障がい者雇用

障害者の法定雇用率、下回ったらどうなる? 納付金や調整金とは

2021年4月27日

今年の3月より法定雇用率が引上げに

今年の3月より、障害者の法定雇用率が引き上げられています。

事業主区分 2021年3月1日以降 2021年2月28日まで
民間企業 2.3% 2.2%
国、地方公共団体等 2.6% 2.5%
都道府県等の教育委員会 2.5% 2.4%

これにより民間企業では、障害者の雇用義務のある会社の規模が45.5人以上から43.5人以上に広がっています。

つまり、43.5人以上の規模の会社では障害者を1人以上雇用する義務があるわけです。

法定雇用率についての詳細は、過去に記事にしているのでそちらをご覧ください。

 

障害者雇用の義務のある会社がしないといけないこと

障害者雇用状況報告

今回は、会社が障害者の雇用が義務づけられる規模になった場合にしないといけないことや、法定雇用率を下回ってしまった場合等について解説していきます。

まず、障害者を雇用する義務のある会社、つまり、今年の3月からは従業員の数が43.5人以上の会社は、毎年6月1日現在の障害者の雇用に関する状況(障害者雇用状況報告)をハローワークに報告する義務が発生します 。

毎年報告時期になると、従業員43.5人以上規模の事業所に報告用紙が送付され、必要事項を記載の上で7月15日までに報告する必要があります。

 

法定雇用率を下回る場合の報告

では、障害者を全く雇っていないなど、法定雇用率未満の会社がこの報告をした場合はどうなるのでしょうか。

基本的に、報告で法定雇用率未満の人数を報告したとしても直ちに、法違反として処分されるということはありません。

一方で、いつまで経っても雇用率に改善が見られない場合、行政からの指導や、企業名の公表処分の対象となる場合があります。

また、従業員の数が100人を超える会社で、障害者の雇用が法定雇用率に満たない場合、後述する障害者雇用納付金を納付しなければいけません。

いずれにせよ、法定雇用率を下回るからといって、嘘の報告をすることだけは絶対にやめましょう。

 

法定雇用率を下回った場合の指導の基準や具体的な内容

法定雇用率を下回る会社への指導は以下のような流れで行われます。

障害者雇用達成指導の流れ(リンク先PDF 出典:厚生労働省

上記のうち、雇入れ計画作成命令については、その基準が以下のように公表されています。

次のいずれかに該当する場合

  1. 障害者の実雇用率が全国平均実雇用率未満であり、かつ、不足数が5人以上である企業
  2. 法定雇用障害者数が3~4人の企業であって、障害者を1人も雇用していない(0人雇用=実雇用率0%)のもの
  3. 不足数が10人以上の企業

障害者雇用の不足数が最低「3~4人」ということは、企業規模は最低「130.5人~174人」ということになります。

つまり、ある程度の規模以上の会社でないと、こうした雇入れ計画作成命令が出ない(出づらい)ことがわかります。

また、雇入れ計画の適正実施勧告や特別指導については、雇入れ計画の達成状況によって出るかどうかが決まっています。

 

障害者雇用納付金と障害者雇用調整金

法定雇用率を達成できない場合、行政からの指導以外に納付金を国に納める必要が出てきます。

 

障害者雇用納付金

障害者の法定雇用率が未達成の場合、その会社には障害者雇用納付金を納める義務が発生します。

ただし、この義務が発生するのは会社の規模が100人を超える場合です。

納付金の額は以下の通りです。

納付金の額=(各月(※)の法定雇用障害者の合計数-各月の雇用障害者数の合計数)×1人当たり月額5万円

※ ここでいう「各月」とは「前年度の4月1日から3月31日まで」のこと

要するに、法定雇用率に満たない人数1人当たり月額5万円を国に納めないといけないわけです。

ちなみに以前は、従業員の数が100人以上200人以下の会社については5万円ではなく4万円とする減額措置があったのですが、今はもうありません。

 

障害者雇用調整金

一方、法定雇用率を超える障害者雇用をしている会社には障害者雇用調整金というものが、支給されます。

調整金の額は以下の通り。

調整金の額=(各月(※)の法定雇用障害者の合計数-各月の雇用障害者数の合計数)×1人当たり月額2万7千円

※ ここでいう「各月」とは「前年度の4月1日から3月31日まで」のこと

こちらの障害者雇用調整金がもらえるのも、会社の規模が100人を超えている場合に限られます。

 

会社の規模が100人以下だともらえる報奨金とは

以上からもわかるとおり、障害者雇用納付金を納付する義務がある会社及び、障害者雇用調整金がもらえる会社というのは会社の規模が100人を超える場合に限られます。

では、会社の規模が100人以下の場合、障害者を雇用してもしなくても関係ないかというとそういうわけではありません。

すでに述べたように、障害者の雇用率が法定雇用率未満だと、行政からの指導や会社名公表の対象となる場合があるからです。

また、法定雇用率を超えて障害者を雇用する場合、障害者雇用調整金はもらえませんが、それとは別に報奨金というものがもらえます。

報奨金をもらうには以下の要件を満たす必要があります。

障害者の雇用数が

  1. 各月ごとの常用雇用労働者の総数 × 4/100の合計数」
  2. 各月ごとの合計が「72人」

のいずれか多い数を超える障害者を雇用している会社

※ ここでいう「各月」とは「前年度の4月1日から3月31日まで」のこと

2の要件があるため、実質的には1の要件はないも同然で、実質的には年間で4月から3月までの各月ごとの合計が72人以上ないと、報奨金をもらうことはできません。

正直、障害者雇用調整金よりももらうのは大変ですね。

この他、障害者に関する納付金・調整金・報奨金については、「雇用」 ではなく外注として、在宅で就業する障害者に仕事を発注し、その業務の対価を支払った事業主に対しても調整金、報奨金が支給される場合があります。

 

まとめ

以上のことから、法定雇用率未達成の場合、企業規模がある程度大きいとそのペナルティが大きいことがわかっていただけたかと思います。

一方で、100人以下の場合、納付金を納めることや計画命令を出されることもほぼないため、あまりペナルティらしいペナルティもないように思えます。

しかし、障害者雇用の義務のある規模になると、計画の作成命令は出なくても、「障害者を雇ってください」といった指導が行われることがあります。

それでなくても、会社を大きくしていく上では障害者雇用は避けて通れないため、規模が小さなうちからでも準備や受入体制を作っておくことは重要かと思います。

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。行動経済学会(幽霊)会員 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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