外国人雇用

平成27年度の技能実習生受け入れ事業所への監督署の調査数の増大がヤバイ件

2016年8月17日

8月16日付の厚生労働省の報道発表資料で、外国人技能実習生を受け入れている事業所、いわゆる実習実施機関に対する労働基準監督署の調査の平成27年度の統計情報が発表されています。

外国人技能実習生の実習実施機関に対する平成27年の監督指導、送検の状況を公表します

これによると、労働基準監督署が調査した5173事業場のうち3695事業場で、何らかの労働法違反があったそうです。違反率、実に71.4%。

ただ、この数字がものすごく高い数字かというと必ずしもそうではなく、例えば昨年11月に行われた厚生労働省の「過重労働解消キャンペーン」による調査では、5031事業場のうち、何らかの労働法違反があった事業数は3718、違反率は73.9%。

平成 27 年度過重労働解消キャンペーンにおける重点監督実施状況(リンク先PDF 参照:厚生労働省

過重労働解消キャンペーンの他、東京や大阪の労働局が出している監督署調査の実施結果を見ても、だいたい同じような結果です。

平成 27 年の定期監督等の実施結果を公表します(リンク先PDF 参照:東京労働局)

平成27年定期監督等の概要について(速報)(リンク先PDF 参照:大阪労働局)

 

実習実施機関だけコンプライアンス意識が低いわけではない

ひと昔前は、実習実施機関というのは、言葉は悪いですが、外国人をこき使ってやろう、みたいなイメージもあったかもしれませんが、こういった資料を見比べると現在は「技能実習生を受け入れているから」悪い事業場かといったら、必ずしもそうではないといえるのではないでしょうか。

アホなツッコミされたくないので言っておきますが、上のまとめはあくまで相対的に見た時の話をしているのであって、違反率が70%を超えてることを肯定的に捉えていませんからね。

技能実習生を受け入れていようがいまいが、同じくらいの割合で労働法に違反してる事業場があるよって話をしてるだけです。

 

実習実施機関に対する監督署の調査数が爆増

ただ、以前は技能実習生を受け入れている事業場のコンプライアンス意識が低かったのもまた事実で、5年前の平成23年の時点では、違反率が82%もありました。

それが、徐々に下がっていって、平成27年度の時点では71.4%になったわけですが、本題は実習実施機関での労働法に違反率が下がっているということではないのです。

この図を見てください。

実習生の図

外国人技能実習生の実習実施機関に対する監督指導、送検の状況(平成27年)(リンク先PDF 参照:厚生労働省

上の折れ線が違反率、平成24年は例外ながら、ほぼ右肩下がりです。

その一方で、年ごとに2つある棒グラフの左側の青の斜線の方、こっちが監督署が調査した事業場の数で、右側のあので塗りつぶされたほうがその内、違反があった事業場の数を示します。

見方はこんな感じ↓

実習生の図2

ほぼ右肩下がりの違反率よりも注目すべきはこちらでしょう。実習生の図3

監督署に調査された実習実施機関の数が、平成25年から平成27年にかけて爆増しております。

昨年、技能実習生をめぐるなんとも言えない事件の判決が出る一方、

東京五輪に向けて、現在の日本は人手不足で、技能実習生のちから無しには労働力の供給が足りない状況でもあります。

上記の図の結果は、監督署としてはかなり力を入れて取り締まりを行っている結果かと思われるので、技能実習生を受け入れる事業場ではこれまで以上に、コンプライアンスに気をかける必要があるでしょう。

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。行動経済学会(幽霊)会員 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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