※ この記事は2025年12月に最新の情報をもとに追記修正されたものです
法定雇用率の概要
法定雇用率とは
従業員が一定数以上いる会社では、従業員の数に応いて一定割合の障がい者を雇用する義務が課せられます。
この一定の割合のことを法定雇用率といいます。
現行の法定雇用率
2025年12月現在の、現行の法定雇用率は以下のとおりです。また表にあるとおり、2026年7月にはさらなる法定雇用率の引上げが予定されています。
| ~2026年6月 | 2026年8月~ | |
| 民間企業 | 2.5% | 2.7% |
| 特殊法人、国及び地方公共団体 | 2.8% | 3.0% |
| 都道府県等の教育委員会 | 2.7% | 2.9% |
法定雇用率の計算方法の注意点
会社の障がい者の実雇用率が、法定雇用率を確認する際、障がい者のカウント方法に注意する必要があります。
なぜなら、障がい者の障害の重さや所定労働時間によっては、障がい者の人数を1ではなく、2や0.5と数える場合があるからです。
短時間労働者のカウント方法
具体的にいうと、まず、障害者の法定雇用率を考える際、会社の労働者の人数を数える上で、「1人」とカウントするのは週の所定労働時間が30時間以上のものだけです。
一方、週の所定労働時間20時間以上30時間未満のものに関しては、そうした労働者1人当たり「0.5人」とカウントします。
なお、20時間未満の者についてはカウントに入れませんが、精神障がい者については、当分の間の措置として10時間以上20時間未満の労働者については「0.5人」でカウントします。
重度か否か(精神障害者を除く)
所定労働時間に加えて、身体障害者および知的障害者については、障害が重度の場合かそうでないかでもカウント方法が異なり、障害が重度の場合はカウントが2倍となります。
よって、週所定労働時間が30時間以上で障害が重度の場合、カウントは1人当たり「2人」となるし、週の所定労働時間が20時間以上30時間未満で障害が重度の場合は1人を「1人」と数えます。
なお、精神障害者の場合は「重度」かどうかでカウントが変わるということはありません。
上記をまとめると、以下のとおりとなります。
| 週所定労働時間
30時間以上 |
週所定労働時間
20時間以上30時間未満 |
週所定労働時間
10時間以上20時間未満 |
|
| 身体障害者(括弧内は重度) | 1(2) | 0.5(1) | ー(0.5) |
| 知的障害者(括弧内は重度) | 1(2) | 0.5(1) | ー(0.5) |
| 精神障害者 | 1 | 1(※) | 0.5 |
※ 当分の間の措置として、このような扱いとされています。
障害者雇用の実雇用率を実際に計算
では、実際に、計算してみたいと思います。例として出す会社は以下の通りです。
- ① 会社規模:従業員100人
- ② 従業員のうち週所定労働時間30時間以上のもの:80人
- ③ 週所定労働時間20時間以上30時間未満の短時間労働者:20人
- ④ 週所定労働時間30時間以上の障害者で障害が重度のもの:1人
- ⑤ 週所定労働時間20時間以上30時間未満の障害者で障害が重度でないもの:2人
カウントは
- ②=80人
- ③=20人×0.5=10人
- ④=1人×2=2人
- ⑤=2人×0.5=1人
よって、雇用率を求める計算式は、
(2人+1人)÷(80人+10人)=0.033333・・・
この会社の障害者の実雇用率は約3.3%となります。よって、この会社2026年6月以前、7月以後に関わらず、実雇用率が法定雇用率を超えていることになります。
法定雇用率を達成できない場合
では、法定雇用率を達成できない場合、どうなるのでしょうか。
この場合、行政からの指導が入る可能性があるほか、障害者雇用納付金というものを国に納める必要が出てきます。
法定雇用率を下回った場合の指導の基準や具体的な内容
まず、法定雇用率を下回る会社への指導は以下のような流れで行われます。
障害者雇用達成指導の流れ(リンク先PDF 出典:厚生労働省)
上記のうち、雇入れ計画作成命令については、その基準が以下のように公表されています。
次のいずれかに該当する場合
- 障害者の実雇用率が全国平均実雇用率未満であり、かつ、不足数が5人以上である企業
- 法定雇用障害者数が3~4人の企業であって、障害者を1人も雇用していない(0人雇用=実雇用率0%)のもの
- 不足数が10人以上の企業
障害者雇用の不足数が最低「3~4人」ということは、企業規模は最低「130.5人~174人」ということになります。
つまり、ある程度の規模以上の会社でないと、こうした雇入れ計画作成命令が出ない(出づらい)ことがわかります。
また、雇入れ計画の適正実施勧告や特別指導については、雇入れ計画の達成状況によって出るかどうかが決まっています。
障害者雇用納付金
次に、障害者の法定雇用率が未達成の場合に納付が必要となる障害者雇用納付金についてです。なお、この義務が発生するのは会社の規模が100人を超える場合に限られます。
納付金の額は以下の通りです。
納付金の額=(各月(※)の法定雇用障害者の合計数-各月の雇用障害者数の合計数)×1人当たり月額5万円
※ ここでいう「各月」とは「前年度の4月1日から3月31日まで」のこと
要するに、法定雇用率に満たない人数1人当たり月額5万円を国に納めないといけないわけです。
なお、未納付の場合、督促や延滞金の徴収、最終的には滞納処分が行われます。
一定数の障害者を雇用することにより支給される報奨金
障害者雇用調整金
一方、法定雇用率を超える障害者雇用をしている会社には障害者雇用調整金というものが、支給されます。
調整金の額は以下の通り。
調整金の額=(各月(※1)の法定雇用障害者の合計数-各月の雇用障害者数の合計数)×1人当たり月額2万9千円(※2)
※1 ここでいう「各月」とは「前年度の4月1日から3月31日まで」のこと
※2 法定雇用障害者数の差の各月の合計数が年間120人を超えた場合は、1人当たり23,000円
こちらの障害者雇用調整金がもらえるのも、会社の規模が100人を超えている場合に限られます。
報奨金
さて、障害者雇用納付金を納付する義務がある会社及び、障害者雇用調整金がもらえる会社というのは会社の規模が100人を超える場合に限られます。
では、会社の規模が100人以下の場合、障害者を雇用してもしなくても関係ないかというとそういうわけではありません。
すでに述べたように、障害者の雇用率が法定雇用率未満だと、行政からの指導や会社名公表の対象となる場合があるからです。
また、法定雇用率を超えて障害者を雇用する場合、障害者雇用調整金はもらえませんが、それとは別に報奨金というものがもらえます。
報奨金をもらうには以下の要件を満たす必要があります。
障害者の雇用数が
- 各月ごとの常用雇用労働者の総数 × 4/100の合計数」
- 各月ごとの合計が「72人」
のいずれか多い数を超える障害者を雇用している会社
※ ここでいう「各月」とは「前年度の4月1日から3月31日まで」のこと
2の要件があるため、実質的には1の要件はないも同然で、実質的には年間で4月から3月までの各月ごとの合計が72人以上ないと、報奨金をもらうことはできません。
報奨金の計算方法は調整金と同じですが、金額が以下のように異なります。
報奨金の額=(各月(※1)の法定雇用障害者の合計数-各月の雇用障害者数の合計数)×1人当たり月額2万1千円(※2)
※1 ここでいう「各月」とは「前年度の4月1日から3月31日まで」のこと
※2 法定雇用障害者数の差の各月の合計数が年間420人を超えた場合は、1人当たり16,000円
障害者雇用調整金や報奨金の他、在宅就業障害者(雇用されている場合を除く)に仕事を発注し業務の対価を支払った場合に支給される、在宅就業障害者特例調整金や在宅就業障害者特例調整金というものがあります。
障害者雇用の義務のある会社がしないといけないこと
障害者雇用状況報告
障害者を雇用する義務のある会社については、毎年6月1日現在の障害者の雇用に関する状況(障害者雇用状況報告)をハローワークに報告する義務が発生します 。
毎年報告時期になると、従業員の数が、障がい者を一人以上雇用しないといけない規模(例えば、法定雇用率が2.5%の場合は40人以上)の事業所に報告用紙が送付されます。
こちらに必要事項を記載の上で7月15日までに報告する必要があります。なお、障害者雇用状況等報告書の提出は電子申請でも可能です。
まとめ
以上です。
法定雇用率未達成の場合、企業規模がある程度大きいとそのペナルティが大きい一方で、100人以下の場合、納付金を納めることや計画命令を出されることもほぼないため、あまりペナルティらしいペナルティもないように思えます。
しかし、障害者雇用の義務のある規模になると、計画の作成命令は出なくても、「障害者を雇ってください」といったお願いベースの指導が行われることがあります。
それでなくても、会社を大きくしていく上では障害者雇用は避けて通れないため、規模が小さなうちからでも準備や受入体制を作っておくことは重要かと思います。

