副業・兼業

「副業による過労死」は副業の問題ではなく貧困の問題

2019年11月6日

続く副業・兼業の推進

働き方改革をきっかけに、これまで原則禁止という風潮の強かった副業・兼業について、政府が解禁を推進しているのは周知の通りです。

一方で、副業・兼業の解禁については過労死を誘発するとして反対する動きも根強くあります。

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副業・兼業の解禁は労働者の働き方の幅を広げるに過ぎない

ただ、政府は企業に副業・兼業の原則解禁を推奨しているものの、労働者に副業・兼業をしろとまでは言っていません。

当然ですが、副業・兼業をするかどうかは個人の自由です。逆に、企業が副業・兼業を禁止したままだとこうした労働者の選択肢(労働者が副業・兼業をする、しないの選択肢)は狭められることになり、ひいては憲法で認められる職業選択の自由の制限にもつながります。

いずれにせよ、副業・兼業の解禁、というのは、あくまで労働者の働き方の選択肢を広げるものであって、それ以上でもそれ以下でもないとわたしは考えます。

 

過労死の流れを考える

さて、過労死となる長時間労働の要因の多くは、会社側の業務命令で労働者が長時間働かされることにあります。流れにすると以下の通りです。

会社の業務命令で長時間労働 

→ 労働者側が拒めない 

→ 結果、過労死

 

しかし、副業・兼業の場合、まず、副業・兼業をやるかやらないかは労働者の方に選択権があるわけですから、流れは以下の通りとなります。

労働者が副業するかどうかは自由 

→ それが長時間労働となっても基本的には労働者の自己管理の問題 

→ 自己管理が上手くいかずに過労死(?)

 

自分で書いてて、なんともツッコミどころ満載の流れですが、いわゆる「副業による過労死」を起こそうとするとこうするしかありません。

おそらく、世の中に少なくない数いる「副業による過労死」に疑問を感じている人の多くも、上のような流れを頭に浮かべているからこそ疑問を感じるのでしょう。

 

生活的にどうしても副業・兼業しないといけない人たち

さて、現在の日本には副業・兼業しないと経済的に食べていけない、という人もいます。

「生活的にどうしても副業・兼業をせざるを得ず、結果、長時間労働をすることになり、最悪、過労死してしまう・・・」、というのは副業・兼業の解禁に反対する人たちがよく語るストーリーです。これも流れにすると以下の通りです。

生活的に苦しいので副業・兼業せざるを得ない 

→ 副業・兼業のため長時間労働となる 

→ 結果、過労死

 

この流れは、先ほどの例に比べると、かなり考えられる「副業による過労死」だと思います。

が、ちょっと待ってほしい。

そもそも「生活的にどうしても副業・兼業」しなければならないのはなぜなのか、という話です。

 

「副業・兼業による過労死」の本質は日本の貧困

彼らは、「副業・兼業が解禁されたから」、「生活的にどうしても副業・兼業」しなければならなくなったのでしょうか?

違いますよね。

生活的に苦しい、だから、副業・兼業しようと考える人たちというのは、経済的に貧困という境遇に置かれているからこそ副業・兼業をせざるを得ないのです。

(もちろん、それぞれの人たちが貧困に置かれている理由は様々で、本人に責任がある場合もあれば、社会的な理由の場合もあります。)

つまり、「副業・兼業による過労死」という問題の本質は日本の貧困にあるということです。

「副業・兼業による過労死」が貧困によって発生する以上、副業・兼業の解禁に反対したところで、「副業・兼業による過労死」を防ぐことはできません。

 

以上です。

論理的に見ていくと明らかですが、「副業・兼業の解禁」と「副業・兼業による過労死」に因果関係はありません。

そもそも、「生活的にどうしても副業・兼業」せざるを得ない人たちが副業・兼業を禁止されたら、もっと経済的に苦しくなるのは明らかです。

今日のあとがき

久しぶりに三連休を三連休として休むことができたので、三連休中の35時間くらいはこちらのゲームをやってました。

てか、そんだけやってまだクリアできないとか、どんだけボリュームあるんだ・・・。

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。行動経済学会(幽霊)会員 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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