人材育成

いきなり!ステーキの社長が見落としている契約と評価の話

2022年2月3日

少し前ですが、いきなり!ステーキの社長が社内報で、

「店舗では作業するだけで給料をもらえると思うのは大間違いです。」

といった内容を書いたことについて、ネット世論ではちょっとした論争が起こりました。

賛同する人、反論する人どちらも見受けられましたが、その辺をまとめた記事はすでにいくつかでているので、詳しくはそちらを。

いきなりステーキ社長、従業員に喝 「作業するだけで給料をもらえると思うのは大間違い」

 

給料を払うだけで、従業員が自分の期待通り働いてくれると思ったら大間違い

さて、今回わざわざ、時期をちょっと逃してまで、この発言を取り上げて、ブログにまでしようと思った理由はただ一つです。

それは、この発言を見て、

「給料を払うだけで、従業員が自分の期待通り働いてくれると思ったら大間違いです。」

と、思ったから。

もちろん、何も言わなくてもしっかり働いてくれる責任感の強い人もいますよ?(うちの事務所の事務員の方たちなんてまさにそう)

でも、何も言われなかったら、何したって給与が変わらないのだったら、多少手を抜いたり、サボりたくなるのが人間の心情というもの。(わたしだって学生アルバイトの頃は結構適当やってました)

社長からしたら、それで店が潰れたらどうしてくれるんだ、と思っているのかもしれませんが、別に、今働いてる会社がなくなったって、多くの労働者は他の働き場所を探せばいいと思ってますよ。

 

じゃあ、会社は何をしていたの?

また、いきなり!ステーキの社長は今回の社内報で、上記の言葉以外にも、

「店舗従業員のあなたの力で何人のお客様がご来店頂けたのかがとても重要なバロメーターです」

「皆さんは、自分をよく知りぬいています。ネガティヴな人は、この社長の年初の言葉をきっかけとして『自己改革』してください」

「ポジティブの人の『お客様ファン作りの阻害要因のネガティヴ人間をなくす事です。』」

といったことを書いていたようです。

ただ、そんなこと言われても、じゃあ、会社は、自社の社員が奮起しようと思うような何かしたの? と聞きたくなります。

もちろん、わたしはただの部外者なので、実際のところはわかりません。

すでに何らかの制度を導入して、社員の教育に勤しんでいるかもしれません。

でも、だとしたら、わざわざ上記のようなことを言うだろうかという疑問は残ります。

要するに、言いたいことを言いたいだけ言って、あなた労働者に対して何もしてないんじゃないの? と外から見ると思ってしまうわけです。

 

労働契約と人事評価

とはいえ、世の中には自社のやる気のない社員に手を焼いている経営者の方も少なくないでしょう。

そういう人たちは、今回のいきなり!ステーキの社長のメッセージに共感しているかもしれません。

ただ、思っているだけで何もしてないとなると、いきなり!ステーキの社長と完全に同じになってしまうので、ここからは、会社が、やる気のない社員に対して何ができるのか、について考えてみましょう。

 

解雇は最終手段

さて、こういう話をすると真っ先に「解雇」と言ってくる人がいますが、解雇は最後の手段な上、日本だと能力不足で解雇、というのも判例上難しいので、ここでは除外。

だいたい、ダメな人を解雇したって、次に入ってくる人がダメじゃない保証はあるんですか? という話です。

では、解雇以外にでできることはあるのか、となると、あります。

それが契約と評価です。

 

契約で最低限のこともやらない労働者を牽制

まず、契約について。

契約は、日本だと口約束や形だけ、ということになってることも多いと思いますが、実は、というか、当然というか、とても重要です。

例えば、会社が労働者に「あれやってほしい」と思っていても、それが契約に書かれてない事項の場合、労働者がそれに同意しなければ、それをやらないといけない理由は労働者にはありません。

しかし、契約上に職務内容としてそれが定められている場合、それを労働者がやらない、となると、それは立派な契約違反となり処分の対象となります。

このように、自社の社員として最低限やらないといけないこと、を定め、それができない場合は処分の対象とするというのが契約でできることです。

 

人材評価のキモは社員の成長

一方の評価は、いわゆる人事評価制度などを利用して、会社の望む人材になってもらえるよう社員の成長を促すものとなります。

評価というと、どうしても「査定」というイメージがつきまといますが、社員を「査定」をしたところで会社にプラスはありません。

評価制度を入れる場合、賃金を公平な形で決めたいから、ということが多いかと思いますが、じゃあ、入れてみて結局どうなるかというと、評価者と被評価者との関係がギスギスしたり、査定基準が曖昧になったりと属人的になったり。それもこれも「査定」によるマイナスです。

そうではなく、評価を行い、その評価に対して、じゃあ次はどんなことに気をつければ評価が良くなるのか、というフィードバックを行い、社員の成長のサイクルを回す、こうした社員の成長を促すことにこそ評価制度の意味はあるのです。

評価制度に関しては、わたしが現在参加させてもらっている「TNC」の人事評価制度のページにてより詳しく書かれているため、よければそちらもご覧いただければと思います(少し長いですが)。

「いい会社」になるための評価制度(TNC)

 

長くなりましたが、社員に変わってもらいたかったら、経営者もやることやらないといけないんじゃいの? というのが結論です。

今日のあとがき

ちなみにわたし、いきなり!ステーキのこと嫌いじゃなく、月に1回くらいは行きます。

ただ、ステーキよりもハンバーグの方が好きなので、ワイルドステーキとハンバーグの半々のやつをいつも頼みます。

会員ランクもゴールドだったこともあったのですが、カードからアプリに移行するドタバタでシルバーに戻ってました。

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。行動経済学会(幽霊)会員 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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