労災保険未加入の大きすぎるペナルティ|それでも未加入のままでいますか?

※ この記事は2025年12月の最新情報を元に加筆修正されたものです。

労災保険は原則、強制加入です。

ただ、加入の手続きは会社側がする必要があるので、これを忘れていたり、意図的に手続きをしないなどにより、未加入のまま事業を行うことはできてしまいます。

しかし、悪いことは言わないので、労災に関してはきちんと加入手続きを行った方がいい、というのが今回の記事です。

目次

もしも未加入で労災事故が起こったら

では、もしも、会社が労災保険に未加入の状態で、雇用している労働者が労災に遭ったらどうなるのでしょうか。

会社が労災保険に未加入でも労働者は給付を受けられる

まず、大前提として、労災保険に未加入の会社で労働者が労働災害に被災した場合、労働者への補償はすべて行われます。

なので、労働者の方は安心してください。

また、労災保険未加入の会社、となると相当コンプライアンス意識の低い会社で、労災手続きをしてくれないことも考えられますが、そもそも労災は本人申請が原則。よって、会社が労災手続きしてくれないときは、本人が行えば問題ありません。

会社は労災の給付にかかった費用を肩代わりすることに

さて、会社側は、保険料を払ってなくても労災保険がなんとかしてくれるならラッキー、と思うかもしれませんが、そんな美味い話があるわけないです。

なぜなら、労災保険法では「事業主が故意または重大な過失により労災保険に係る保険関係成立届が提出していない期間」に生じた労働災害については、被災した労働者に対する労災保険の給付に要した費用の全部または一部の金額を、会社から徴収することになっているからです。

労災保険未加入の会社のペナルティ

要するに、労災から労働者に支払われる給付分を会社が肩代わりしなければいけないわけですが(厳密に言えば逆で、労働基準法で支払わなければいけないとされる労働者への給付を肩代わりしてくれるのが労災保険なのですが)、その具体的な内容は以下のとおりです。

肩代わりとして徴収される額

まず、肩代わりすることになる額は、加入手続きを「故意」にしていなかったか、「重大な過失」によりしていなかったかで変わります。

故意の場合:給付額の100%を未加入事業者から徴収

重大な過失:給付額の40%を未加入事業者から徴収

また、徴収される「労災保険の給付に要した費用」とは具体的には、以下の通りです。

休業補償給付
→ 給付基礎日額(3ヶ月間の賃金を平均し日割りしたもの)の60%を会社を休業した日数分

障害補償年金
→ 障害の重さにより年間で給付基礎日額の131日分~313日分

遺族補償年金
→ 遺族の人数により年間で給付基礎日額の153日分~245日分

障害補償年金や遺族補償年金は、毎年支払が発生するわけですから、会社は傾きかねません。

未加入で労災が起きたとしても加入するなら早いほうがいい

ただし、こうした費用の徴収が行われるのは「保険関係成立届の提出期限の翌日から成立届けの提出があった日の前日までに発生した事故について行った保険給付」に限られます。そのため、労災発生後、速やかに労災保険の保険関係成立届を提出すれば徴収される額は少なくなります。

その他、費用徴収されるのは、療養開始後3年間に支給されるものに限ります。また、療養(補償)給付及び介護(補償)給付は除かれます。

未加入期間の保険料

また、未加入期間に労働災害が発生している、していないに関わらず、加入が必要にもかかわらず未加入だった期間については、過去2年間分の保険料を遡及して支払う必要があります。

ここで支払う保険料には、本来支払う必要があった保険料の他に、未払いの保険料の10%の追徴金の支払も必要となります。

未加入に刑事罰はないが・・・

なお、意外にも、労災未加入に関しては、懲役や罰金などの刑事罰はありません。

とはいえ、上記のように刑事罰以上に重い罰があるので、ないといっても気休め程度かもしれませんが。

まとめ

このように、労災保険に未加入の状態で労災事故が起こったときの、会社のペナルティはかなり大きく設定されています。

しかも、上記はあくまで会社と国の間でのお金のやり取りだけ。労災が発生すれば、これとは別に、会社から、労働者への損害賠償も必要となります。

それでも、バレなければいい、ベンチャーには関係ない、の精神で未加入を続けますか? 取る必要のないリスクを?

そういうリスクは本業の方で取り、いわゆるバックオフィスに関しては、安全第一で行くのがいいのでは、と個人的には思います。

なお、そもそも労災保険とは、といった基本的なことについては以下の記事で解説しているのでよろしければ。

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この記事を書いた人

社会保険労務士川嶋事務所の代表。
「会社の成長にとって、社員の幸せが正義」をモットーに、就業規則で会社の土台を作り、人事制度で会社を元気にしていく、社労士兼コンサルタント。
就業規則作成のスペシャリストとして豊富な人事労務の経験を持つ一方、共著・改訂版含めて7冊の著書、新聞や専門誌などでの寄稿実績100件以上あり。

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