労働省)

あくまで、「通達」であり、「通達」通りにしていない事業場への対応が「指導票」ということからもわかるとおり、この防止措置に法的な義務や拘束力はありません。(指導の件数が不安定)

ただ、昨年の11月というのは、電通の事件が大きく取り上げられた後のことだったので、監督署も「過重労働による健康障害防止措置」に関する指導が今まで以上に徹底して行われたのでしょう。

 

行政指導に法的拘束力はないが・・・

行政指導には法的拘束力はないとはいえ、あまり反抗的でいると、痛くもない腹を探られる可能性もあります。

また、過重労働や過労死に対する行政からの指導は、今後も重点的に行われることが予想されます。

なので、次回はこの「過重労働による健康障害防止措置」について、詳しく見ていきたいと思います。

 

今日のあとがき

「過重労働解消キャンペーン」のことを書く度いってる気がしますが、このキャンペーンをやること自体は別にいいんですよ。

ただ、もう少し時期考えろって。11月に調査して、是正報告はどんなに早くても11月末か12月。

年末進行まっただなかじゃ、企業も改善に人員とか割けないし、手伝う社労士だって年末は超繁忙期なんだから。

 

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。行動経済学会(幽霊)会員 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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