労務管理

セブンイレブンの女子高生へ罰金の件から学ぶ、法的に正しい罰金の話

2017年1月31日

うちの近くにあるセブンイレブンは夫婦で経営されているようで、日中は主に奥さんが、夜は主に旦那さんがお店にいます。

わたしの家の近くは正直、治安というのはあまり良い方ではないですが、地理の関係もあってかコンビニでたむろする系の若い子たちはセブンとは道路挟んでちょっと歩いたところにあるサークルKの方に行くみたいで、客層もそれほど悪くなく、重宝しています。

いきなりコンビニの話をし始めたのはこちらの件がヤフーニュースになっていたから。

<セブン加盟店>バイト病欠で罰金 女子高生から9350円

わかりやすいくらいに労働基準法違反な案件なので、ささのさっ、で解説したいとおもいます。

 

罰金に関する規制が書かれた労働基準法第91条

簡単に概要を説明すると「フランチャイズ店の店長が、病欠で休んだバイトの女子高生が、自分の代わりを見つけられなかったので罰金を払わせた」というもの。

罰金の額は「9350円」。

そして、上記のリンク先の画像を見るとわかりますが、病欠した女子高生の時給は「935円」、そして、その月のバイト代は「23375円」です。

はい、ここで労働基準法の出番。

(制裁規定の制限)
第九十一条  就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。

つまり、例えば、月の月給が30万円の人がいたとして、その人が何か悪いことをしたとして会社が懲戒処分として罰金を支払わせようとした場合も、1回の罰金額は5千円を超えるのはアウト。

月給30万円の人の平均賃金1日分は約1万円だから、5千円を超えると、1日分の半額を超えてしまうから。

おまけに、このひとが毎日のように悪いことをして、一月に計10回も5千円の罰金に当たることをしたとしても、5万円の罰金を支払わせることはできません。

なぜなら、月給の10分の1に当たる3万円を超える罰金を支払わせることはできないからです。

(上記の例はすべて月給制の場合)

 

セブンの件を労基法に当てはめると…

で、今回のセブンイレブンの件ですが、時給935円、この月の月給は23375円、そして、罰金の額は9350円。

この女子高生の1日の所定労働時間がちょっとわかりませんが、週の所定労働時間が10時間に設定されているので、仮に週2日勤務の1日の所定労働時間は5時間であるとしましょう。

この場合の女子高生の1日あたりの賃金は「935円×5時間=4675円」。

罰金の額は9350円なので、半額どころか2倍です。

また月給で見ても「9350円/23375円=40%」。

10分の1を遙かに超えているので、どちらにしてもNG。

 

 

管理職の仕事は人の管理

病欠で休むこと自体は労働者側が健康保持義務を果たしてない可能性があるので(会社が健康配慮義務を果たしていない場合もある)、褒められた話ではありません。

こうしたことが断続的に起こるようだと、会社としては罰金(もちろん法の範囲内で)を含めた懲戒処分や休職命令を出さざるを得ないでしょう。

その一方で、記事の中で厚生労働省労働基準局の人が「代わりの人間を見つけるのは加盟店オーナーの仕事」と言っているように、管理職というのは、人を管理することが仕事です。

人を用意することもそうだし、不測の事態に対応することもそう。

今回の件はそうした仕事を放棄して責任を労働者になすりつけている、といわざるを得ないでしょう。

 

今日のあとがき

通常、罰金みたいな懲戒処分って、その合理性とか妥当性が争われることが多いので、額の時点で違反してるって、笑えるけど笑えない。

たまに漫画やアニメなんかで、その登場人物がヘマをやらかしてとんでもない罰金を要求される、みたいなことがありますが、ああいうのも現実にはほとんど場合は労基法違反な訳ですが、そういうノリでやってたりとかするんですかね。

その場合でも、結局、笑えそうで笑えませんが。

ちなみに、社労士はよく会社側とか会社の味方と言われますし、事実、会社の経営者や人事労務の方とお仕事することも多いのも確かです。

でも、法違反する会社とは基本的にお付き合いしたくないので、今回の記事はそういう会社にとっては割と厳しめに書きました。

 

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。行動経済学会(幽霊)会員 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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