その他労務管理

助成金は簡単にもらえる?名古屋の社労士が教える「営業トーク」の落とし穴

2025年10月21日

会社を経営していると、

「御社はこの助成金の対象になります」

「手続きはすべてこちらで代行します」

といった営業を受けることがあるんじゃないでしょうか。一見、魅力的な提案に見えますが、実は注意が必要です。

1. 助成金は「申請するだけ」でもらえるものではない

なぜなら、まず、多くの助成金は、単に申請書を出せばもらえるものではないからです。

実際には、新しい制度を導入したり、人材を採用・育成したり、設備投資を行ったりすることが条件になっています。

つまり、助成金を受け取るには「会社の仕組みを整える」「働き方を改善する」といった本質的な改革が必要なわけです。

「書類さえ出せば簡単にもらえる」というのは、誤解です。

 

2. 助成金営業のよくあるけど、「良くない」パターン

2.1. 根拠なく「取れる」という

助成金には、助成金ごとに様々な受給要件があります。

そのため「御社はこの助成金の対象になります」とは簡単には言えません。

でも、なぜかそれを言う人たちもいます。

これが顧問契約を結ぶ、会社の内部に詳しい社労士なら、わかります。でも会社のことを何も知らない外部の人がこれを言う、というのは、そういうことで相手の気を引きたい、という気持ちがあるわけです。仮に、実際には助成金の対象にならなくても、助成金申請には就業規則の作成が必須なことが多いので、そういった別のところで稼ごうとしている場合もあります。

それが一概に悪いこととは言い切れませんが、最初に嘘をついて近寄ってくる相手のことを信用、できますかね?

 

2.2. グレー、もしくはブラックな方法を勧めてくる

一部の業者や社労士事務所の中には、かなりグレーな方法を勧めてくる業者もいます。

その中でも、現在でも不正受給の報告が相次ぐ、キャリアアップ助成金の正社員化コースには気を付けないといけません。

こちらはその名称の通り、非正規労働者を正社員にすることをその受給要件としていますが、中には、本当は非正規じゃないけど契約上は非正規扱いにし、その後賃金アップした段階で正社員にした、と見せかける方法が一時期かなり横行していました(そのため、こちらの助成金の要件は年々厳しくなっています)。

また、もともと正社員で雇用する予定だったけど、この助成金のために最初の6か月だけ非正規扱いにする、という方法は今でもみられますが、これも黒寄りのグレーな方法です。

 

2.3. そもそも社労士資格を持っていない

助成金のうち、雇用保険や労働保険に関連する助成金は、基本的に社労士しか会社に代わって申請することはできません。

しかし、中には社労士資格を持っていない会社がこれを勧めてくる場合があります。

もし、社労士資格のない相手に助成金の申請を頼んでしまうと、会社も不正受給の片棒を担ぐことになってしまうため、仮に助成金申請を依頼するにしても、必ず、相手が社労士資格を持っているかは確認すべきです。

なお、こうした社労士資格のない会社が助成金営業をする場合、営業だけして実際の手続きは社労士に下請させる、ということもありますが、これは社労士法違反になる可能性が極めて高い行為となります。

関連記事:社労士に営業代行を持ちかける会社は、社労士法違反の教唆・幇助をしている

 

3. 助成金のために「形だけの制度」を作るとどうなるか?

さて、それでも、お金がもらえるならいいと、「助成金をもらうこと」を目的にして制度を作るとどうなるでしょうか。

形だけの人事制度や研修制度ができてしまい、現場では活用されなくなる、というのが実際に多いケースです。作った制度の維持には、それなりに手間や人件費などのコストがかかるため、貰ったお金以上に実はコストがかかっていた、なんてことも。

そもそも、助成金は「会社の成長をサポートする仕組み」であって、「お金をもらうための裏ワザ」ではありません。

本当に意味のある助成金にしたいのであれば、導入した制度を活かすことが重要です。

 

4. 助成金を正しく活用するための5ステップ

では、具体的に助成金を活用するにあたって、会社はどうすればいいのでしょうか。川嶋事務所では以下の流れを推奨します。

  1. 自社の課題を明確にする
  2. その課題解決に助成金が使えるか検討する
  3. 労働局に話を聴きに行くなど要件を詳しく確認する
  4. 受給要件を満たすための社内で準備をする
  5. 助成金を実際に申請する

4.1. 自社の課題を明確にする

形だけの制度を作って後で苦労することがないよう、助成金の申請を検討する上で、まずは自社の課題を明確にしておく必要があります。

 

4.2. その課題解決に助成金が使えるか検討する

自社の課題が見えてきたら、その解消のために、それに適した助成金があるか確認してみましょう。

例えば、男性の育児休業の取得率が悪い、これを促進するのが課題だ、という場合、「両立支援等助成金」を申請することを検討するといいわけです。

なお、厚生労働省では雇用や労働条件に関する助成金の一覧をHPで公開しているので、誰でも確認することができます。

参考:厚生労働省・雇用関係助成金一覧

 

4.3. 労働局に話を聴きに行くなど、要件を詳しく確認する

一つ一つの助成金の受給要件は、かなり難解で、いつ申請するのか、申請の際、どういった資料が必要なのか、慣れるまで非常にわかりづらいかと思います。

社労士に助成金申請を依頼したい、という人が多いのは、やはり、この申請の要件を確認するのが大変だからでしょう。

なお、会社で助成金申請をがんばる、という場合、労働局に直接話を聞くのが安パイです。

愛知県の場合、愛知労働局の「雇用環境・均等部」や「あいち雇用助成室」が助成金の受付や相談をしています。

参考:助成金のご案内|愛知労働局

 

4.4. 受給要件を満たすための社内で準備をする

申請ができそうだな、となったら、受給要件を満たすため社内制度を整えるなど、準備が必要となります。

なお、助成金によっては、先に計画書を出さないといけない場合があります。

計画書を出す前に、受給要件を満たすともらえない助成金もあるため、必ず計画書が必要かどうかは事前に確認しておきましょう。

 

4.5. 助成金を実際に申請する

実際の申請に当たっては、労働局の窓口、郵送、電子申請などで、様々な方法で行うことができます。ただ、慣れてないうちは窓口に行って書類の不備がないかなど、担当者に確認してもらうといいでしょう。

 

5. 助成金に関するよくある質問

5.1. Q1: 助成金申請の費用相場はいくらですか?

A: 社労士に依頼する場合、受給額の10%前後一般的です。報酬の支払い方としては「着手金+成功報酬型」や「完全成功報酬型」のどちらかが多いです。

 

5.2. Q2: 助成金申請から受給までどのくらいかかりますか?

A: 助成金の種類によりますが、申請から受給まで6ヶ月〜1年程度かかるものが多いです。

 

5.3. Q3: 自社でできない場合、誰に相談すべきですか?

A: 雇用関係の助成金は社労士の独占業務です。必ず社労士資格を持つ専門家に相談してください。

 

5.4. Q4: 一度不正受給と認定されたらどうなりますか?

A::受給額の返還+2割の加算金、さらに5年間助成金申請ができなくなります。(参考:雇用調整助成金(不正受給関係)|厚生労働省

 

6. 名古屋の社労士としての私の考え:「助成金は目的ではなく結果」

最後に、筆者である名古屋の社労士・川嶋の考えを言わせてもらうと、わたし自身は助成金を「もらうこと」自体を目的にはしていません。

会社を良くするための改革を進めた結果として、助成金が活用できる。それが、本来あるべき助成金の使い方だと考えています。

人材育成・働き方改革・労務環境の整備など、会社の「土台」を強くする過程で、自然と助成金が利用できる場面が出てきます。

そのとき初めて、助成金は本当に価値のある「味方」になるわけです。

 

7. 名古屋で助成金の相談なら、まずはお気軽にご相談ください

もし、これを読んだあなたが

「助成金を活用したいけど、自社に合う制度が分からない」

「営業を受けたけど、信頼できるのか不安」

「本当に意味のある助成金活用を考えたい」

とお感じなら、一度、以下のフォームよりご相談ください。

会社の実情に合わせた助成金活用を一緒に考えましょう。

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。 「会社の成長にとって、社員の幸せが正義」をモットーに、就業規則で会社の土台を作り、人事制度で会社を元気にしていく、社労士兼コンサルタント。 就業規則作成のスペシャリストとして豊富な人事労務の経験を持つ一方、共著・改訂版含めて7冊の著書、新聞や専門誌などでの寄稿実績100件以上あり。

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