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労働法

役員と従業員の労務管理に関する法律上の違い①労働法

2017/02/02

日本の場合、会社役員というのは、創業者やその家族がなるか、あるいはその会社でもともと働いていた人が出世して就任する、というのが普通です。

取引先や取引のある銀行の社員が出向して就任する、という場合もありますが中小規模のところではそれほど多くありません。

社員として入った家族や、もともと働いていた人が役員になる場合、労働者から役員へと立場が変わるわけですが、もともと労働者だった分、役員と労働者の違いがわからなかったり、そのまま労働者のままの感覚だったりで、労務管理がちぐはぐになってしまっている場合があります。

そこで今回は労働者と役員の違いについて、労働法や社会保険法の観点から見ていきたいと思います。

 

会社法上の役員かどうか

労働者と役員の違いについて見る前に、まず役員の中でも違いがあることについて抑えておかないといけません。

大きな違いは会社法上の役員かどうかです。

会社法上の役員の場合、会社の登記簿謄本に名前が載る他、身分も労働者とは完全に区別されます。

会社に雇用され労働契約を結ぶのが労働者ですが、役員の場合、会社という法人から経営を委任される立場に変わります。

そのため、労働者であったものを会社法上の役員とする場合、労働契約はそこで終わり。

退職扱いとなるため、雇用保険の喪失手続きをしたり、退職金等がある場合はきちんとそれらを精算した上で役員として任命する必要があります。

 

会社法上の役員でない場合は基本的に従業員

一方、登記簿謄本などに載らない役員、すなわち、会社法上の役員に当たらない役員は、立場的には普通の労働者と変わりません。

執行役員などと呼ばれる事が多い人たちですが、呼び方は関係ありません。

役員と名がついていても、会社に使用される労働者という扱いで、結ぶ契約も労働契約なので、会社法上の役員のように就任の際に、退職手続きを取る必要などはありません。

つまり、名目上は役員であっても、実態としては労働者というわけです。

 

兼務役員の場合は併せ持つ

労働基準法は、基本的に「労働者」を守るための法律です。

よって、「会社法上の役員ではない役員」は労働基準法の適用対象となる一方で、労働者ではない「会社法上の役員」は労働基準法の対象とはなりません。

ただ、「会社法上の役員」といえど、いわゆる兼務役員のように、部長などの管理職と役員を兼ねている場合があります。

役員としての委任契約と、労働者としての労働契約が混合している場合です。

このような場合、労働者と役員の地位を併せ持っていると考えられるため、兼務役員の労働者としての部分については、労働基準法の適用対象となります。

例えば、報酬について、役員報酬ももらうけど、労働者として賃金ももらう、という場合、役員報酬の部分は労働基準法と関係ありませんが、労働者としての賃金の部分については労働基準法の適用を受けます(賃金支払の五原則)。

 

会社法上の役員以外の役員や、兼務役員は管理監督者か否か

会社法上の役員出ない役員や、兼務役員の場合、会社内の立場は多くの場合、管理職の地位にあることが想定されます。

平社員なのに役員、というのはなかなか考えづらいですからね。

部長以上だったり、マネージャーとかそういった地位にあることがほとんどなのではないでしょうか。

管理職の場合、「管理職という理由だけ」で時間外手当の対象外としている場合がありますが、過去に問題となった「名ばかり管理職」の問題からもわかるとおり、管理職であれば誰でも時間外手当の対象外となるわけではありません。

これは労働基準法第41条の2項では、管理監督者の地位にあるものは労働時間や休憩・休日に関する規定の適用除外とする、としていますが、実態としてみた時に、問題とされた「名ばかり管理職」の人たちは名前や契約は「管理監督者」でも、実態は労働者と変わらないと判断されたからです。

第四十一条  この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。
二  事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者

 

では、会社法上の役員以外の役員や、兼務役員はどうかというと、これは流石に管理監督者にあたると考えて問題ありません。

執行役員や兼務役員でも、実態はヒラ社員、ということはほぼないでしょうし、金融機関向けの通達でも、「取締役等役員を兼務する者」は管理監督者に当たると記述されているので、他の業種でもこの通達は十分準用できるものと考えられます。

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しっかりマスター労働基準法-管理監督者編-(リンク先PDF 参照:東京労働局

以上です。

今回は、役員と労働者の違いや境目、労働基準法適用を中心に書きましたが、次回はより手続きな部分、社会保険や労働保険の取扱について解説していきたいと思います。

 

最後余談です。

ちょっと時間があったので、今年の社労士試験を見ていたのですが、社一(社会保険一般)の選択式が、社会保険法の成り立ちに関する歴史がでした。

平生28年度選択式(リンク先PDF 参照:社会保険労務士試験オフィシャルサイト

実は先月で終わった中日新聞連載の「働く人を守る労働保険」の記念すべき第1回の内容が「労働保険の歴史」。

テーマは労働保険とは、中日新聞で「働く人を守る労働保険」が始まりました

微妙にかすってない、と思いきや「労災」の話もほんの少し出て来る上、一問目の答はドイツ

もしかしたら、第1回の内容を読んでいて、1点拾えた、という人もいるかもしれないし、いないならいないでべつにいいかあ、と思った日照不足の秋の日のヒトコマでした。

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名古屋の社労士事務所、川嶋事務所の代表で、このブログの筆者。 新しいこと、もの、特にIT関連が大好きで、社労士としては会社・労働者のITトラブル対策・就業規則作成が得意分野。 2016年4月から9月まで中日新聞で「働く人を守る労働保険」を連載、開業社労士専門誌「SR」に寄稿するなど、メディアでの執筆活動も。