労務管理

「中間管理録トネガワ」から読み解く労務管理のツボ ②-2「社員旅行と曜日と積立金」

2016年10月14日

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だいたい1週間くらいのペースでやっていこうと思っている「中間管理録トネガワ」から読み解く労務管理の話ですが、社員旅行の件が思いのほか長くなったたので分割して2日連続です。

社員旅行でまず考えるべきは、社員の参加を強制参加とするか自由参加とするかで、前者の場合、社員旅行中の時間は労働時間となり賃金を支払う必要がある、というのが前回まででした。

今回は社員旅行を平日に行くか休日に行くかで注意すべき点が変わってくることと、旅行積立金について説明していこうかと思います。

 

平日(労働日)と休日で変わる扱い

社員旅行を平日に行くか休日に行くか、というのは、平日のほうが旅費が安くて休日のほうが高い、みたいな問題ではありません。

例えば、平日、厳密には会社の労働日に社員旅行に出かける場合、社員には有給休暇を使う権利があります。

なので、社員旅行を有給休暇を使って休むことができるわけです。

これは自由参加、強制参加を問いません。

一方、会社の休日に社員旅行を行う場合、そもそも休日なので、自由参加・強制参加を問わず労働者は年次有給休暇は使えません。

 

強制参加か自由参加かでも変わる

不参加の場合の労働者の取り扱いも変わってきます。

強制参加の社員旅行が労働日の場合、それに行かないということは当然欠勤です。

一方、強制参加の社員旅行が休日の場合、これは休日出勤命令が出ていると考えられるため、これに逆らうということは会社の業務命令に反するということになります。

では、自由参加の場合はどうでしょうか。

労働日というのは会社が労働者に対して業務を用意する必要があり、業務がないということで休業させる場合、平均賃金の6割の休業手当が必要になります。

よって、労働日に自由参加の社員旅行がある場合、会社は参加しなかった労働者に業務を与えるか、休業させる場合は休業手当を支払う必要があります。

休日に関しては、もともと休みの日なので特に問題となる点はありません。

 

労働日・休日と社員旅行の関係まとめ

以上のことを図にまとめるとこんな感じです。

強制参加 自由参加
平日(労働日)
  • 有給の使用可
  • 不参加の場合は欠勤扱い
  • 通常の賃金
  • 有給の使用可
  • 不参加の場合、会社が別途業務を用意しない限り、休業手当が必要となる休業
  • 通常の賃金、もしくは休業手当
休日
  • 有給の使用不可
  • 不参加は実質休日出勤の拒否と同じなので、特段の事情がない限り業務命令違反に問われる可能性有り
  • 休日・時間外手当込みの賃金
  • 有給の使用不可
  • 不参加の場合は通常の休日と同じ
  • 賃金の支払いはなし

取引先との関係を考えると通常は休日に行くことが多いのでしょうが、1年単位変形労働時間制など、変形労働時間制を利用して休日と平日を変更している場合は注意が必要です。

例えば、会社カレンダーで社員旅行のある土日を会社の休日ではなく労働日にしている場合や、社員旅行のある平日を会社の休日にしている場合です。

ちなみに、社員旅行の日に社員の意思で有給を使用する、というのは、平日であれば法律上は問題ありません(会社的にどうかはわかりませんが)。

一方で、有給の計画的付与によって、会社が社員旅行の日を有給として指定することは、有給本来の目的と異なるので控えるべきでしょう。

もはや改正がいつになるのかわかりませんが、有給の強制取得が制度として始まった場合も、おそらくはよろしくないはずです。

 

積立金の性質は「社内預金」

最後に旅行積立金についてですが、社会保険や雇用保険のような法定で定められたもの以外を賃金から控除する場合、労使協定が必要となります。

よって、積立金を労働者の賃金から天引きする場合、その旨を定めた労使協定が必要となります。

積立金はその性質上「社内預金」に当たります。

預金は元本保証が基本で、預金の目的通りに使用されなかった場合、つまり、社員旅行に不参加で積立分を使わなかった労働者の積立分については、労働者に返す必要があります。

ただし、天引きの目的が、親睦費のように社員旅行と限定しておらず、普段の飲み会や忘年会や新年会などでも使用されるものとして引かれている場合には、必ずしもその必要はありません。

労使間で無用な金銭トラブルを避けるためにも、このあたりについては労使協定や就業規則で明確化しておく必要があるでしょう。

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。行動経済学会(幽霊)会員 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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