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IT 労務管理

企業が考えるAIと働き方の報告書「IoT・ビッグデータ・AI等の普及・進展による雇用・労働への影響を検証」

IoT・ビッグデータ・AI等の普及・進展による雇用・労働への影響を検証3ページより

厚生労働省のサイトに以下のような報告書が上がっています。

IoT・ビッグデータ・AI等の普及・進展による雇用・労働への影響を検証(リンク先PDF 参照:厚生労働省

どういった内容かというと、民間のリサーチ会社が民間企業に対して、現在のAIの活用状況や今後の予定や見込みなどをアンケート形式とインタビュー形式で調査したものをまとめたものです。

100ページを超える気合いの入った報告書なので、全てをここで解説できないので、今回は報告書で気になった部分をみていきたいと思います。

 

報告書の内容をざっと解説

企業のAIへの関心は高まっている

まず、全体的な傾向として、企業のAIへの関心は非常に高まっていることが報告されています。

というのも、AIを「すでに活用している」企業は4.3%にとどまるものの、「活用する計画・予定がある」は14.9%、「将来的に活用したい」は59.4%もあり、一方「活用するつもりはない」はわずか3.1%しかありませんでした(残りは「わからない」)。

また、AIと仕事というテーマとなると避けて通れないのが、「AIが人間の仕事を奪うのではないか」という懸念です。

確かに全体としての雇用量は減るかもしれないと考える企業は少なくなく、「(雇用量は)全体としては増加する」と考える企業は10.4%しかいないのに対し、「全体としては減少する」と答えたのは34.6%でした(ただし、一番多いのは「変わらない」の44.3%)。

ただ、AIを導入することによるプラス・マイナスで考えると、業務が効率化されることや新しい価値を創造できる可能性があることなどのプラスの影響の方が大きいと考える企業が約半数を占めています。

 

AIによって労働者の業務はなくなるか

では、企業で働く労働者とAIについてどう考えているかというと、AIが必ずしも業務の全てを代替するとは考えておらず、あくまで一部にとどまるとの意見が大半で、また、AIによる業務の代替や支援によって生まれた余剰時間については、他の新しい業務にシフトさせたいと考えているようです。

当然、代替されたあとでは新たな業務に就かせるのは困難なため、そうした従業員に対し再教育が必要です。

多くの企業もそれはわかっているようで、AIによる業務の代替で既存の社員の再教育が必要となると思う企業は「そう思う」「ややそう思う」を合わせて6割を超えています。

ただし、すでに実際に対策を講じている会社はわずか4.9%にとどまっていて、これからの課題となっているようです。

以上が今回の報告書のざっとしたまとめですが、ただ、今回の報告書には様々なバイアスがかかっていることも忘れてはいけません。

なので、本記事を読んで興味を持った方に対し、ここから先は報告書を読む上で最低限押さえておいた方がいい事柄をいくつか上げてこの記事を終わりたいと思います。

 

今回の報告書にかかるバイアス

答えている人はAIの専門家ではない

まず、最初にチラッと書きましたが、今回の報告書は企業がAIについて答えたものだということ。

よくある「AIが将来人間の仕事を奪う」みたいな論文や記事というのは、たいていAIなどの専門家やそれ以外を専攻する学者さんたちが、現在の技術やそこから導き出される将来的な技術のことを加味した上で予想が行われています。

しかし、今回厚生労働省が発表した報告書というのは、そうした専門家からみた「AI」ではなく、実際にそれを業務で活用することとなる、あるいはすでに活用している企業の声となっています。

つまり、AIの専門家が答えた内容ではないので、一部では意見に根拠がなかったり、技術面などを無視して希望的観測などで語られている箇所が存在すると考えられます。

また、すでにAIを導入しているかどうかでも、答えの内容は変わってくるはずですが、統計データだけだとそのあたりを読み取ることはできません(ただし、報告書の後半ではAIを積極的に活用している企業のインタビュー調査も載っている)。

 

主に答えているのは都市部の大企業

また、より重要なのは、今回の報告書で調査に協力した会社は、依頼された会社10000社のうち1375社と全体の13%にすぎず、おまけにこの13%のうち、約93%が規模300人以上の中規模以上の会社で、うち、一般に大企業と呼ばれる500人以上の会社だけで60%以上を占めているという点。

その一方で100人未満の中小零細の回答数は全体のたった0.3%(数で言うと4社)。

つまり、今回の報告書の回答というのは、中小零細企業の考えというのはほとんど反映されておらず、中規模から大規模以上の会社の考えであることがうかがえます。

また、回答に協力した企業の所在地でもみても、東京が34.4%、大阪が9.7%、愛知が8.0%、神奈川が4.9%と、大都市圏だけで過半数を超えています。

よって、国の調査だから国全体の企業の考えや意見がこの報告書に反映されているか、というと、そうではなく、都市圏の大企業の考えが今回の報告書には色濃く反映されていることを踏まえて読むべきでしょう。

 

逆に言えば、都市圏の大企業がAIなどに対してどのように考えているかを知るには非常に有効な資料と言えます。

就活生は四季報(今どき読むのかしらんが)よりこちらを読んだ方がいいかも(笑)。

今日のあとがき。

今回の報告書はあくまで「企業と労働者とAI」といった内容でしたが、実際には会社内でAIの活用が進み業務が変われば、それ以外の取引先との関係も変わってくることが予想されます。

当然、社労士なんかも影響が大きいはずですが、世の中が便利になることに抗わないのが社労士である以前の人としてのわたし川嶋なので、どうなるのかみていきたいものです。

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名古屋の社労士事務所、川嶋事務所の代表で、このブログの筆者。 新しいこと、もの、特にIT関連が大好きで、社労士としては会社・労働者のITトラブル対策・就業規則作成が得意分野。 2016年4月から9月まで中日新聞で「働く人を守る労働保険」を連載、開業社労士専門誌「SR」に寄稿するなど、メディアでの執筆活動も。