育児休業・介護休業

【ややこ】介護保険と介護休業で異なる「要介護状態」の違い【しい】

2016年7月25日

介護保険と介護休業、同じ「介護」を取り扱っています。

ただ、介護保険は被保険者自身が介護が必要になった場合に使う保険である一方、介護休業は家族に介護が必要な人が現れたときに使える休業となっています。

自分のためか家族のためかという違いがあるわけです。とはいえ、どちらも「介護」にかかわる制度なのは同じ。

にもかかわらず、結構違うというか、ややこしい部分があります。

その代表的な例が「要介護状態」という言葉です。

 

介護保険と介護休業の違い(超簡易)

介護保険の給付を受けられるのは「要介護状態にある被保険者」です。

一方、介護休業を取れるのは「要介護状態にある対象家族を介護する労働者」となっています。

つまり、介護保険は自分が介護状態になったときに使うもので、介護休業は家族が介護状態になったときに使うものとなっています。

そして、どちらでも「要介護状態」という言葉は出てきますが、介護保険と介護休業とではこの定義が異なっています。

 

介護保険で言う「要介護状態」

介護保険法では、「要介護状態」のことを以下のように定義しています。

第7条 この法律において「要介護状態」とは、身体上又は精神上の障害があるために、入浴、排せつ、食事等の日常生活における基本的な動作の全部又は一部について、厚生労働省令で定める期間にわたり継続して、常時介護を要すると見込まれる状態であって、その介護の必要の程度に応じて厚生労働省令で定める区分(以下「要介護状態区分」という。)のいずれかに該当するもの(要支援状態に該当するものを除く。)をいう。

引用に強調を入れましたが、ここでいう、「厚生労働省令で定める期間」とは「6ヶ月間」です。

つまり、「介護が必要な状態が6カ月以上続く場合」、というのが介護保険で言う「要介護状態」なのです。

ちなみに、「介護が必要な状態が6カ月以上続く場合」であっても、介護保険の給付は介護保険の被保険者しか受けられません。

介護保険の被保険者になれるのは40歳からなので、40歳未満の場合はどう転んでも介護保険の給付は受けられないわけです(40歳から64歳のあいだは省令で定める「特定疾病」に該当している必要あり)。

 

介護休業でいう「要介護状態」

一方、育児介護休業法でいう「要介護状態」とは以下のとおり。

第2条

3 要介護状態  負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により、厚生労働省令で定める期間にわたり常時介護を必要とする状態をいう。

ここでも出てきました「厚生労働省令で定める期間」という言葉。

この「厚生労働省令で定める期間」が介護休業では「2週間」と、介護保険の6カ月に比べるとかなり短くなっています。

異なっている理由は、介護保険の場合、要介護状態と認定されると、そこから長期にわたって給付がある一方、介護休業の場合は最大でも休業日数が93日という、期間の違いを反映しているのだと思われます。

期間以外の判断基準や、判断する役所なんかも違ってたりするのですが、この期間の違いが介護保険と介護休業で言う「要介護状態」の最も大きく異なる点です。

 

まとめ

介護保険と介護休業で同じ「要介護状態」という言葉が出てくるので、介護保険の方で「要介護状態」と認定を受けていないと、介護休業が取れないと勘違いしている人もいるかもしれません。

しかし、ここまで述べたように、介護保険と介護休業では「要介護状態」という言葉の定義自体が異なります。

また、介護保険の要介護状態の認定は行政が厳密に行いますが、介護休業についてはあまり厳密にやり過ぎるのは良くない、との厚生労働省の見解もでています。

会社は、労働者から介護休業の申出を受けた場合、労働者に対して申出に係る対象家族が要介護状態にあること等を証明する書類の提出を求めることができます。
証明書類は「医師の診断書」等に限定されていません。要介護状態にある事実を証明できるもので労働者が提出できるものとしてください。就業規則においてすべての介護休業の申出に医師の診断書の添付を義務づけることなどは望ましくなく、書類が提出されないことをもって休業させないということはできません。

よくあるお問い合わせ(事業主の方へ)

なので、介護保険で要介護認定が受けられなかった場合や、介護保険で要介護認定を受ける前からでも、介護休業は取れる可能性があるということは覚えておいたほうが良いでしょう。

また、介護保険の給付を受けられるのは40歳以上からですが、介護休業の対象家族に年齢制限はないので、40歳未満の自分の子供が介護が必要な場合でも介護休業は取れる、というのも大きな違いですね。

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。行動経済学会(幽霊)会員 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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