雇用保険制度

テーマは給付制限、「自己都合退職は「制限」も(働く人を守る労働保険第7回:中日新聞連載)」

2016年5月19日

 

前回は月給の額面が三十万円の場合、九十日で約五十一万円の基本手当(失業保険)が支給されるという話でした。「そんなにもらえるなら、仕事を辞めてしばらく休もう」なんて思った人もいるかもしれませんね。

でも、安易にやめてはいけません。なぜなら手当はすぐにもらえないから。もらえる条件を少し掘り下げてみましょう。ポイントは二つです。

まず一つ目。支給を受けるには元勤務先が作成した離職票を持ってハローワークへ行き、求職を申し込まなくてはいけません。離職してすぐに申し込んでも、失業期間が通算七日間に達するまではもらえません。通算というのは、アルバイトなどをした日は含まれないからです。

二つ目は、七日間が過ぎてもすぐには支給されないケースがあること。冒頭のような「基本手当でしばらく休もう」という働き手の都合による退職は、まさに該当します。「仕事が合わない」「上司が気にくわない」「別の仕事がしたい」といった理由も当てはまります。

これら自己都合による退職では三カ月間の「給付制限」が設けられ、支給は七日間が過ぎてからさらに三カ月後。「自分の意志で辞めるのだから、すぐ支給しなきゃならないほど困っていないよね」という考えです。

そんな仕組みを知らずに会社を辞めると、三カ月余りも収入がなくなります。懲戒解雇で失業した場合も、制限はかかります。

一方、倒産や会社都合の解雇、雇い止めなどの場合は、給付制限の対象外。自己都合退職と異なり、「早く生活を保障してあげなくては」と七日間に達すればもらえます。病気、けが、配偶者の転勤、家族の介護などによる離職も労働者の都合ともいえそうですが、個人ではいかんともし難いため、給付制限はかかりません。

中日新聞H28.5.19付「働く人を守る労働保険」より転載

 

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。行動経済学会(幽霊)会員 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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