労務管理

社有車にドライブレコーダーを付ける際の社内規定例や労務管理上の注意点

2016年7月22日

普及が進むドライブレコーダー

今日の記事はこちらの日刊ゲンダイのこちらの記事から

事故で有利に 売り上げ急増「ドライブレコーダー」の実力

自動車の運転中にもしものことがあった場合、しかもそれが、自分が明らかに悪いわけでもない場合にそれを客観的に証明するためにドライブレコーダーを設置する人が増えているのだとか。

価格も安いのだと1万円を切ってたりとかなりお手頃。一昔前ならカーナビに取られていた予算も、今では純正かスマホでいいという時代なので新たな「ついで買い」候補になっているのかもしれません。

 

社有車にドライブレコーダーを付けることで生まれる問題

高性能化するドライブレコーダー

で、こうしたドライブレコーダーを社有車に取り付けている会社も少ないと思います。

ただ、ドライブレコーダーの中には、運転中の映像だけでなく、車内や車外の音声を録音する機能を持つものもあります。

以前は、衝撃等を感じて事故があった時だけ記録を開始するドライブレコーダーも多かったようですが、最近ではメモリーの価格が下がり、容量も増加していることもあり、運転中ずっと録画録音をする「常時録画」タイプも増えているそうです。

この「常時録画」タイプで、音声も録画する機種の場合、社有車を運転しているあいだの中の人の会話は全て録音されていることになります。

実は社有車運転中のこうしたドライブレコーダーでの録音が「プライバシーの侵害」としてトラブルになる場合があるようなのです。

 

社有車内の録音自体は問題ない、が…

社有車運転中ということは、つまり、その時間は業務中。なのに「プライバシーの侵害」とはこれいかに、と思う人もいるかもしれません。

事実、「ドラレコでプライバシー侵害?労使トラブルへ(リンク切れで該当記事なし)」という記事の中でも、弁護士の先生が

常盤法律事務所(神奈川県)の常盤重雄弁護士は、ドラレコでの音声録音ついて、「事故の実態解明などのために運転時の状況を把握する業務上の必要性から行われるもの」との前提に立ち、「周知の有無に関らず、その利用が業務に関連する範囲に留まる限り、原則としてプライバシー侵害の問題は生じない」との見解を示す

録音が業務の範囲内で収まる限り、プライバシー侵害の問題は生じないとコメントしています。

ましてや、社有車はその名の通り、会社のもの。それが労働者の私的利用されたり、思わぬ事故で会社が損害を受けないよう監視するというのはある意味当然のことです。

 

労働者にきちんと情報提供していれば避けられるトラブルもある

人の心への理解も必要

ただ、例えば、親しい友人とご飯を食べたり遊んでいるときに、内緒で勝手に会話を録音されていたら、誰ももみな、決していい気持ちはしないと思います。

つまり、内緒で会話を録音される、というのは、人にとって決して気分のいいものではないわけです。例え、法律や裁判所が許しても人の心が許さない。人の心が許さないと、当然、人間同士のトラブルになる。

というわけで、社有車にドライブレコーダーを付けるなら、そして、ドライブレコーダーの録音機能を有効にするなら社員にそのことをきちんと伝える、あるいは、ドライブレコーダーの利用方法を会社内で明確化する、それだけでかなりの労使トラブルは避けられるはずです。

会社からすると「社有車なのだから、音声を録音したって問題無いだろ」とか、「業務中にプライベートな事をしゃべるほうが悪い」とか思う気持ちもわからないでもないですが、会社の思う当然と、労働者の思う当然は往々にして異なるものなのです。

で、当然だと思ってるとコミュニケーションも疎かになる。

 

労務管理で重要なのは「期待」ではなく「約束」

こちらの記事で書いたことにも通じますが、

「期待はさせるな、約束をしろ!」無用な期待は労使トラブルのもと

会社側がなにも言わないと、労働者の期待や不安は会社の意図とは関係なく膨らむことがあるのです。

でも、それらの多くは会社が労働者にきちんと情報提供しコミュニケーションが取れていれば、避けられることなのではないでしょうか。

 

就業規則や社内規定に定めるのも手

また、社有車に関する規定をきちんと定めることも重要となります。

就業規則に規定が定めてあって、その就業規則がきちんと労働者に周知されているのであれば、労働者側は「知らなかった」と言い訳することはできないわけですからね。

弊所で規定を作るなら、以下のような感じです。

第 条

社有車には社内の音声を録音する機能を持ったドライブレコーダーを取り付けるものとする。会社は社有車を運転したものの承諾なくドライブレコーダーに記録された内容を確認することがある。

 

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。行動経済学会(幽霊)会員 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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