労務管理

残業代を支払わないことで生まれる3つのリスクとは

2016年11月8日

ええー、今日も電通です。最近はいつもいつもネタ提供ありがとうございます。

長時間労働によって会社が負うリスクを解説した昨日の記事で、あえて書かなかったことに残業代のことがあります。

長時間労働させればその分残業代も増え、人件費を圧迫するわけですが、きちんと支払えるのであれば、法律上は問題ないので昨日は書きませんでした。

それに、長時間労働をさせる会社がイコールで残業代を払わない会社というわけでもなければ、長時間労働をさせない会社が残業代をきちんと払う会社というわけでもないのこともあり、残業代が「長時間労働のリスク」なのかどうか、判断に迷ったというのもあります。

しかし、今回の電通の件で報道を見ていると、どうも残業時間を過少申告させていたっぽい。

電通 勤務時間の過少申告広く行われていた疑いも

となると、申告されなかった分の残業代はどうなっているのさ? と思ったので、今回は時間外手当の未払いのリスクの話。

 

① 労働基準法24条および37条違反による監督署調査

残業代を支払わない、というのは、「賃金を支払わない」のと同じなので、労働基準法第24条の「賃金の支払」に違反します。

また、法令以下の割増率の残業代しか支払っていない場合、労働基準法第37条違反となります。

よって、監督署に調査されたり、何度是正勧告を受けても、是正がなされない場合、送検逮捕されるリスクあります。

ただ、調査に入られた段階で、きちんと是正を行えば問題はありません。

逆に、是正勧告を無視したり、是正報告の際に虚偽の報告を行うと、悪質性が高いということで送検逮捕のリスクは高まります。

ちなみに、労働基準監督官には未払い残業代の支払いを「命令」する権限はありません。

 

② 未払い残業代の請求による一時的な人件費の増大

労働基準監督官に未払い残業代の支払いを命ずる権限はないとはいえ、未払いの残業代は払わなくていい、というものではありません。

なぜなら、労働基準監督官に権限はなくても、裁判所の裁判官にはその権限があるから。

つまり、会社は未払い残業代の請求の訴えを起こされた場合、未払い分の残業代を支払わなければならないわけです。

賃金の支払いの時効は2年なので、最大で過去2年分の未払い残業代を支払う可能性があるわけです。

これに加えて、裁判になると未払い残業代と同額の付加金の請求や、遅延損害金などの支払いが命じられる場合があります。

これが、労働者1人分だけならなんとかなっても、複数人だったり、社員の大半、となると、会社の負担は経営に甚大な影響を与えるレベルで大きくなるはずです。

 

③ 怨恨(お金の恨み)

昨日の記事でも書きましたが、労働者が会社に対して不満や恨みを持っていると、労使トラブルというのは起きやすい。

残業代の未払いというのは、要はお金の恨みなので、単に長時間労働させる以上の不満や恨みを労働者が抱くの間違いありません。

で、我慢の限界が来ると、労基署やユニオンや労働者側弁護士のもとへ駆け込むわけです。

言っときますが、上の3つ、労働者がどこに行っても泥沼化は必至です。というか、労基署の後に弁護士、みたいな感じで、同じ案件で2つ3つ来ることを覚悟しないといけないレベル。当然、会社の負担も大きくなります。

 

以上ですが、最後に。

こうした残業代のトラブルは、なにも長時間労働による残業にだけ起こるわけではありません。

管理監督者の地位にないものを役職だからといって残業代を支払っていなかったり、手当の一部を固定残業代とみなすなど、現行の法令や判例に基づかない労務管理によって突然、請求されることもあります。

よって、未払い残業代のトラブルを避けるには、長時間労働の是正もさることながら、適切な賃金規定の制定や労務管理も必須といえます。

 

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。行動経済学会(幽霊)会員 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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