年金・健康保険制度

「厚生年金と共済年金の一元化」の本質

2013年9月19日

ご存じの方も多いかと思われますが、2015年の10月より労動者のための年金である厚生年金と、主に公務員のための年金である共済年金が一元化されます。

今回の一元化というのは、厚生年金と共済年金を廃止して新たな法律を作る、というわけではありません。共済年金制度を厚生年金制度に吸収するのです。

なので、今まで共済年金制度の組合員だった公務員および私立学校の教師らは、厚生年金の被保険者となるわけです。

さて、社保庁が消えてなくなった今、現在厚生年金を扱っているのは日本年金機構です。一方、共済年金の運用は国家公務員の場合は国家公務員共済組合連合会、地方公務員の場合は地方公務員共済組合連合会といった感じで、各共済組合が独自に行なっています。

では、今回の一元化で共済年金も日本年金機構が扱うことになるかといえばさにあらず。

共済組合の組合員の年金は一元化以降も共済組合が運用します。

どういうことかというと、共済組合の組合員は一元化以降、被保険者の区分は、

・現在の厚生年金の被保険者→第1号厚生年金被保険者

・国家公務員→第2号厚生年金被保険者

・地方公務員→第3号厚生年金被保険者

・私立の教師→第4号厚生年金被保険者

と変わります。第1号は今までと同じ厚生年金被保険者と思って構いません。

問題の2号から4号に関しては今までと同様に共済組合が年金の運用を行うと法律に明記されており、実質的には今の「共済年金」の被保険者とほぼ同じ取り扱いがされるのです。要は厚生年金に吸収はされたけど共済年金はほとんど同じ状態で生き続けるわけです。「DRAGON BALL」でいうところの魔人ブウに吸収されたベジット(悟空とベジータが合体したキャラ)みたいなもんですね。

まあ、おかげであまり混乱はないでしょうが、なんのためどういう意図のある一元化なのかよくわかりません。

私には今回の「厚生年金と共済年金の一元化」というのは、厚労省や政治家が年金問題の抜本的解決に取り組んでるよ、ということを示すだけのスタンドプレイにしか思えません。

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。行動経済学会(幽霊)会員 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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