労務管理を行う上で最も重要といえるのが労働時間。
法律では労働時間の上限が定められているのもありますが、労働時間によって賃金が変わったり、雇用形態が変わったり、長時間労働が続くと健康に影響が出たりと、労務のあらゆる面で労働時間が関連してきます。
そんな労働時間ですが、みなさんはなぜ1日8時間、1週40時間と決まっているのか疑問にもあったことはないでしょうか。
これが5時間だったら、毎日もっと楽なのにと思う労働者もいれば、9時間だったらもっと稼げるのにと思う経営者もいるでしょう。
今回は労働時間はなぜ1日8時間1週40時間なのか、労務の歴史から紐解いていきます。
1日の労働時間の歴史
1日の労働時間に制限はなかった
歴史上、労働者と使用者のような上限関係は枚挙に暇がありませんが、現在の労働者の概念が生まれたのは、イギリスの産業革命時代だったと言われています。
そして、この産業革命当時、労働者の労働時間は10時間から16時間もあり、休みも1日しかなかったそうです(ブラックというレベルじゃない!)。
こうした環境で働くことは人間にとって良くないということで1810年、イギリスの実業家ロバート・オーウェンは自身の経営していた工場で「1日10時間労働」を実践します。
その後、1817年には1日8時間労働を新たな目標とし、「仕事に8時間を、休息に8時間を、やりたいことに8時間を」のスローガンを作り出し、その後の資本階級と労働階級の闘争に大きな影響与えました。
しかし、法制化までの道のりは険しく、そこに至るまではメーデーが創設されるきっかけとなった事件である、アメリカのヘイマート事件(1886年)や、欧州各国での労働運動やメーデーといった労働紛争を経ることになります。
1日8時間が法制化されたのは20世紀に入ってから
国の法制度として「1日8時間労働」が法定化されたのは、ロバート・オーウェンが「1日8時間労働」を提唱した100年後の1917年、ロシア・ソビエト連邦社会主義共和国が初でした。
そして、その2年後に、国際労働機関(ILO)第1回総会で「1日8時間・週48時間」という労働制度を定め、国際的労働基準が確立されました。
日本の1日8時間労働
では、日本の1日8時間労働はどうかというと、日本でこれを最初に導入したのは、1919年、神戸市の川崎造船所(現・川崎重工業)神戸工場でした。
そして、日本で1日8時間労働が法定化されるのは、戦後である1947年の労働基準法の制定まで待たねばなりません。
週40時間労働が生まれた背景
週40時間労働の先駆けはフォード
では、週40時間労働についてはどうでしょうか。
すでに、見たように、国際労働機関(ILO)第1回総会の段階では、週の労働時間は「48時間」とされていました。
そこからさらに8時間縮めて、週40時間の先駆けとなったのはアメリカの大手自動車メーカー・フォードといわれています。
フォードの創設者のヘンリー・フォードは「労働者の余暇時間を増やすことは、消費の拡大と生産の拡大をもたらす」と考え、週休2日制を採用したのです。
そして、フォードの週休2日制採用と合わせるように、時代は世界恐慌。
このとき、週休2日制によって、工場の操業時間の短縮したいと考える経営者が増えたこともあり、週休2日制は定着、1938年には連邦公正労働基準法によって週40時間が原則とされました。
週40時間が日本で一般化されたのは平成になってから
では、日本の週40時間労働についてはどうでしょうか。
戦前の日本企業は1日8時間労働をさせる企業自体は存在したものの、法制化はされていませんでした。
そして、すでに述べたように1947年に制定された労働基準法によって1日8時間労働が法制化されたわけですが、この時点では、週の法定労働時間は48時間とされていました。
実は、労働基準法制定当初から週40時間とする案はあったのですが、当時は終戦直後。法定労働時間を週40時間としてしまうと復興が進まない懸念があったため、このときは週48時間とされたわけです。
その後、実に40年ものあいだ週の法定労働時間は48時間だったのですが、昭和62年の改正でついに週40時間労働を目標化が定められました。背景には「国際社会における我が国の地位にふさわしい労働時間の水準とする必要性が増大」があったからとされています。
さらにそこから段階的な法改正が行われ、ついに平成6年より週40時間が週の法定労働時間の原則となりました。
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