労働関連法令改正

「同一労働同一賃金」で改正される法律とその方向性とは?

2017年4月12日

先日発表された「働き方改革実行計画案」。

働き方改革実行計画案(参照:働き方改革実現会議)

労働に関する、今後の法改正や労働行政の方向性が多岐にわたり記載されており、企業としても我々社労士としても、ある程度、今後の指標となる内容となっています。

なので、これから1ヶ月くらいこの計画案を細かく見ていけば、これを肴にブログ記事を書くこともできなくもなさそうですが、わたしが飽きそうなので重要な点をいくつかの記事に分けてピックアップしていこうかと思います。

今回はその中から「同一労働同一賃金」について。

 

日本版「同一労働同一賃金」

まず、大前提として現在日本で話し合われている「同一労働同一賃金」とは「会社内同一労働同一賃金」と呼ぶべきものであり、会社の枠を超えて「同一労働同一賃金」とする海外のそれとは大きく異なります。

会社内での同一労働同一賃金が求められる理由は、簡単に言えば正規と非正規のあいだに格差があるからです。

そのため、今回の計画案ではこの格差の解消に向けて、以下の3つの法律の改正を示唆しています。

  • パートタイム労働法
  • 労働契約法
  • 労働者派遣法

では、政府は同一労働同一賃金の達成のために、これらの法律をどのように改正しようと考えているのでしょうか。

 

同一労働同一賃金に反したからといって捕まるわけではない、が

まず、法改正の方向性として、計画案では以下の記載があります。

(同一労働同一賃金の)ガイドライン案の実効性を担保するため、裁判(司法判断)で救済を受けることができるよう、その根拠を整備する法改正を行う。

働き方改革実行計画案(参照:働き方改革実現会議)

つまり、同一労働同一賃金に反する会社に雇われた労働者が、これは同一労働同一賃金ではないからきちんと賃金を支払え、と法的に訴えた際に、労働者により有利になるよう法改正をしていくわけです。

これは、言い換えれば、同一労働同一賃金に反したからといって、労働基準監督署に送検・逮捕されるということは考えづらいわけです。

まあ、そもそも、賃金を含む労働契約とは、当事者同士の合意で決められるものであり、第三者が勝手に介入できるものでもありませんしね。

 

法改正の具体的内容

この方向性を踏まえて、具体的に見ていきましょう。

① 労働者が司法判断を求める際の根拠となる規定の整備

パートタイム労働法では複数の条文で、労働時間の長短によって、不当な差別をしてはならず、他の通常労働者と均衡の取れた待遇をしなければならないということを規定しています。

その一方で、有期契約労働者や派遣労働者についてはそうした規制が不十分であったり、そもそもなかったりするので、パートタイマーも含めて均等待遇および均衡待遇の規定の明確化を図るようです

 

② 労働者に対する待遇に関する説明の義務化

計画案の「同一労働同一賃金」では、結局最後は「訴訟」による解決となることが示唆されています。

ただ、会社と労働者とでは持っている情報が違うため、企業側しか持っていない情報があるがために労働者側が訴えを起こせないということがないように、計画案では「正規と非正規の待遇差」の理由を説明義務を課すようです。

現実に訴訟までいかなくても、例えば話し合いでの解決になったとしても、労働者側が不利にならないための措置です。

いずれにせよ、会社は正規と非正規のあいだの賃金の違いについて説明できるようにしておく必要がありそうです。

 

③ 行政による裁判外紛争解決手続の整備

「結局最後は訴訟で解決」なのが計画案の同一労働同一賃金ですが、訴訟には負担を伴うため、裁判外紛争解決手段(行政ADR)を整備していくことで、無料の解決手段を増やす方向のようです。

 

④ 派遣労働者に関する法整備

派遣についてはまず、派遣先に対し、派遣元へ派遣先の通常労働者の賃金等の待遇に関する情報を提供する義務を設ける予定です。

どういうことかというと、派遣労働者と派遣先の通常労働者とのあいだに格差があることは同一労働同一賃金に反する。

しかし、派遣元としても派遣先の通常労働者の賃金がわからないと、賃金を合わせようがないので派遣先は派遣元に聞かれたら教えないといけないよ、ということです。

ただし、これだと、派遣先が変わるごとに派遣労働者の給与が変動する可能性があるため、会社と労働者とのあいだで労使協定を結ぶことで、同一労働同一賃金の適用を除外できるようにする予定です。

ただし、労使協定は以下の3要件を満たす形で、それが実際に履行されている必要があるとされています。

  1. 同種業務の一般の労働者の賃金水準と同等以上であること。
  2. 派遣労働者のキャリア形成を前提に能力を適切に評価して賃金に反映させていくこと。
  3. 賃金以外の待遇について派遣元事業者に雇われている正規雇用労働者の待遇と比較して不合理でないこと。

働き方改革実行計画案(参照:働き方改革実現会議)

 

以上です。

法改正は2017年度中、施行は2018年以降と予定されています。

ちなみに、働き方改革実現会議に関する同一労働同一賃金については、過去にこのような記事も書いているのでご参考にしていただければと思います。

 

今日のあとがき

2年縛りが終わったのでiPhoneを赤くしました。

本体を写すカメラがないので箱で失礼

iPhone6から7への変更ですが、正直、大差なし。ちょっとは動作が軽くなるかなあとか思ったけど、元々そんなに重かったわけでもないのでわからず。

ホームボタンが物理ボタンじゃないのにも違和感あるし、付属のイヤホンは端子がライトニングになっているのでiPhone7以外で使えない。

iPhone6になかった3Dタッチも使い道なしどころか無理に使おうとするとアイコンがぷるぷる震えだして、間違ってアンインストールになりそうになるなど、変えなくても良かった感がヤバいです。

ただ、とりあえず色は赤いのでしばらくはカバーも付けずどや顔してやろうと思ってます。

 

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。行動経済学会(幽霊)会員 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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