就業規則

就業規則にランニングコストの概念を

2015年10月7日

あなたが会社の経営者や人事担当者で、就業規則を社労士に作成してもらおうと考えるとき、良い就業規則を作成してもらいたいと思う一方で、一体いくらくらいかかるのかはやはり気になるところでしょう。

ちなみにうちで作成すると、一から作る場合には10万円~(すでにある場合でほぼ作りなおす場合も含む)、今ある就業規則に変更を加える場合は5万円~ですが、それはあくまで新規のお客様の話、顧問先や作成をきっかけに顧問になっていただけたりすると、ここからさらに割引があったりします(宣伝)。

ただ、こうした社労士に作成してもらうコストや、就業規則を労働者に周知させるためのコストというのはあくまでもイニシャルコスト、つまり初期費用でしかありません。新しく作成した就業規則に基づいて労務管理を行うには当然ランニングコスト、維持費用がかかります。

就業規則にかかるランニングコスト

では、就業規則にかかるランニングコストとは何でしょうか。わかりやすいところだと法改正ごとの就業規則の改定ですが、より重要で忘れがちな上、時に高額になりがちなのは作成した就業規則を守り続けることのコストです。

就業規則というのは一般に会社のルールブックであると同時に、会社と労働者との間の契約としての性質も持っており、つまり、就業規則に違反することは、会社のルールを破ることでもあり、契約不履行でもあるといえます。

しかし、就業規則が労働裁判等で有効と認められるには、就業規則が労働者にきちんと周知されていることが必要な上、慣習や実態と就業規則内容がかけ離れている場合、慣習や実態の方が重要視されます。

就業規則の作成目的の中には当然、会社内のルール整備の他に労使トラブルや労働裁判でのリスク回避が含まれているはずですが、キチンと守られていない就業規則にリスク回避能力はないわけです。だから、就業規則を作成したらまずは会社側が積極的に就業規則を守らないといけないわけです。

高すぎるランニングコストは就業規則を紙切れにする

ただ、これは自戒を込めて言いますが、複雑だったり文量が多すぎたり、世の中にはとてもじゃないけど守り切れない就業規則が多すぎる気がします。それもそのはず、就業規則を主に作成する社労士の研修やセミナーでは、リスク回避のためにあれを入れろこれを入れろみたいな話が、常になされているからで、そりゃあ、そんな研修を受ければ受けるほど就業規則も分厚くなるというもの。就業規則が分厚くなるということは、それだけ守らなければならない内容も増えるわけでランニングコストは高まります。

ランニングコストが高過ぎる、つまり、守らなければならないルールが多すぎると、条件の厳しすぎるダイエットのように、結局面倒くさくなって守らなくなってしまいます。そうなれば、その就業規則にかかった初期費用はもちろんパー。

にもかかわらず、設備投資時にランニングコストを考えられる経営者も、就業規則ではなかなかそういう考えが思い浮かびません。作ってる社労士だって多くはそんなこと考えてない。

就業規則の内容を整えることと会社の規模にあったランニングコストの就業規則を作成する(つまり、守り続けられる就業規則を作成する)ことは自動車の両輪、どちらが欠けても就業規則は成立しませんので、これから就業規則を作ろうと考えられている方はぜひ、そのあたりにも注意して社労士に依頼するなり、ご自身で作成してみたりしてください。

・・・ただ、実は会社にとっての就業規則のランニングコスト、というのは簡単には計算出来ないのがややこしいところ。次回はその点を掘り下げようと思います。

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。行動経済学会(幽霊)会員 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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