労働者派遣

改正派遣法の労使協定の提出は不要・・・、と思いきや

2018年10月23日

派遣労働者の同一労働同一賃金の労使協定方式

時間外労働の上限規制などに関連する労働基準法関連の省令改正が先月ありましたが、同一労働同一賃金に関連する短時間・有期雇用労働法(現・パートタイム労働法)や労働者派遣法に関する省令の改正はまだこれからという状況です。

ただ、もうすぐ改正されそうなのは確かで、というのも、先日行われた「第13回労働政策審議会 職業安定分科会 雇用・環境均等分科会 同一労働同一賃金部会」で、省令・指針の改正案が出てきたから。

短時間・有期雇用労働法、労働者派遣法の省令・指針に定める項目について(案)(出典:厚生労働省)

この中で気になったのが、改正派遣法の労使協定の部分。

 

改正派遣法での派遣先均等・均衡方式と労使協定方式

派遣労働者の同一労働同一賃金、2つの方式

改正派遣法では、派遣労働者の労働条件について、以下のいずれかの方法により決定する必要があります。

  • 派遣先均等・均衡方式:労働条件を派遣先の労働者に合わせる
  • 労使協定方式:派遣元の基準で労働条件を決める

派遣先均等・均衡方式の場合、派遣先の労働者の労働条件に派遣労働者の労働条件を合わせる都合上、派遣労働者の労働条件が安定しないという問題があります。

一方、労使協定方式の場合、派遣元の基準で労働条件を決められるものの、それだとこれまで通りで変化がなく派遣労働者ということで、労使間で労使協定を結ぶことが義務づけられました。

 

労使協定方式の協定事項

この労使協定で協定する必要のある事項は以下の通りです。

<労使協定の協定事項>

  1. 協定の対象となる派遣労働者の範囲
  2.  1 .の派遣労働者の賃金の決定方法(イ及びロに該当するものに限る)
    イ) 派遣労働者の従事する業務と同種の業務に従事する一般の労働者の平均的な賃金の額として厚生労働省令で定めるものと同等以上の賃金の額となるものであること
    ロ) 派遣労働者の職務の内容、職務の成果、意欲、能力又は経験その他就業の実態に関する事項の向上があった場合に賃金が改善されるものであること
  3. 職務の内容、職務の成果、意欲、能力又は経験その他就業の実態に関する事項を公正に評価し、その賃金を決定すること
  4. 賃金以外の待遇の決定方法
  5. 労働者派遣法30 条の2 の1 項に基づく派遣元による段階的かつ体系的な教育訓練の実施
  6. その他省令で定める事項

 

上記のうち「6.その他省令で定める事項」については、以下の通りとなる予定です。

・労使協定の対象となる派遣労働者の範囲を派遣労働者の一部に限定する場合は、その理由
・派遣元事業主は、特段の事情がない限り、一の労働契約の契約期間中に、派遣先の変更を理由として、協定対象派遣労働者であるか否かを変えようとしないこと

 

労使協定の提出は義務? 不要?

法律上は労使協定の提出は不要

さて、この労使協定なのですが、法律上、監督署への提出は義務づけられていません。

労使協定の中には、36協定や1年単位の変形労働時間制の労使協定などのように労働基準監督署への提出が義務づけられているものや、年次有給休暇の計画的付与や時間単位年休の労使協定のように提出が不要のものがありますが、派遣法の労使協定は後者というわけです。

 

6月1日の派遣報告の際に提出が必要

しかし、実は実は、この労使協定、監督署への提出は不要でも労働局への提出は必要となります。

というのも、省令で以下のように規定される予定だからです。

法第30条の4第1項に規定する協定を締結している場合には、法第23条第1項に基づく事業報告において、当該協定を添付するとともに、労使協定方式の対象となる派遣労働者の職種ごとの人数及び職種ごとの賃金額の平均額を報告することとする。

労働者派遣を行う会社は年1回、事業報告を行うことが義務づけられています(その際の提出先は労働局)。

その際に、労使協定方式を採用する会社はその労使協定を添付しろ、と省令で定められる予定なのです。

なので、どうせ提出しないんだから協定を結ばなくてもいいということは全くなく、労使協定方式を採用する際は労使間できちんと協定を結ぶことが求められます。

 

以上です。

ちなみに、今回の働き方改革法の省令改正では一貫して、労使協定を結ぶ相手となる過半数労働組合または過半数代表者のうち過半代表者について「使用者の意向に基づき選出されたものでないこと」という規定が追加されているので、こちらも注意が必要です。

 

追記:派遣労働者の同一労働同一賃金まとめ

派遣労働者の同一労働同一賃金についてより詳しく知りたい方は、より新しい記事で、詳しく解説してるので以下の記事をご覧ください。

 

今日のあとがき

思いのほか久しぶりの更新となってしまいましたが生きてます。社労士の川嶋です。

諸事情により、一人だけ年末進行がすでに始まっていてなかなか更新できずにいました。

そうした状況はしばらく変わりそうにないので、不定期更新ブログと思ってたまに覗いていただければと思います。

また、話は変わって拙著「「働き方改革法」の実務」ですが、おかげさまで2回目の重版をしていただくことになりました。

皆様には本当に感謝しても仕切れないくらいです。

 

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。行動経済学会(幽霊)会員 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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