育児休業・介護休業

雇用保険の育児休業給付金をもらいながら働くと育児介護休業法違反になる?

2016年11月4日

久しぶり、と言っても、1週間しか空いてませんので、HUNTERXHUNTERの連載と比べたらなんというか普通じゃん、という話ですが、ここ1年ほぼ毎日更新してきたので、随分と空いたような感覚です。

で、このブログ、月から木までは労務に関係のある話をして金土はあまり関係のない、どちらかというとわたしの趣味のようなことを書いて日曜は休む、というのが1週間の流れだったんですが、復帰初っ端なので、今日は金曜だけど真面目な話。

 

2014年秋に変更が加えられた育児休業給付金

2014年の秋に、育児休業給付金の制度が少し変わり、それまで月10日を超えて働くと育児休業給付金の支給が停止されていたのが、月10日を超えていたとしても労働時間が「80時間以下」であれば、育児休業給付金が支給されるようになりました。

これにより育休中も柔軟に仕事ができるようになったと解釈され、大手メディアでも、昨年夏にそういった趣旨の記事が掲載されました。

育休中も柔軟に仕事

育児休業給付金がもらえる範囲で、無理なく仕事ができるのであれば、育児休業給付金に加えて賃金ももらえるため、育休中の女性にとってもメリットはあります。

では、会社として、そうしたことを制度として(例えば、労働者が了承する場合は、月80時間働いてもらうみたいな制度を)構築しても良いのかというと、実はそうでもない、らしい。

 

育児介護休業法の「育児介護」と雇用保険法の「育児休業給付金」

なぜか、という話に行く前に、大前提の話として、一般にいう「育児休業」というのは「育児介護休業法」に規定のある休業です。一方、育児休業給付金というのは雇用保険法に規定のある制度の一つです。

法律が違うため、両者が意味する「育児休業」の意味が必ずしも同じではない、ということは以前の記事に書きました。

今回も根は一緒です。

要するに、「(雇用保険の)育児休業給付金」がもらえるように休みながら働いたとして、それが「(育児介護休業法上の)育児休業」に当たるのかという話。

YESなら上記のような制度を作ることに何も問題はないが、NOだと育児休業給付金をもらう事自体は問題ないものの、育児介護休業法違反となってしまう。

で、愛知労働局に確認したところ、育児介護休業法を担当する側の見解はNOでした。

 

育児休業の趣旨に反する

業務の都合でどうしようもなくて「臨時的に」働くのであればまだしも、あらかじめ、休業中に働くことを予定するような育児休業は、育児介護休業法でいうところの「育児休業」に当たらないと考えられ、そのような制度は育児介護休業法の「育児休業」の制度趣旨に反する、からだそうです。

というか、所用があって愛知労働局に上記の「労働者が了承する場合は、月80時間働いてもらうみたいな制度」やってもいいか、確認してみたのですが、担当者の回答は上記の見解プラス「?(あんた何言ってんの(怒))」(怒、はあくまでわたしがそう感じただけですよ)といった感じでしたけどね。

(というか、先に雇用保険の方で、「復帰してないのであれば、月10日以内、または月80時間以内で働いていたとしても育児休業給付金は支給はされる」という見解を聞いていたので、育児介護休業法と雇用保険法で話が違うじゃないかと、わたしのほうが怒ってた。

これは愛知労働局の見解であり、他の都道府県や厚生労働省の考えは違うかもしれませんが、少なくとも、育児休業給付金でOKだからといって、大々的に上のようなものを制度として組み立ててしまうと、育児介護休業法違反で労働局の均等部が飛んで来るかもしれません。

 

厚生労働省内で「育児休業」の足並みが揃ってない

とはいえ、上でリンクを張った読売新聞の記事には、

厚生労働省雇用保険課は「女性の活躍推進が改正の狙い。育休中も、復職の準備や育児と仕事の両立がしやすくなった」

厚生労働省の方が語っている通り、育休中に復職の準備をしてもらおうという意図が2014年秋の雇用保険法改正の狙いに含まれていたのは間違いありません。

ただ、同じ、「育児休業」を扱う「育児介護休業法(とその担当部署)」と全然足並みが揃ってないので、厚生労働省雇用保険課の狙いとは裏腹に、コンプライアンスを重視する会社はこの法改正を活用することに二の足を踏んでしまうでしょう。

というわけで、育児休業給付金をもらいながら働くことを育児介護休業法に違反しないようにするのであれば、

  • 制度は作らない(臨時的と言えなくなるし、育児休業の趣旨に反するので)
  • あくまで臨時的に働く

必要があるようです。

 

ちなみに、来年1月に育児介護休業法が改正されますが、両者の足並みが揃うような改正内容ではないのでご注意を。

 

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。行動経済学会(幽霊)会員 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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