労働関連法令改正

産業医の巡視や面接指導など平成29年6月改正予定の安全衛生施行規則の内容について

2017年3月8日

事業所の労働者の数が50人以上の場合、会社は産業医を選任しなければなりません。

Q4 監督署の調査で産業医を選任しなさいと言われました。産業医とは何ですか?

産業医とは、労働者の健康管理等に関して助言・指導等を行う医師のことです。

実は、昨今の長時間労働問題を受け、産業医制度などの、会社と医師の関係性について、その在り方などについて、労働政策審議会安全衛生分科会で変更が検討されています。

その結果、2月22日に行われた第100回の分科会で、法令(厳密には施行規則)の改正の方向性が見えてきたので、今回はその解説。

改正点は3つです。

 

① 産業医の作業場等の巡視

1つ目は、産業医の作業場等の巡視について。

現在の労働安全衛生法の施行規則では、産業医は、少なくとも月に1回作業場等を巡視し、労働者の健康障害防止のため必要な措置を講ずるものとされています。

これに関して、「会社(事業者)の同意」と「会社(事業者)からの情報提供(※)」があることを条件に「2月以内ごとに1回以上」に変更することが可能となります。

これは産業医の役割を果たす上で、単に職場巡視を行うのではなく、それ以外の手段を組み合わせた方が有効なのでは、との観点からです。

つまり、毎月1回の回作業場等の巡視を行うよりも、情報提供を受けた上で2ヶ月に1回巡視した方が効率が良いと判断されたわけです。

※ 具体的な情報提供の内容は以下の通り

  1. 衛生管理者が少なくとも毎週1回行う作業場等の巡視の結果
  2. 1に掲げるもののほか、衛生委員会等の調査審議を経て事業者が産業医に提供することとしたもの

 

② 健康診断結果の意見聴取

2つ目は健康診断の結果に基づく意見聴取について。

現行の労働安全衛生法施行規則では、健康診断の結果、異常の所見があると判断された労働者について、会社(事業者)はその労働者の健康保持に必要な措置について、医師等(産業医を含む医師)からの意見を聴取するものとされています。

今回の改正では、医師等に意見聴取を求めた際、医師等から当該労働者の業務に関する情報を求められた場合、会社(事業者)はそれを提供しなければならない、とされました。

異常の所見が見つかった労働者がどのような労働をしているかわかった方が、医師等からしてもより良いアドバイスができるため、こうしたことが義務づけられたようです。

 

③ 長時間労働の面接指導

3つ目は長時間労働者の医師による面接指導について。

1週間あたり40時間を超えて労働させた時間が100時間を超える労働者(※)が申し出た場合、会社(事業者)は医師による面接指導を受けさせないといけません。

ただし、労働者の申出あっての面接指導のため、そもそも申出がなかったり、そうしたことができることを知らなかったりなど、実効性に乏しいのが現状です。

今回の施行規則の改正では、会社(事業者)は、1週間あたり40時間を超えて労働させた時間が100時間を超える労働者が出た場合、その氏名および、その労働者の労働時間に関する情報を産業医に提供しなければならないとされました。

産業医は、労働者に対して面接指導を受けることを勧奨することができるので、これにより、労働者からの申出を増やそうという狙いです。

※ 残業時間が100時間ではないことに注意。例えば、1年単位である週の所定労働時間が土曜出勤で48時間となっていたとしても、40時間を超えたところから100時間を数える。

 

以上です。

どの改正も、施行期日は平成29年6月1日の予定です。

法律ではなく施行規則(省令)の改正のため、国会の動きとは関係なくほぼ間違いなく改正されるでしょう。

参考:産業医制度等に係る省令改正について(リンク先:PDF 参考リンク:厚生労働省)

今日のあとがき

相変わらずニンテンドースイッチのゼルダやってます。睡眠時間削ってます。

このゲーム、自分でやるのも面白いのもさることながら、このゲームは配信などで人がやってるのを見るのも面白いですね。

自分では思いも寄らないことを人がやってて、いや、そこはそれじゃ無理でしょ、と思ってたのにそれでもゲームが進んでる、みたいなことが多々。

ようは、クリア方法が一つじゃないってことなんですが、にしたってその種類が豊富すぎて、ほんとにこのゲームは懐が深いと感じますね。

 

川嶋事務所へのお問い合わせはこちらから!

良かったらシェアお願いします!

  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。行動経済学会(幽霊)会員 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

-労働関連法令改正