就業規則

大規模災害と罹災証明書と災害見舞金

2019年10月15日

大災害と災害見舞金

先週末は観測史上でも類を見ない台風19号が東海・関東地方を直撃、大きな被害をもたらしました。

世の会社の中には、といっても、そのほとんどが大企業ですが、こうした大規模災害の被害に自社の社員が遭った際に、その社員に災害見舞金を支給しているところもあります。

一方で、実際にはほとんどこうした規定が使われることがないことから、規定はあるけれど一度も運用をしたことのない、という会社も少なくないでしょう。

今回はこの、災害見舞金の運用について。

 

災害見舞金とは

支給するかは会社の裁量

会社で定められている災害見舞金の多くは、基本的に「住居の被害」に対して支給するものとなっています。

災害見舞金は法律上に定めのあるものではなく、会社側の裁量で支給するものです。

そのため、会社に支給する義務がない一方で、住居の被害以外に人的被害に支給することも会社の裁量で自由にできます。また、支給は会社の裁量ではあるものの、すでにある災害見舞金規定を客観的合理的理由なくなくすことは労働条件の不利益変更となります。

 

全壊や半壊をどう判断するか

すでに述べたように、一般的な災害見舞金では、住居の被害について「全壊ならいくら」「半壊ならいくら」といった形で支払われます。

一方で、いざ災害見舞金を支給するとなると、この「全壊」や「半壊」の判断をしなければなりません。

これらをどのようにして判断するかというと、地方自治体が交付する「罹災証明書」で判断するのが普通です。

 

罹災証明書

大規模災害により住居に被害があった場合で、被災者から申請が遭った場合、その地方自治体は罹災証明書を交付する義務があります。

罹災証明書は、被災状況に応じた被災者への支援策(義援金の給付、勢・社会保険の減免、猶予等)の適用に利用されるものです。

この罹災証明書では住居の被害を調査し、そこから以下の4区分による判定を行います。

被害の程度被害の程度
全壊50%以上
大規模半壊40%以上50%未満
半壊20%以上40%未満
半壊に至らない(一部損壊)20%未満

(この罹災証明書の申請については、各地方自治体によって申請方法や書式、受付期間等が異なるので、被災された方は自分の住んでいる自治体の罹災証明書の申請について調べておく必要があります)

 

罹災証明書と災害見舞金規定

よって、会社としては罹災証明書の判定を基に災害見舞金を支給すればいいわけですが、運用上、判断に困ってしまうのは、罹災証明書の判定と災害見舞金規定の基準に違いがある場合です。

わかりやすいのは災害見舞金規定に「全壊、半壊、一部損壊」の3つしかない場合や、罹災証明書の判定にない「床上浸水」などがある場合です。

前者の場合、無理矢理罹災証明書の判定に合わせることもできますが、後者の場合はやや複雑です。

そもそも床上浸水の場合「半壊以上」の判定になりやすいはずですが、では、その場合「半壊」と「床上浸水」の2項目分を合算して払うのかどうか、といった判断が必要となります。

 

こうしたことを踏まえると、災害見舞金について規定する場合は、罹災証明書の内容に合わせた方が運用上、手間も少なくわかりやすいといえるでしょう。

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。行動経済学会(幽霊)会員 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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