社労士

社労士が営業する雇用保険の助成金の真実をお教えしましょう

2015年12月29日

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詐欺とは言わないまでも・・・

わたしのクライアントにも、他の社労士の先生からよく雇用保険の助成金のセールスがあります。それも「簡単にもらえるんですよ」的な感じで言うらしく、「本当にそうなの?」といった感じでうちに連絡が来ます。

えー、はっきり言ってしまいますが、簡単に貰えれば苦労ないです。というか、そんなのあったら、うちからお客さんに向けて営業してますもの。

 

助成金を取り巻く環境はリーマン・ショック直後と今とでは随分変わった

リーマン・ショックによる世界的な大不況の際、日本政府及び厚生労働省は「これで心置きなくバラマキができる」と言わんばかりに、経営危機に陥った会社向けの助成金をあれやこれやと作りました。

その中でも大ヒットした助成金に「中安金」というものがあります。正式名称「中小企業緊急雇用安定助成金」。

通常、労働日に労働者を会社の都合で休業させる場合、休業手当と言って平均賃金の60%を会社は労働者に支払わなければならないと労働基準法で定められています。

会社の都合で労働者を休ませる、ということは、時給制や日給月給制などの賃金制度の場合、その間の労働者の給与は発生しないことになります。会社にとってはそれでいいかもしれませんが、労働者にとっては大変です。そのため、会社の都合で労働者を休ませるのなら、会社は労働者の生活をきちんと補償しなさい、というのが休業手当の趣旨です。

しかし、当時はリーマンショックにより仕事がない、だから、労働者を休ませたい、と思っているのに、休ませるにも人件費がかかるのでは会社が潰れかねません。そのため、会社が労働者に対して休業手当として支払った額の5分の4(条件を満たせば10分の9)に関しては、3年間で300日分を国が補助しますよ、というのがこの中安金でした。

3年間のうちの300日分の実質的な人件費が、「平均賃金の60% × 5分の1」となったわけですから、その補助の大きさがわかるでしょう。

しかし、そうした世界不況が落ち着いてくると、当然こうした助成金は役割を終え次第になくなっていきます。助成金は暴力団の資金源に利用されるなど、厚生労働省の運営の不味さも露見し、実際、中安金のような助成金は今やほとんどありません(中安金そのものも、雇用調整助成金と名称を変え、助成額は大幅に減額されています)。

 

助成金セールスの本当の目的

逆に現在主流の雇用保険の助成金というのは会社の経営を助けるというよりも、会社で働く労動者のキャリア形成やスキルアップ、あるいは職場環境の改善を助けるものがほとんどになっています。

つまり、会社を助けるのではなく、会社にお金をあげることでそこで働く労動者を助けるものが主流となっているわけです。

よって、助成金をもらう上で面倒な計画書や申請書の作成などは社労士が請け負うとはいえ、昔に比べれば会社の負担も少なくない。労動者に対して教育訓練を行ったり、非正規を正規雇用にしたりと会社にとってはコストの掛かる施策を行う必要が有る上、助成金によっては労働局等が対象の事業所を事前調査することもあるからです。

なので、助成金は簡単にもらえるか、という問いに対する答えは、「昔ほど簡単でもないし額も大きくない」というのが偽りなき事実。

労働局主体の助成金はそれでもまだマシですが、独立行政法人が主体だと本当にメチャクチャ面倒!

これ言うと同業者に嫌われそうだけど、ぶっちゃけた話、助成金セールスの本当の目的は、助成金申請にほぼ必須となる就業規則の作成・変更だと思ってください。助成金&就業規則の作成・変更を通じて、お客さんの懐に入ろうという魂胆なわけです。

 

※ 本記事は旧社会保険労務士川嶋事務所(名古屋)ウェブサイトのコンテンツを再構成したものです。

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。行動経済学会(幽霊)会員 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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