※ この記事は2025年12月の最新の情報を元に加筆修正したものです。
「最低賃金とは」の記事でも解説しているとおり、最低賃金には各都道府県別の地域別最低賃金と、業種別の特定最低賃金があります。
ただ、実務を行っているとこれらの複数の最低賃金のうち、どれを適用していいかわからなくなることもあるでしょう。
そこで、この記事では、複数の最低賃金がある場合の考え方を徹底解説します。
基本的には一番高いもので考えればOK
まず、身も蓋もない話からしてしまうと、基本的に、迷ったら高い方を選べばOKです。
例えば、地域別最低賃金と特定最低賃金、どちらも適用対象という場合、必ず高い方を適用することが法律で決まっています。
これは、言い換えれば、どちらを適用すべきかわからないときに、高い方を適用すれば間違うことはない、ということです。
ただ、それだと会社の負担が大きい、できるだけ低い方に合わせたい、という場合、もう少しきちんと考える必要があります。
特定最低賃金と地域別最低賃金の関係
同じ事業場内で別の最低賃金が適用される可能性はあるか
すでに述べたとおり、地域別最低賃金と特定最低賃金のどちらが適用されるかについては、より額の高い方が適用されるのが原則です。
一方、特定最低賃金が適用される事業場であっても、すべての労働者が特定最低賃金に関する業務を行っているとは限りません。例えば、製造業の場合、製造に関わる人もいれば、事務仕事をする人もいるからです。
特定最低賃金が適用されるのは、こういった特殊な業務を行っているから、と考えると、製造に関わる人には特定、事務など人には地域別、と考えることもできそうです。実際のところどうなのでしょうか。
最低賃金の原則は事業場単位での適用
原則として、最低賃金は事業場単位で同じものが適用されます。
そのため、特定最低賃金が適用される事業場では、直接、特定最低賃金に関わる業務に携わっていなくても、特定最低賃金が適用される事業場で使用される労働者はすべて特定最低賃金の適用を受けるわけです。
言い換えると、最低賃金は同じ事業場内で、労働者によって別々のものが最低賃金が適用されるということはないともいえます。
ちなみに、ここでいう事業場とは場所別の単位を指します。よって、工場と事務所で場所が異なる場合や、支社や本社のような場合、事業場が異なることになるため、それぞれにその地域の最低賃金が適用されます。
複数の地域別最低賃金の適用が考えられる場合
出張で働く場所を転々とする、県をまたいで労働者派遣で派遣される、という場合、どの地域の最低賃金を適用したらいいか混乱する人も多いことでしょう。
ですが、こちらについても、考え方は実はシンプルです。
出張などで支店を転々とする場合
出張などで一時的にその事業所をはなれ、他の都道府県に行く場合、しかも、それが月に複数回に及ぶという場合、最低賃金はどう考えたらいいのでしょうか。
原則として、地域別最低賃金は、その労働者の拠点となる事業所の所在地で見ます。
つまり、その労働者の「拠点」はどこなのかで、最低賃金を適用する地域を選択すればいいわけです。
ただし、単身赴任などのように出張が長期に渡る場合など、その労働者の拠点が移ったと判断できる場合は出張先の最低賃金が適用されます。
県をまたいで派遣される派遣労働者
では、派遣元ととなる人材派遣会社と派遣先で都道府県が異なる場合はどうでしょうか。
派遣労働の場合、派遣元と雇用契約を結び、派遣先で実際に働くという形式を取るため、上記のようなことが起こりえるわけですが、このような場合、派遣先の事業場の都道府県の最低賃金が適用されます。
そのため、最低賃金の低い都道府県から、派遣労働者を派遣する、ということはできなくなっています。
テレワーク時の最低賃金
自宅と事業場で都道府県が違う場合のテレワーク時の最低賃金はどうでしょうか。
この場合、自宅ではなく、事業場のある都道府県の最低賃金が適用されます。
まとめ
まとめると、複数の最低賃金が適用される可能性がある場合、原則は以下のとおりとなります。
- 事業場ごとに最低賃金は1つ
- 働く場所が基準だが、自宅は対象外
なお、冒頭で述べたとおり「迷ったら高い方」で考えるのも非常に有効です。

