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1年単位の変形労働時間制とは? メリット・デメリット、導入方法を解説

1年単位の変形労働時間制とはこんな制度

1年単位の変形労働時間制とは、1年間を通して、平均で週40時間以内とする制度です。

平均で週40時間なので、月曜日から土曜日の6日間、毎日8時間働かせて週48時間になったとしても、他の週の労働時間が短くなっていればOK。

この48時間の週に関しては、40時間を超えている8時間の労働時間について、時間外手当を支払う必要はありません。

例1

週A:週48時間 週B:38時間 週C:36時間 週D:38時間 その他の週:週40時間

→平均週40時間以内となっているのでOK

 

例2

隔週土曜日出勤とし、その分を他の日を休みにして補う場合で第2、第4土曜日を休日とする場合、年間で27日前後、土曜日に出勤することになります。

この27日前後の日数分を1年の他の日、例えば夏期休暇や年末年始、ゴールデンウィーク等に休ませると、1年で見た場合、労働時間が週平均40時間以内に収まります。

 

 

1年単位の変形労働時間制のメリット

① 1年の予定を立てることができる

1年単位の変形労働時間制を利用する場合、会社カレンダーを作成することになります。

特に土曜日を出勤日とする場合は顕著で、土曜日に出勤させる代わりに他の日を休みとする会社カレンダーを作成しなければなりません。

会社カレンダーを作成するには、会社の1年の予定を立てる必要があるため、会社としての1年間の予定を立てることができます。

 

② 繁忙期の残業代の節約

1年単位の変形労働時間制で、繁忙期として所定労動時間を延長した期間は、所定労働時間を超えるまで時間外手当をつける必要はありません。

例えば、繁忙期の労働時間を8時間から9時間とした場合、9時間を超えるまでは時間外手当を付ける必要はなくなります。

通常の労働時間制度ですと、8時間を超えたところから時間外手当を支払う義務が発生しますが、上記の場合だと9時間を超えたところからとなるので、1時間分、時間外手当を節約することができます。

 

③ 閑散期の労働時間の節約

通常の労働時間制度では、例え、仕事が無い場合であっても、会社は労働契約上の労動時間働かせ、労働時間に応じた賃金を支払う必要があります。

労働契約上の労動時間が1日8時間である場合、例え、仕事がなくても、その時間分、働かせ賃金を支払う必要があるわけです。

仮に働かせない、休ませる場合も賃金の6割以上の休業手当を支払う必要があります。

しかし、年間の業務の繁閑がある程度つかめているのであれば、閑散期となる時期の労動時間減らしたり、労働日数を減らすことで、労働者の労働時間を節約することができます。

 

1年単位の変形労働時間制のデメリット

① 1年の途中でやめられない

1年単位を途中で辞めることはできません。また、後から、年間カレンダーの変更することもできません。

ただし、休日を振り替えることは可能なので、そちらで柔軟に対処しましょう

 

② 変形中の入社・退社の精算

変形期間の途中に入社、あるいは退社した場合、業務の忙しい時期だけ会社で働くことがありえます。

1年単位の変形労働時間制は、1年を通じて平均で週40時間となるよう労動時間変形するものですが、そうした変形期間中に入社した人や、退職した人は平均の労働時間が週40時間を上回っている可能性もあります。

そのような場合、会社は該当労働者が働いていた期間が平均で週40時間を上回っている、その分の時間外手当を支払って精算する必要があります。

つまり、変形期間中の入社・退社があった場合の残業代計算の手間がデメリットと言えます。

 

1年単位の変形労働時間制導入の流れ

1年単位の変形労働時間制導入の流れは以下の通りです。

① 就業規則の整備

② 労使協定の締結

③ 協定届を作成し労働基準監督署に提出

 

(1) 就業規則に定める

始業・終業の時刻休憩時間休日は就業規則に必ず記載する必要のある事項と労働基準法で定められています。

1年単位変形労働時間制を導入する場合、これらの項目は全て影響を受けるはずなので、就業規則の整備が必要となります。

第43条

  1. 労働時間は、休憩時間を除き原則として、1日について  時間  分、1年単位の変形労働時間制を採用し、1年を平均して週40時間を超えないものとする。
始業時間 午前  時  分
就業時間 午後  時  分
休憩時間 午後  時  分から  時  分まで

2.第1項の対象期間は1年間とし、起算日は毎年  月  日からとする

 

(2) 労使協定の締結

1年単位の変形労働時間制を導入するには、労働者代表と労使協定を結ぶ必要があります。

労使協定で決める必要のあることは以下のとおり。

 

① 労働者の範囲

1年単位の変形労働時間制の対象となる労働者の範囲を決めます。

事務など特定の業種の労働者を範囲から外すこともできます。

 

② 対象期間

変形させる期間を決めます。

変形させられる期間は1ヶ月を超え1年以内の期間の間ですが、ほとんどの場合、1年の期間で変形させます。

変形期間が1年の場合、1年の労働日数は280日が限度となります。

また、対象期間中の1日の労働時間の限度は10時間(※)、1週の限度時間は52時間となります。

加えて、週の労働時間が48時間を超える週は連続で3以下とする必要があります。

上記の限度はあくまで変形した結果の所定労働時間に関する限度であり、時間外労働として手当等を支払って行わせる分には10時間や52時間を超えることができます。

※ 隔日勤務のタクシー運転手の場合16時間

 

③ 特定期間

対象期間中の特に忙しい期間を定めることができます。

特定期間中は連続労働日数が優遇され、原則6日連続のところを、「1週間に1日の休日が確保できる日数」とされます。つまり、第1週の初めに休日をとし、その次の週の最後の日を休日とすれば、最大で12日連続勤務とすることができます。

特定期間がない場合、必要のない場合は定める必要はありません。

 

④ 労働日と労働日ごとの労動時間

対象期間中の労働日と労働日ごとの労働時間を定めます。

実務上は、労働日ごとの労働時間を定めることが大変なこともあり、繁忙期といえども1日の労動時間を増やすということはあまりなく、労働日を増やすことが多いです。

(そもそも、1日の労働時間を変形させるのがメインであれば、1カ月単位のほうが向いています)

この場合、会社カレンダーを作成し、年間を通じて1週間の平均労働時間が40時間以下となるよう労働日と休日を調整します。

ちなみに、年間を通じて1週間の平均週労働時間が40時間以下となる場合の、年間総労働時間は2085時間(※)(うるう年の場合2091時間)となります。

※ 40時間×365日÷7日

 

労使協定

参照:東京労働局

 

(3) 協定届を作成し労働基準監督署に提出

1年単位の変形労働時間制を導入する上で、会社が労働基準監督署に提出する必要があるものは以下のとおり。

  • 労使協定
  • 協定届
  • 会社カレンダー

いずれも、提出用と会社控えで2部必要となります。

協定届とは、監督署提出のための書類で、労使協定やカレンダーの内容をまとめたものとなります。

1年単位協定届

1年単位の変形労働時間に関する協定届(リンク先PDF 出典:東京労働局

 

この他に、就業規則の変更を伴う場合は就業規則等、時間外の労働をさせる予定があるのであれば36協定を提出する必要があります。

 

1年単位の変形労働時間制はこんな会社におすすめ

年間で業務の繁閑の差が大きい会社

1年単位の変形労働時間制が最も想定しているのは「年間で業務の繁閑」が大きい場合です。

例えば、夏季休暇や冬季休暇に忙しくなるような業種ですと、その時期の労働時間や勤務日数を増やして、他の時期の労働時間や勤務日数を減らすことができます。

例 8月が忙しく9月が暇な会社

A1 8月の1日の労働時間を8時間から9時間に増やし、9月の1日の労働時間を7時間に減らす(労働日数はどちらの月も20日とする)

A2 8月の土曜日を隔週で出勤日とし、9月の隔週金曜日を休日とする(土曜日の日数、金曜日の日数はどちらも2日とする)

※ 労動時間を変更するよりも、労働日数で調整(A2)するのが一般的

 

土曜出勤させる会社

また、特別、年間で業務の繁閑の差がでない業種であっても、土曜日を出勤とする場合、活用できます。

例えば、隔週土曜日を出勤とする場合、月に2回、週40時間を超える週ができ、8×2で16時間分の時間外手当が発生します。

しかし、1年単位の変形労働時間制を利用すれば、この隔週土曜日の出勤分を国民の休日やお盆やお正月に振り分けることで、時間外手当を支払うことなく、土曜出勤させることができます。

土曜出勤や、国民の休日等の扱いを会社の都合で変えやすいことから、1年単位は日本で最も利用されている変形労働時間制となっています。

 

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