最低賃金に含める手当・含めない手当とは?計算方法と共に解説

※ この記事は2025年12月の最新の情報を元に加筆修正したものです。

最低賃金を考える上では、最低賃金を下回る賃金を支払っていないか、を正確に把握する必要があります。

これが時給なら、最低賃金も時給ですので、比較は容易ですが、日給や月給、さらには様々な手当が増えてくると、一筋縄ではいきません。

この記事では、最低賃金に含める手当・含めない手当や、計算方法について解説していきます。

なお、最低賃金とは、といったより基本的なことを知りたい方は、以下の記事をどうぞ。

社会保険労務士川嶋事務所
最低賃金とは?制度の基本・適用範囲、違反時の罰則まで総まとめ - 社会保険労務士川嶋事務所 最低賃金の仕組みや適用範囲、地域別と特定最低賃金の優先関係、違反時の罰則を解説。計算方法や手当など実務で迷いやすい点は関連記事で
目次

最低賃金の計算の際に含めない賃金

交通費や賞与は最低賃金の計算に含めない

最低賃金以上の賃金が支払われているかどうかを確認する際の「賃金」については、注意しないといけないことがあります。

なぜなら、そこに含めてはいけない手当等があるからです。

最低賃金の確認に当たって、含めてはいけないも手当等はは以下のとおりとなります。

  • 賞与など支払いの間隔が1カ月を超えるもの
  • 結婚祝い金や死亡弔慰金など臨時的なもの
  • 時間外手当(法定外だけでなく所定外も含めない)
  • 休日手当
  • 深夜手当
  • 精皆勤手当
  • 通勤手当
  • 家族手当   .etc

割増賃金の含める・含めない手当ともまた少し違うので、混同しないように気を付けましょう。

参考:割増賃金の算定に含めない手当

  • 家族手当
  • 通勤手当
  • 別居手当
  • 子女教育手当
  • 住宅手当
  • 臨時に支払われる賃金
  • 1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金

 

法律条文を踏まえた上での考え方

これは、最低賃金法第4条の3の、以下の内容を具体化したものとなります。

  1. 一月をこえない期間ごとに支払われる賃金以外の賃金で厚生労働省令で定めるもの
  2. 通常の労働時間又は労働日の賃金以外の賃金で厚生労働省令で定めるもの
  3. 当該最低賃金において算入しないことを定める賃金

賞与や結婚祝金など不定期なものや臨時的なものなので1、時間外手当や深夜・休日手当は2となるわけです。

また、3は具体的には精皆勤手当、通勤手当及び家族手当のことを指します。

実務上の注意点

なお、時間外手当を最低賃金に含めないのは上記の通りですが、法定内所定外賃金も同様に含めない点には注意が必要です。

(法定内所定外賃金とは、所定労働時間が8時間未満の場合、法定の8時間は超えないけれど所定労働時間を超える部分の賃金のこと)

また、精皆勤手当や家族手当も注意が必要でしょう。これらは実質的な基本給化してるところがあり、精皆勤手当や家族手当を含めれば最低賃金を超えているけれど、これらを除くと最低賃金を割るということが考えられるからです。

賃金の形態ごとの最低賃金を下回ってないかの計算方法

次に、上記を踏まえ、支払っている賃金が最低賃金以上となっているかを確認する際の「賃金」をどう算出するかを見ていきます。

前提として、最低賃金は時給で公表されるので、これと比較するには会社が払う賃金も時給に換算する必要があります。

時給の場合、時給額が最低賃金を下回っていなければ、最低賃金に違反していないことがわかるのでわかりやすいですが、日給や月給、年俸制の場合は以下の点に気を付ける必要があります。

日給制

日給(手当含む)÷1日の所定労働時間

時給換算する際は必ず「所定労働時間」で割ります。法定労働時間ではないので注意。

手当が支払われる場合、それが最低賃金に含めていいものであるなら、それを日割りした額を最低賃金に含めることができます。

また、当然ですが、前項で含めないとした手当はここに含めません。

月給制

月給(手当含む)÷1カ月の平均所定労働時間

月によって、所定労働日数が前後することがあるため、平均的な1か月の所定労働時間で月給を割ります。

1か月の平均所定労働時間は「1年間の労働時間数÷12か月」で出します。

出来高制・歩合制

出来高・歩合の賃金の総額÷出来高・歩合労働の総労働時間

なお、完全歩合ではなく月給制と併用の場合は、両者の合計でこれを見ます。

年俸制

(年俸÷12)÷1か月の平均所定労働時間

年俸制の場合でも、通常、支払いは月ごとなので月給制と基本的には同じです。

もちろん、年俸の中に固定残業代や交通費などが含まれている場合は、それらを除く必要があります。

賞与については年俸自体に賞与が含まれている場合、例えば年俸の16分の1を各月に支払い、16分の2を2回に分けて賞与として支払うというような形となっているかと思われます。

実は、労働基準法の平均賃金や残業代単価、雇用保険の離職票記載時の賃金等の場合、臨時的に支払われるものだとしても「額が確定されている」のであれば賞与もこれらの中に含めるとされています。

そのため、これらの規定・通達を準用するのであれば賞与を含めて年俸が決まっている年俸制の場合でも、賞与も含めて最低賃金を計算することになるかと思われます。

変形労働時間制が適用される場合

変形労働時間制が適用されるかどうかは、最低賃金の計算には影響を与えません。

そのため、1カ月単位の変形労働時間制や1年単位の変形労働時間制の場合でも、月給制ならば月給制と同じように計算します。

まとめ

うっかり、最低賃金を下回る賃金を支払っていた、となると罰則や未払い賃金の発生に繋がりますので、本記事を参考に、必ず最低賃金を上回る賃金を支払うようにしましょう。

なお、弊所では、

    「自社の賃金体系が最低賃金を下回っていないか心配」

    「従業員の給与体系を見直したい」

    といった方たちに対し、実情をヒアリングしたうえで、リスクのない形で労務管理をサポートを行っています。

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    この記事を書いた人

    社会保険労務士川嶋事務所の代表。
    「会社の成長にとって、社員の幸せが正義」をモットーに、就業規則で会社の土台を作り、人事制度で会社を元気にしていく、社労士兼コンサルタント。
    就業規則作成のスペシャリストとして豊富な人事労務の経験を持つ一方、共著・改訂版含めて7冊の著書、新聞や専門誌などでの寄稿実績100件以上あり。

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