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労務管理と行動経済学

長時間労働が影響を及ぼす「本人」と「周り」のメンタル・幸福度の話(行動経済学会シンポジウムより)

2017/08/26

長時間労働に関しては、本人が好きでやってるなら長時間労働も別にいいのでは、という考えがあります。

わたし自身も実はそう思っていました。もちろん、残業代に関して問題がなければ、という前提はありますが。

しかし、最近の研究では必ずしもそうとは言えない結果が出ているようです。

 

長時間労働によって「仕事満足度」が高まる、が、しかし

以前から、長時間労働と肉体的な不調には負の相関関係があることはわかっていましたが、最近になって長時間労働とメンタルヘルスについても負の相関関係があることがはっきりしてきました。

その一方で、意外なことに、労働時間が一定の時間、具体的には週55時間を超えたあたりから「仕事満足度」も上がることもわかってきています。(ちなみに、一般的な所定労働時間の40時間から55時間のあいだでは満足度は下がっている)

つまり、長時間労働をすればするほどメンタルヘルスは悪化していくけれど、仕事満足度は上がるわけです。

要因として、労働時間が長くなると仕事の習熟度が高まり仕事が面白くなってくること、あるい長時間労働という形で周りから求められることに充実感を感じられる、などが考えられます。

ただ、いずれにせよ、仕事満足度が上がってもメンタルヘルスの悪化することに変わりはないことから、仕事満足度が長時間労働のストレスを軽減させることはないということになります。

つまり、どんなに「やりがい」があっても長時間労働は体にとって毒、長時間労働してる状態というのはランナーズハイや、あるいは麻薬を使っているような状態なのです。

よって、例え「本人が好き」で長時間労働しているように見えても、それは労働者本人にとって良いこととは言えない可能性があります。

 

長時間労働する人が職場にいると、労働時間が短くても「不幸」を感じる!?

長時間労働を行う労働者「本人」への影響は以上の通りですが、では「周り」への影響はどうでしょうか。

まず、長時間労働を行う労働者がいる職場は周りもそれに引っ張られて長時間労働をしやすい傾向にあります。

こうしたことは、よくいう「空気」の問題に思えますが、実はもっと根深かったりします。

そうした長時間労働者がいる職場では、他人よりも労働時間が短い場合、感じられる「幸福度」が低くなる傾向にあるからです。

そう感じるには個人差がありますが、例えば、「自分だけ損するのは嫌」と考える人の場合、自分より労働時間が長い人がいると、自分よりその人の方が賃金が高くなると考えることで幸福度が下がってしまうようです。

いずれにせよ、周りを長時間労働化させ、幸福度を下げる恐れがあることを考えると、長時間労働は本人だけの問題とは言えそうにありません。

 

以上です。

周りに対する長時間労働の悪影響でいうと、上司が長時間労働を行う場合の方が影響が大きいようですが、上司が管理監督者として労働時間の適用除外を受けていたりすると、悪影響に拍車をかける可能性もあります。

よって、管理監督者だから(残業代もないし)労働時間はどうでもいいとするのではなく、管理監督者だからこそ、自分や周りの労働時間に黄をかける必要があるといえます。

資料:なぜ人々はメンタルヘルスを毀損するリスクを冒してまで長時間労働してしまうのか ― 仕事満足度とメンタルヘルス、労働時間に関する検証 ―

 

今日のあとがき

昨日に引き続き行動経済学会シンポジウムから。

今日の話は早稲田大学の黒田祥子教授の講演と大阪大学の大竹文雄教授のものを自分なりにまとめてみました。

個人的には「良い長時間労働と悪い長時間労働」があって、「良い長時間労働」のためにホワイトカラーエグゼンプションのような制度は必要、という考えは今でもあります。

ただ、そうした自分の仮説の中の「良い長時間労働」も、長時間労働による「仕事満足度」でごまかされている部分が多くありそうだと思うと、「精神や肉体に影響のない長時間労働の存在」が照明されるような研究結果が出てこないと、この自説はあまり強くは言えないのかなあ、というのが今回のシンポジウムを経て思いました。

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名古屋の社労士事務所、川嶋事務所の代表で、このブログの筆者。 新しいこと、もの、特にIT関連が大好きで、社労士としては会社・労働者のITトラブル対策・就業規則作成が得意分野。 2016年4月から9月まで中日新聞で「働く人を守る労働保険」を連載、開業社労士専門誌「SR」に寄稿するなど、メディアでの執筆活動も。