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ある名古屋人が語る、たとえタダでもリニアで名古屋‐品川間の通勤なんてしたくない4つの理由

2015年11月30日

JR Central SCMaglev L0 Series Shinkansen 201408081006

(Wikipediaより引用)

まあ、ある名古屋人っていうのはわたしのことなんですが(笑)

リニアモーターカーが開通すると、名古屋-品川間が40分で行き来できるようになります。これにより名古屋は東京郊外と言える距離となり、リニアで名古屋から東京に通勤する人も出てくるのでは、という話があります。まったく、

なに、たあけたこと言っとんだ(何バカなこと言っとるんだ)

というのが、名古屋に住む1市民の偽らざる思い。

今日はその理由を1つ1つ語っていきたいと思います。

 

①通勤費

タダでも、なんてタイトルに入ってる割にはいきなり金の話ですが、とにかくリニアで通勤なんかしたら毎月の通勤費いくらになるんだよ、という話。

新幹線定期で見ると、品川-浜松間の1ヶ月の定期が184,980円(新幹線定期は300キロ以内の区間しかない)。

リニアの乗車賃は新幹線の+700円くらいという話があるが、それが本当だとしても往復で1400円、30日で42000円、上の18万と足して、名古屋までの延長分とか割引分と差し引いても20万オーバーは固い。それだけあれば、無理しなきゃ都心でマンション借りられるでしょ。

それでなくとも少子高齢化による人口減と、現在も問題になっている空き家の増加のことを考えると平均的な家賃は今後下がっていくはずなんだし。

それに会社が通勤費を出すにしても電車・バス通勤の非課税は10万円まで。つまり、リニアで通勤すると取られる税金も増えるわけ。なおさら東京に住んだほうが良い。

そもそも、週一で、とかならともかく、名古屋に住んでいて、東京にひっきりなしに行く必要があるような職種や人材って正直想像がつかない。名古屋に本社がある会社で、本社に勤務しているけど東京支社の仕事を見てもらいたいとかで、単身赴任ではなく名古屋から通勤とか? でも、それなら人材面を考えても本社を東京に置く会社の数を考えても、圧倒的に逆のほうが多いでしょう。

というか、そこまでしてくれる会社なら、タダ(と言っても、会社の金だけど)でリニアに乗せるより、タダ(繰り返すが会社の金だ)で東京に住まわせてよってことです。

 

②家からリニア駅のあいだも通勤だ

いくら名古屋-品川間が片道40分と言っても、リニアに乗るにはリニア駅のある名古屋駅まで行く必要があります。

名古屋の鉄道網というのは、基本的にすべて名古屋駅に集まるように構築されているのですが、そもそも名古屋は自動車文化が強い地域で、鉄道網も東京や大阪ほど網の目のように通っているわけではありません。なので、鉄道駅から遠いところに住んでる人からすると、名古屋駅に行くのは割と不便。

しかも、名古屋駅についてもそこからすぐにリニア駅に行けるわけでもない。

名古屋駅、通称名駅は、外からくる人には迷駅とよばれるくらい各鉄道の改札口がバラバラのところにあって迷いやすい。迷いやすいだけでなく、各鉄道会社の改札口の距離が離れているので、JR以外の名駅や近鉄から新幹線の改札まで行こうとすると結構な距離歩くことになります。リニア駅の予定地を考えると、リニアだともっと歩くことになるでしょう。名駅を歩く時間だって通勤なのです。

よって、名古屋-品川間の片道40分という利点を活かすなら名駅近くに住むのが一番だと思うのだけど、それなら東京に(以下略)

 

③リニア駅から会社のあいだも通勤だ

名古屋から通勤してくる人の通勤地が品川だとは限らないでしょ、という話。まあ、さすがにそこから東京郊外に行くことはないだろうけど。でも、やはり、それなら東京に(以下略)

 

④名古屋から大阪や京都に通勤するか

名古屋から大阪まで新幹線だと約50分、京都までだと約40分で行けてしまう。しかも、東京と比べて交通費はほぼ半額。リニアでも名古屋-品川間と大して差はありません。でも、名古屋から大阪や京都に通ってる人なんてどれだけいるのかって話。ほとんどいない理由は上の②③とほぼ同じです。

もちろん、東京圏というのは大阪や京都以上の世界有数の経済圏ですし、東京には何より首都機能があり、省庁もあれば国会もある。国民の意思決定に大きな役割を果たす大手メディアもある。大企業の本社ほとんどが東京。そういう意味で、大阪や京都よりも「引力」は大きいかもしれませんが、それでも①②③の理由からその力は限定的だというのがわたしの考えです。

 

結論:「可能になる」ことと「実際にそうなる」のとは違う

名古屋-品川間の移動時間が40分になる、と聞くと、八王子から品川に行くよりも早いわけですから、確かにリニアで名古屋が東京の郊外となり、名古屋から東京に通勤する人が増える、というのは現実的に思えるかもしれません。

でも、そのコストはタダではないし、名古屋を名古屋と一纏めにしすぎな議論といえます。一口に名古屋といったってそれなりに広いわけです。

よって、確かにリニアによって通勤は可能になるかもしれませんが、実際にそうするメリットが東京の本当の郊外に住むといった他の選択肢と比較して優位性がなければ増えることはない、それがわたしの結論です。優位性というのは、単なるコスト面だけでなく、平日は東京で働き、休日は名古屋でゆっくりする、という選択をみながしたくなるくらいに名古屋という都市圏の魅力向上によっても生まれてくるものだと思います。

 

最後に、今回は名古屋から東京に通勤する、という点に集約して話をしました。つまり、名古屋から東京に働きに行く人、のことに絞ったわけです。当然、リニアに乗る人というのはそういう人ばかりでなく、東京から名古屋に働きに行く人もいれば、名古屋から東京に遊びに行く人もいてその逆もいる。

さらに言えば、リニアで東京から名古屋に働きに来るような場合、名古屋に赴任するよりも、住居費がなくなるので名古屋にお金を落とす額は減ることも考えられます。

とにかく、リニアによる都市間の経済関係の変化予想は、「名古屋から東京に通勤」なんて、キャッチコピーに惑わされず、様々な部分を総合的に考えないと見誤る可能性があるということは覚えておいたほうが良いでしょう。

 

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。行動経済学会(幽霊)会員 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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