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就業規則

就業規則で正社員やアルバイトの定義付けすることが重要な理由

2017/02/02

こちらの記事で解説しましたが、

正社員やアルバイトなど、世間一般と法律でズレのある労働者の契約区分の話

世間一般で使われる労働者の契約上の名称と、法律上では大きなズレがあります。

このズレによって、会社にどのような不都合があるかというと、最も大きいのはコンプライアンス上のものです。

例えば、パートタイム労働法では、労働契約の際、労働基準法で義務付けられている事項の他に「昇給、賞与、退職金の有無」と「相談窓口」について明示するよう会社に義務付けられています。

名称はどうであれ、労働時間が「通常の労働者の所定労働時間よりも短い」労働者はパートタイム労働法の適用を受けるので、アルバイトやパートの他、嘱託社員や限定社員などの場合も「通常の労働者の所定労働時間よりも短い」場合は、上記の事項を契約の際に明示しないと、違法となります。

つまり、世間一般的な名称のイメージだけで法律を守ろうとすると、漏れが出る可能性があるわけです。

そうしたことを避けるにはどうしたらいいかというと、就業規則で労働者の定義付けをきちんと行うことです。

そして、この定義付けはコンプライアンスだけでなく、労使トラブルの予防にもなります。

今回はその解説。

 

例えば、定義が曖昧だとどうなるか

労働契約に様々な形態がある理由は、労働者側からすると自分都合に合わせた契約を結ぶため、というのが大きいと思いますが、会社からすると身も蓋もないですが人件費を抑えるためです。

しかし、例えば、正社員にのみ賞与と退職金を支給し、パートやアルバイトには支給しないとしている会社があったとします。

そして、その会社でずっと働いていたパートさんが会社を辞めるときになって「退職金を払え」と言ってきたらどうでしょうか。

「いやいや、うちではパートには退職金払ってないから」と言っても「就業規則や労働契約にはそんなことは書いてない」と反論されると、会社としては苦しいところがあります。

規則以上に慣例も重要視されるのが労働法の世界ですが、労働者に甘いのも労働法の世界ですからね。

 

定義と定めが車輪の両輪

上記の例だけ見ると、じゃあ、パートタイマーやアルバイトに賞与や退職金は支払わない、と就業規則や労働契約に書いておけば済む話のように思えます。

まあ、それで済むことも多いのですが、じゃあ、パートタイマーやアルバイトと他の労働者、すなわち、正社員と何が違うの? となると、法律上に明確な区分はないので「実質的には正社員だった」などと主張される可能性もあります。

定義が重要、というのはそのためです。

つまり、正社員とそれ以外の労働者の扱いを分けたい場合、規則で別の扱いをする定めをすることと、正社員とそれ以外の労働者の定義を明確化することは、いわば車輪の両輪、切っても切り離せないわけです。

 

モデル就業規則が不完全な点

では、具体的にどのように定義すべきなのか。

こちら、厚生労働省のモデル就業規則から引っ張ってきたものですが、

(適用範囲)
第2条 この規則は、    株式会社の労働者に適用する。
2 パートタイム労働者の就業に関する事項については、別に定めるところによる。
3 前項については、別に定める規則に定めのない事項は、この規則を適用する。

シンプルというか、最低限というか「労働者」と「パートタイム労働者」で区切ってはいるものの、「労働者」がどういう人で、「パートタイム労働者」がどういう人なのかさっぱりわかりません。

それでも、この2つしか契約形態がないのであれば問題はありませんが、「契約社員」や「嘱託社員」がいる場合、これらはどちらに当てはまるのか、ということで一悶着起きそうです。

去年のうつ病社労士の件以降、連合会からは「厚労省のモデル就業規則をあんま批判すんな」みたいなお達しもありますが、いろいろと足りてないんだからしかたない。

 

定義の例

なので、例えば、以下のように定めると、定義が明確化します。

 

(適用範囲)

第 条 社員とは、第 条で定めるところにより会社と期間の定めのない労働契約を結んだもののうち、職務の内容および勤務地に制限がなく、会社の基幹的業務に携わるものをいう。

2 本就業規則は特に定めのない限り、社員にのみ適用し、次の各号の者については、別に定めるところによる。ただし、定めのない事項については、この規則を適用する。

  1. パートタイマー(期間の定めの有無にかかわらず、週の所定労働時間が社員よりも短い者)
  2. 契約社員(期間の定めのある労働契約を結ぶもので、主に○○の業務に携わるもの。契約期間が通算して5年以上となり、労働者が希望して無期契約となったものも含む)
  3. 嘱託社員(定年再雇用により、嘱託社員契約を結んだもの)

正社員という言葉は広く一般化していますが、法律上の定義はありません。なので、会社が自由に定義付けられる上、明確化しておくと他の非正規と混同しにくいので1項で明確化し、2項では他の契約形態の定義付けを行っています。

 

別規定は必ず定める

最後に重要なのが、社員以外のパートタイマー等の規則の「別規定」。

厚労省のモデル就業規則でも、わたしのモデル規定にも「別に定める」の一文がありますが、これをどこに記載するかです。

就業規則の条文に「ただし、パートタイム労働者は○○とする」みたいに書くのがいいのか、それとも別規定で「パートタイマー就業規則」みたいなものを作ったほうがいいのか。

個人的には後者のほうが、正規とそれ以外の違いが明確化していいと思いますが、両者の労働条件にほとんど差がない場合は本規則に付け加えるくらいでもいいと思います。

最悪なのは「別に定める」と書いておきながら、別に定めてない場合で、この場合、パート等にも正社員待遇の条件が当てはまる可能性が高くなります。

「別に定める」と記載した以上は、必ず「別に定める」べきでしょう。

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名古屋の社労士事務所、川嶋事務所の代表で、このブログの筆者。 新しいこと、もの、特にIT関連が大好きで、社労士としては会社・労働者のITトラブル対策・就業規則作成が得意分野。 2016年4月から9月まで中日新聞で「働く人を守る労働保険」を連載、開業社労士専門誌「SR」に寄稿するなど、メディアでの執筆活動も。