就業規則の「健康診断」条文の作成のポイントと規定例

人生において働くということはとても大切なことですが、それでも命や健康に代えられるものではありません。

そのため、法律では労働により労働者の命や健康が害されることがないよう法律で、会社に対し様々な義務を課しています。

多くの会社が行っている「健康診断」もその一つです。ただ、もしかしたら法律上の義務があって行われていると知らない人も多いかもしれません。

この記事ではそんな健康診断について、就業規則への規定例について解説していきます。

目次

「健康診断」条文の必要性

健康診断は、就業規則の相対的必要記載事項である「安全衛生」に関する条文であるため、記載は必須となります。

「健康診断」条文作成のポイント

基本は法律どおりに

健康診断については法律どおりにこれを行い、監督官庁に報告等を行うことが重要な項目です。

そのため、基本的には法律の条文どおりに、就業規則の規定を作成することになります。

深夜業および法令で定める有害業務がない会社の場合

特定の業務に就く者に対して会社は、定期の健康診断に加えて、追加で健康診断を受けたり、特定の項目に関して検診を受けさせる義務があります。

そういった業務を行っていない会社であっても、そうした定めがあることで何か会社の業務に影響があるわけではありません。そのため、記事の最後の規定例では有無にかかわらずこうした定めを行っていますが、全くそういった業務がないという会社については削除してしまって問題ありません。

会社が再検査を求める場合

健康診断を経て、異常が見つかった場合、会社としては再検査を受けてほしいと思うのが普通だと思います。

ただ、規模が小さい会社ほど、健康診断を行うまでで手一杯で、以降のケアまではできていないというのが実際のところでしょう。それもあり、記事の最後の規定例では再検査については特に定めを行いませんでした。

しかし、再検査を会社の命令として行うのであれば、そのための規定が必要となります。

健康診断の費用

健康診断は法律上の義務です。そのため、原則、健康診断にかかる費用は会社が負担するものとなります。

これは、労働者が自身の希望する医師を選択して行う場合も同様です。

一方、法定外の項目については、この限りではなく、受けるかどうかを労働者の判断に任せることで、労働者負担にすることもできます。

なお、健康診断中の時間の給与については、過去の通達により、労使間の協議による取り決めによって決めるべき事項とされています。

つまり、労使間での話合い次第ではノーワーク・ノーペイの原則から無給とすることも可能ということです。

ただし、特殊健康診断(一定の有害業務に就く者に対する特別の項目の健康診断、歯科医師による健康診断)の時間については、業務の一環として行われるものとなるため、必ず給与を支払わないといけません。

就業規則「健康診断」の規定例

第○条(健康診断)

  1. 会社は、従業員に対して、入社の際および毎年1回定期に、健康診断を行う。
  2. 法令に定める特定の業務に従事する者および有害な業務に従事する者については、前項とは別途に、法令に基づく回数および特別の項目の健康診断を付加する。
  3. 前各項にかかわらず、従業員が希望する場合、従業員の選択する医師による健康診断を受診することができる。自身の選択する医師の健康診断を受けた従業員は、診断結果を必ず会社に提出しなければならない。
  4. 従業員は、正当な理由なく、1項および2項の会社の実施する健康診断を拒否することはできず、また、前項の従業員の選択する医師による健康診断を受診しない場合、懲戒処分の対象とすることがある。
  5. 1項および2項の結果、必要と認めるときは、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等、必要な措置を講ずることがある。

規定の変更例

第○条(健康診断)

  1. 会社は、従業員に対して、入社の際および毎年1回定期に、健康診断を行う。
  2. 法令に定める特定の業務に従事する者および有害な業務に従事する者については、前項とは別途に、法令に基づく回数および特別の項目の健康診断を付加する。
  3. 前各項にかかわらず、従業員が希望する場合、従業員の選択する医師による健康診断を受診することができる。自身の選択する医師の健康診断を受けた従業員は、診断結果を必ず会社に提出しなければならない。
  4. 従業員は、正当な理由なく、1項および2項の会社の実施する健康診断を拒否することはできず、また、前項の従業員の選択する医師による健康診断を受診しない場合、懲戒処分の対象とすることがある。
  5. 1項および2項の健康診断の結果、異常の所見がある場合、当該従業員は、会社の指定する医師による再検査を受診し、その結果を会社に報告しなければならない。
  6. 前項の再検査を受診せず、会社に報告を行わない従業員について、会社は当該従業員の労務提供の受領を拒否することがある。なお、この期間については無給とする。
  7. 1項、2項および5項の結果、必要と認めるときは、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等、必要な措置を講ずることがある。

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