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「中間管理録トネガワ」から読み解く労務管理のツボ ③「焼き土下座」

2017/02/02

1回目が「名前」、2回目が「社員旅行」ときた「中間管理録トネガワ」シリーズですが、今回は「焼き土下座」です。

過去2回とのテーマのギャップが凄いですが、非常にカイジ的であり、帝愛らしいものなので、今回は労務管理の視点で見ていきたいと思います。
中間管理録トネガワ(1) (ヤングマガジンコミックス)

中間管理録トネガワ(1) (ヤングマガジンコミックス)

 

利根川を伝説にした「焼き土下座」

「中間管理録トネガワ」の利根川はカイジシリーズ第一期にあたる「賭博黙示録カイジ」の登場人物で、第一期のボス、ドラクエ3で言うところのバラモスみたいなもの。

で、このバラモス利根川の本編での最後の見せ場が焼き土下座。

焼き土下座とは、簡単に言うと、熱々の鉄板の上で10秒間の土下座を行うというもの。

ただ、常人では熱々の鉄板の上で10秒も土下座することは不可能な上、無理やり押さえつけようにも、押さえつける役の黒服が鉄板の熱で火傷しかねないため、焼き土下座をする際は専用の土下座強制機の付いた鉄板を使用します。

常人では熱々の鉄板の上で10秒も土下座することは不可能と述べましたが、実は本編での利根川は土下座強制機の力無しで実に12秒もの焼き土下座に成功!

これにより読者に強い印象を植え付けた利根川は、勇者(カイジ)に倒されたにも関わらず伝説となったわけです。

実は「中間管理録トネガワ」でもこの焼き土下座の機械が出てきます。

本編ではかっこよかった伝説利根川が、自分が主役の「中間管理録トネガワ」ではどうだったかは、トネガワ本編をお楽しみに。

過去にはこんな商品が発売されてたようです。

 

焼き土下座と労務管理で注目すべき点

で、この焼き土下座について労務管理上、注目すべき点は2つあります。まあ、注目すべき点ではなく、問題点なら掃いて捨てるほどありますが、それは置いときます。

まず、1つ目は謝罪の強要という問題です。

この焼き土下座は帝愛グループ兵藤会長の「謝罪の意があるならば、例え焼けた鉄板の上でも土下座できるはず」という思想に基づいたものです。

しかし、だからといって、鉄板の上で土下座させるのはさすがにやりすぎだし、労働者に焼き土下座するほどの謝罪の意志がない場合でもそれをさせる、というのは謝罪の強要に当たるのではないか。

2つ目は、焼き土下座で負った火傷は労災が降りるのか、という点。

 

焼き土下座と謝罪の強要

1つ目については、過去にこのような記事を書いています。

会社は労働者に謝罪することを命令できるか

労働者に謝罪を強要することは、「強要罪」の問題と「思想・良心の自由」の問題があります。

「強要罪」については、単に謝罪を要求しただけでは強要罪にはならないけれど、なにかしらの『脅迫・暴行』があった上での謝罪要求は強要罪になるわけですが、鉄板で焼くというのは紛れもなく「暴行」に当たります。

しかし、焼き土下座の場合、「焼かれたくなかった謝れ」と謝罪要求しているわけではなく、「謝罪させながら暴行(鉄板焼き)している」ので、もはや「強要罪」の問題じゃない気がします(いまさら過ぎる)。専門外なのであれですが、おそらく傷害罪とか他の刑罰の問題になるのではと考えられます。

一方、「思想・良心の自由」の問題ですが、一般に、本人の謝罪や反省を強制することは、本人の意思や良心の自由を不当に制限することに当たり、憲法19条に定める思想・良心の自由を犯す行為と考えられます。

12秒間、自分の力で焼き土下座をしきった利根川はともかく、土下座強制機というものがあるということは、焼き土下座を嫌がる人がいる、ということであり、それでも強制させる、というのはやはり本人の意志に反する謝罪と言わざるをえないのではないでしょうか。

 

焼き土下座と労災

2つ目の労災の適用についてですが、これについては労働者のみなさん、安心してください(笑)。

会社のトップに対する謝罪も業務のうちといえば業務のうちですし、その際に怪我をしたわけですから、「業務遂行性」と「業務起因性」は認められて当然のはず。

よって、労災と認められる要件は間違いなく満たすはずです。

また、労災保険法第31条1項にあるとおり、

第三十一条

政府は、次の各号のいずれかに該当する事故について保険給付を行つたときは、厚生労働省令で定めるところにより、業務災害に関する保険給付にあつては労働基準法 の規定による災害補償の価額の限度又は船員法 の規定による災害補償のうち労働基準法 の規定による災害補償に相当する災害補償の価額の限度で、通勤災害に関する保険給付にあつては通勤災害を業務災害とみなした場合に支給されるべき業務災害に関する保険給付に相当する同法 の規定による災害補償の価額の限度で、その保険給付に要した費用に相当する金額の全部又は一部を事業主から徴収することができる。

  1. 事業主が故意又は重大な過失により徴収法第四条の二第一項 の規定による届出であつてこの保険に係る保険関係の成立に係るものをしていない期間(政府が当該事業について徴収法第十五条第三項 の規定による決定をしたときは、その決定後の期間を除く。)中に生じた事故
  2. 事業主が徴収法第十条第二項第一号の一 般保険料を納付しない期間(徴収法第二十七条第二項 の督促状に指定する期限後の期間に限る。)中に生じた事故
  3. 事業主が故意又は重大な過失により生じさせた業務災害の原因である事故

事業主の故意による事故の場合、事業主が保険給付にかかった費用の一部を負担することになり、労働者の溜飲も少しは下がるのではないでしょうか。

ただ、それは労災申請ができれば、の話です。

労災申請自体は本人申請なので、会社を通さなくてもできますが、会長の怒りに触れた人間が自由にそんなことができるのか。

そもそも、焼き土下座させられた利根川は、詳細は不明なものの、その後、再起不能になったのだとか。

仮に申請できたとしても、労働基準監督署にも何らかの息がかかっているかもしれないと思わせられるのが帝愛グループの恐ろしいところ。というか、労災申請を理由にもう一度焼き土下座させられかねない。

 

以上です。

良心ある経営者の方々は、くれぐれも自社の社員に焼き土下座なんてさせないようにしましょう。

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名古屋の社労士事務所、川嶋事務所の代表で、このブログの筆者。 新しいこと、もの、特にIT関連が大好きで、社労士としては会社・労働者のITトラブル対策・就業規則作成が得意分野。 2016年4月から9月まで中日新聞で「働く人を守る労働保険」を連載、開業社労士専門誌「SR」に寄稿するなど、メディアでの執筆活動も。