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労務問題(時事)

ベネッセで用いられている「委託社員」とは何者なのか

2016/04/20

前回の記事の補足です。

ベネッセの個人情報流出の容疑者の肩書が派遣社員から委託社員に変わった件の、労務管理上のきな臭さの説明をしたのが前回記事だったわけですが、前回は「労働者供給」の面に重きをおき、「委託社員」についてやや説明不足だったので、今回はそちらの解説をしていこうかと思います。

委託社員というのは個人請負のことと思われます。個人請負とは、会社と労働契約ではなく、委託契約や請負契約を結ぶのが個人請負であり、わかりやすい言葉で言えば外注で、その本質は個人事業主です。

そう、個人事業主なのです。

個人事業主なのに委託「社員」とはこれいかに。

そもそも外注の人間が社員なわけがないですから、この「委託社員」という言葉自体が、労働者供給のことは置いておいても、そもそも相当にきな臭いわけです。

おそらく、ベネッセの委託社員の場合、会社と委託社員のあいだでは、請負契約が結ばれているのだと思われます。請負契約の場合、会社は雇用保険料や社会保険料を負担する必要がない上、会社の労動者に対する労働基準法上の義務も発生しません。会社にとってはいいことばかりです。

しかし、曲がりなりにも「社員」という言葉がついている以上、ベネッセは委託社員に対して業務遂行上の指揮命令を行っていた可能性が十分にある。

これがキー。

なぜなら、労働基準法は労働の実態を見るからです。つまり、いくら会社と個人のあいだで請負契約が結ばれていたとしても、その労働の実態が労働契約であるならば、その個人請負の事業者は労働基準法上の労働者として判断されるわけです。

個人事業主が会社から指揮命令や業務命令を受けて仕事をしていたら、それは個人事業主といえるでしょうか? 当然言えません。そして、そうした会社から指揮命令や業務命令を受けて仕事をする、つまり、「会社と労動者のあいだに使用従属関係があり、賃金が支払われている」という契約こそ、労働契約なわけです。

「労働者供給」と「偽装雇用」、まあ、どちらも大きな意味では偽装請負と言えますが、個人情報流出の件の裏で、今後この問題がどこまで表に浮かんでくるのか注目していきたいと思います。

追記:この記事では「委託社員=個人請負」を前提に書きました(この解釈のほうが一般的だからです)が、事件を詳しく追ってみたところ、今回の件で言う「委託社員」とは単に外部委託先の社員ということもありえそうですね。ただ、その場合でも広い意味での偽装請負の可能性はありそうですが。

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名古屋の社労士事務所、川嶋事務所の代表で、このブログの筆者。 新しいこと、もの、特にIT関連が大好きで、社労士としては会社・労働者のITトラブル対策・就業規則作成が得意分野。 2016年4月から9月まで中日新聞で「働く人を守る労働保険」を連載、開業社労士専門誌「SR」に寄稿するなど、メディアでの執筆活動も。