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有給

混乱しやすい年次有給休暇と各種制度や待期期間との関係を徹底解説

年次有給休暇という制度は単純なように見えて複雑な制度です。おかげで勘違いも多く、昔、ドラマの踊る大捜査線で和久さん(いかりや長介)が「おれには30年分有給がある」みたいなことを言って、上司相手に啖呵を切っていたのを覚えています。

(言うまでもなく、年次有給休暇の時効は取得日から2年)

それでも労働基準法上の有給制度のみであれば、それなりに勉強すれば理解するのにそれほど時間はかからないと思うのですが、他の制度との兼ね合いが出てくると難易度が急上昇します。

今回は、年次有給休暇と労災、傷病手当金などとの兼ね合いについて解説していきたいと思います。

 

年次有給休暇の前提

年次有給休暇の概要については、このウェブサイトのQ&Aを読んでいただくとして、以下を読み進めていく上で重要なことを一点だけ、ここで述べておきましょう。

それは、年次有給休暇は「労働日(労働義務がある日)」にしか取得できないということ。つまり、会社の休日には取得できないわけです。

また、産後6週間のように、法律上就業が禁止されている期間も取得できません。法律上禁止されている以上、この6週のあいだは、労働者側に労働義務がないと考えられるからです。労働義務がない日を「労働日」と呼ぶことはできません。

 

産前産後と有給

前提のところで述べましたが、産後6週間の期間については有給を取得することはできません。

しかし、産前の6週間については「労働者の請求が合った場合」に休業するものなので、産前休業の請求がなければ会社としては休業を与える必要ありません。

逆に言えば、産前休業の請求をしないで年次有給休暇の請求が合った場合、労働者は例え産前休業の期間であっても有給を取得することができるわけです。会社としても、もともと産前休業ができる期間なので、業務の繁閑を理由とする「時季変更権」を行使することは難しいですし。

同様に、産後休業前半の6週間のあとの、後半2週間については「労働者の請求が合った場合」に「医師が支障がないと認めた場合」会社としては就業させることができます。

つまり、産後休業2週間の代わりに有給を取得する、ということはできなくもないわけです。

ただ、有給と比べて額は下がるとはいえ、産前産後休業期間中は出産手当金が支給されるので、有給は産前産後休業や、次に述べる育児休業が終わった後まで取っておいた方が良い気もします。もちろん、産前産後休業・育児休業中に時効にかかる有給日数についてはこの限りではありませんが。

 

育児・介護休業と有給

育児・介護休業は労働者の申し出により取得することができ、会社は原則拒否することはできません。

そして、育児・介護休業による休業日は「労働日」ではないので、育児・介護休業期間中は有給を取得することはできません。

ただし、計画付与であらかじめ有給の取得が決まっている場合は有給が優先されます。

育児・介護休業と年次有給休暇の関係性の基本は「先に決まっているものが優先」だからです。

(余談ですが、来年4月からの導入が噂される、会社による有給付与も同様の扱いとなると予想されます。)

 

労災の休業補償給付と有給

労働災害で負傷し、休業補償給付をもらう場合、以下の条件を満たす必要があります。

  1. 業務上の負傷又は疾病による療養している
  2. 療養のため労働することができない
  3. 賃金の支給を受けられない

ただし、以上の3つの条件を満たしていたとしても、最初の休業3日間(継続・断続問わない)は待期期間となり、休業補償給付はもらえません。その一方で、この3日間の待期期間中は会社の方に平均賃金の60%以上の休業補償を行う義務があります。

労災と有給の組み合わせで混乱するポイントは2つ。この待期期間中に有給を取ることは可能なのか(有給をとってしまった日を待期期間として数えられるか)が1点。もう1点は休業補償給付を受けている間、有給を取得することができるのか、ということ。

まず、待期期間中に有給を取ることは可能なのか、という点についてですが、可能です。

待期期間については、賃金の支給を受けていたかどうかを問わないからです(既に述べた、会社の休業補償との兼ね合いもあるのでしょう)。よって、待期期間に有給を取得することで、平均賃金の60%ではなく100%の収入を得ることもできます。

(当然、取得日数は消費するので、その後のことも考えて取得するかどうか決めたほうが良いと思いますが)

では、休業補償給付を受けている間に有給についてはどうでしょうか。こちらも取得することは可能です。

ただし、休業補償給付は賃金が支給される場合、額の調整が行われるため、年次有給休暇を取得した日については休業補償給付がもらえなくなることに注意してください。

(休業補償給付の1日の日額は、だいたい日給の60%+特別支給金の20%。有給は100%なので、有給のほうが額自体は多い)

 

傷病手当金と有給

健康保険の傷病手当金にも、労災の休業補償給付同様に待期期間があります。

ただし、こちらは「連続した3日間」というのがポイント。

また、労災のように「休業」という言葉も入ってません。

結論を言うと、労災の休業補償給付同様に、この3日間に有給を取得することは可能です。しかし、労災と違って、土日などの休日も待期期間と数えます。いくら待期期間といえどこうした会社の休みの日に有給を取得することはできないのです。

では、傷病手当金受給中はどうかというと、この期間についても有給を取得することは可能です。ただし、労災同様に額の調整が行われるので、有給を取得した日については傷病手当金はもらえません。(傷病手当金の1日の日額は、だいたい日給の3分の2なので、有給のほうが額が多くなります)

 

最後に、ちょっとテクニカルな話をすると、傷病手当金をもらえる状態で年次有給休暇を取得し、そのまま1日も出勤せず会社を辞めた場合でも、傷病手当金および、その継続給付(健康保険の被保険者資格を喪失しても傷病手当金がもらえる、というもの。条件を満たしていれば任意継続被保険者となる必要もない)をもらうことはできます。

ただし、待期期間の3日と権利発生の1日の計4日は会社にいないともらえません。また、退職日当日に出勤してしまうと労務不能とけんぽ協会の方に判断してもらえず、継続給付をもらえなくなる場合があるのでご注意を。

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今回紹介した制度を活用するとき、というのは労働者も今後の会社人生を考え直す機会になることが多いようです。その結果、少しでも有給を使おうと思う人も少なくないのです。

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名古屋の社労士事務所、川嶋事務所の代表で、このブログの筆者。 新しいこと、もの、特にIT関連が大好きで、社労士としては会社・労働者のITトラブル対策・就業規則作成が得意分野。 2016年4月から9月まで中日新聞で「働く人を守る労働保険」を連載、開業社労士専門誌「SR」に寄稿するなど、メディアでの執筆活動も。