就業規則

社長の頭の中では正社員とアルバイトは分けられてるのに、裁判では同じ扱いにされてしまう理由

2016年11月24日

日本の雇用慣行では正社員とアルバイトは全く別で、それは現代の身分制度といっても過言ではないものでした。

正社員には賞与があっても、アルバイトにはないし、正社員にある手当もアルバイトにはない、というのが当たり前でした。

こうした扱いについては、働き方改革の主要なテーマであった「同一労働同一賃金」によって、多少なりとも状況は変わってきてはいます。

ただ、だからといって両者の差が全くなくなったわけではありませんし、そもそも全てなくすべきものでもありません。

なぜなら、正社員とアルバイトのあいだに職務や職責に明確な差があるのであれば、両者に差があること自体は自然なことだからです。

 

非正規の「別に定め」ているはずのものがないと・・・

しかし、正社員とアルバイト等の非正規のあいだにある待遇差が、法律上問題とならない差であっても、あることを怠ると、非正規労働者に対し正社員の待遇が適用される可能性はあります。

そのあること、というのは、就業規則等で、正規と非正規を明確に区分することです。

例えば、こちらは厚生労働省のモデル就業規則から引っ張ってきたものですが、パートタイム労働者の就業に関する事項については「別に定める」としています。

(適用範囲)
第2条 この規則は、    株式会社の労働者に適用する。
2 パートタイム労働者の就業に関する事項については、別に定めるところによる。
3 前項については、別に定める規則に定めのない事項は、この規則を適用する。

では、この「別に定める」とした規程がない場合にどうなるかというと、非正規労働者の就業規則がないので、正社員の就業規則の内容が非正規も適用される、ということが起こりえます。

 

正規と非正規はきちんと分けられている(ただし、社長の頭の中でだけ)

「いやいや、この人は正社員でこの人はパートで、今までずっとやってきたんだ」と言う社長もいるかもしれません。

確かに、社長、あなたの頭の中ではそうだったかもしれません。あるいは「パート」で契約した相手も、表面上はそれで納得したように見えたかもしれません。

しかし、規程がなければ、契約書がなければ、それを客観的に証明することは難しい。

そして、客観的に証明できないと、それを良いことに、労働者側が自分の都合の良いことばかりを言い立てる、ということだってできてしまいます。

 

別規程をつくることこそ同一労働同一賃金の第一歩

同一労働同一賃金、といわれても、何から手を付けたらいいかわからない経営者や人事労務担当者の方も多いことでしょう。

しかし、まず、何よりも先にしないといけないことは非正規労働者のみに適用する就業規則をきちんと作成することです。

正社員の就業規則と非正規労働者の就業規則が分かれていれば、正規と非正規の待遇差の一部に、仮に問題があったとしても、全部が全部、正社員の就業規則を非正規労働者に適用される、ということは避けられるからです。

 

 

川嶋事務所へのお問い合わせはこちらから!

良かったらシェアお願いします!

  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。行動経済学会(幽霊)会員 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

-就業規則