労務管理

あなたも舛添?会社の出張で貯まったマイルは個人が使用していいのか?

2016年5月30日

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東京都知事の舛添氏の公費の私用が問題になってます。

まあ、はっきり言って、東京都民じゃないからどうでもいいんですけど(だから、今までネタにしてこなかった)。それより、名古屋城の木造復元の400億の方がよっぽど、って、いきなり話がずれ申した。

で、舛添知事批判のそもそもの発端となったのがファーストクラスでの海外出張だったわけですが、その際、貯まったマイルはどうしたのかとか(舛添知事が個人のマイルにしたというのが定説)、実際いくらくらい貯めたのか(13万マイルと、ファーストクラスの渡航費に比べると意外と大したことがないらしい)、一部で話題になっています。

今回はそれに乗っかって、マイルと労務管理の話。

今回の舛添知事のように(というには、早計かも知れませんが)、会社員が会社の出張で飛行機を利用した際に、個人のマイレージカードにマイルを溜めた場合、会社は懲戒処分できるのでしょうか。

 

マイルは会社のもの

基本的に、会社の出張によって発生するマイルというのは会社に帰属するものと考えられます。

会社の業務の範囲内で発生するものですし、マイル発生のもととなった出張費や購買費だって、会社のお金なわけですから。

なので、会社員が会社の出張や買い物で発生したマイルを個人のマイレージカードに貯め、それを私用で使うとなると、それは横領、ということになります。

横領となると、懲戒処分待ったなし、ということになりますが、話はそう簡単じゃないのです。

 

マイルは個人向けサービス

というのも、航空会社が提供するマイルというのは、基本的に法人利用を想定していません(ETCマイレージは除く)。こうした制度は個人客の囲い込みのためのサービスだからです。

JALにしろANAにしろ、マイレージクラブの会員規約を見ると、「会員」の定義ははっきり「個人のお客様」と書いてあります。

JALマイレージバンク 一般規約

ANAマイレージクラブ会員規約

つまり、出張旅費等によって発生するポイントは会社のものであっても、会社がその所有権(債権というべきか)を主張すると、そのサービスの規約違反となり、消えてなくなる可能性があるわけです。

正直、消えてなくなるものに目くじら立てて懲戒処分するより、社員に上げたほうが良いんじゃないの? とわたし個人は思ってしまいます。

一応、JALやANAが発行する法人用のクレジットカードならばマイルを貯められないことはないですが、その場合も、法人用クレジットカード同士でのマイルの共有はできないので、会社としての資産と数えていいかは微妙なところではないでしょうか。

 

マイルの取り扱いについてメリット・デメリット

いずれにせよ、マイルについての細かい話というのは、法律で決まっているわけでもなければ、裁判所で判例があるわけでもありません。

法律にも判例がないということは、これらの取り決めについては会社が決められる、とも言えるし、決めないといけないとも言えるわけです。

では、マイルを会社のものにするか個人のものにするかで、どのようなメリット・デメリットが生まれると考えられるでしょうか。わたしなりに考えてみました。

まずはマイルを会社のものにする場合、

メリット

  • マイルによる出張費の削減(法人カード使用前提)
  • 企業秩序の維持

デメリット

  • マイル管理コストの増加
  • 法人カードの年会費等のコスト増

 

会社でマイルを管理するとなると、一言で言えば、面倒が増えます。既に述べたように、法人でのマイルサービスへの加入はできませんから、まずは法人カードを作らないといけないわけですから。作ってしまえば、経費精算等楽な部分も生まれると思いますが、それが年会費等のコストと釣り合うかは企業の規模や業種によるでしょう。

では、労働者のものにする場合はどうでしょうか

 

メリット

  • 労働者の福利厚生になる
  • 管理コストがかからない

デメリット

  • 企業秩序が乱れる可能性
  • 無用な出張・不適切な人材による出張

 

労働者側からすると、出張で自分のマイルが増えるのが嬉しいのは間違いありません。また、下手に管理しない分、会社も楽です。

一方、マイルというのは使いみちが限られているとはいえ、半分お金みたいなもの。なので、マイル目的の出張希望者が現れる可能性は否定できません。また、本来会社のものであるはずのものを個人にあげる、ということで、労働者側が悪い意味で公私混同し、マイル以外のものまで横領する、ということも考えられます。

 

いかがでしたでしょうか。

正直な話、マイルや、あるいはそれ以外のポイントサービスもそうですが、会社のものにするのか、個人にあげてしまうのか、どちらがいいかは会社による、としか言えません。社員の出張がないような業種や小規模事業所の場合、決めておく必要もないでしょう。

ただ、少なからず、社員の方が飛行機で出張する機会があるのであれば、あらかじめ、はっきり決めておいたほうがいいのは間違いありません。

残念ながら、会社と労働者の間の暗黙のルールほど怪しいものはありません。マイルをきっかけに次々と暗黙のルールが生まれると、企業統治に影響が出ますので最低限のことだけは決めておいたほうが良いでしょう。

 

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。行動経済学会(幽霊)会員 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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