労働者派遣法の改正

改正派遣法は改正労働契約法の同じ轍を踏む

2014年6月9日

改正予定の労働者派遣法のQ&Aが厚労省のHPにアップされています。

労働者派遣制度の見直し案に関するQ&A

これまでの「同一業務3年以上の派遣の禁止」を改め、「同一労働者」の期間を3年に制限しようという今回の労働者派遣法改正案は、改正案が出た段階から、その内容に批判が出ていました。(改正の詳しい内容などはこちら)

その時の懸念というのは、派遣労動者の就業期間を3年に制限してしまうと、3年に達した時点で該当の派遣労動者は切られてしまうのではないか、というものです。そして、その懸念は今回のQ&A;のQ7を見る限り、まず間違いなく現実と化すのではないでしょうか。

Q7 : 今回の見直し案では、“個人単位の期間制限”の上限に達した場合、雇用が終了してしまうのではないですか。

A7 : 今回の見直し案では、同一の組織単位の業務について継続して従事した期間が3年に達する派遣労働者については、派遣元に対し、雇用安定措置として、以下のいずれかの措置をとるように義務づけることが提案されています。
  ○ 派遣労働者としての新たな就業機会の提供
  ○ 派遣就業以外の働き方で派遣元事業主において無期雇用
  ○ その他の雇用の安定を図るために必要な措置(派遣先への直接雇用の依頼(※)を含む)

それにしても、このQ&A;の回答を読むだけで、今回の労働者派遣法の改正がいかに酷いかがわかるというものです。

なぜなら、この回答が言おうとしているのは結局、就業期間が3年に達したら、後は派遣元が中心となって、派遣元か派遣先がその労動者を何とかしてね、ということだからです。つまり、厚労省は派遣期間を勝手に制限しておいて、後は派遣元と先に対策を丸投げしているわけです。

改正派遣法と改正労働契約法

Q7の内容に話を戻せば、3年の上限に達した場合、A7のような義務が生まれてしまうのなら、3年に達しないように上手く調整しようと考える企業は山ほど出てくるでしょう(3年未満の場合は努力義務)。

この最たる証明は、昨年4月に改正され、現在も労務の現場で混乱を生んでいる労働者派遣法の5年ルールであり、すでに通った大失敗した道。

まったく、お前たちは、つい最近の失敗例にも学べないのか? って話でしょ?

というか。どうも、厚労省の官僚は、法律を作れば、それを国民が守るのは当然だと思っているようです。ただ、当たり前ですが、法律に人間の意思を決定する力はありません。しかも、厚労省の官僚は、それに加えて、自分たちの意図通りに法律を守ると思っているから手に負えない。法律で殺人が禁止されているからといって、殺人がなくなるわけではないんですがね。 

そんなこともわからない人間が労務の現場を管理しようとしているのだから、次から次へとこうしたバカげた法改正が行われるのは、ある意味当然で、もはや驚きすらありません。ただ、それに振り回されるこちらの身にもなってほしい、というのは本音のところです。

派遣法、というか、派遣労働に関してもう少し書きたいことがありますが、それはまた次回に。

では、今日はこんなところで。

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。行動経済学会(幽霊)会員 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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