公正採用選考人権啓発推進員の選任は義務? 選任要件が都道府県で違うのはなぜ?

会社を経営していると様々な郵便物が届くものです。

仕事関連のものは最近はメールで、というところも多いので多少減っていても、DMなんかはやっぱり紙。

また、税務署や年金事務所、労働局といった役所からも様々な案内が届きます。

そうしたなかで、みなさんの会社では、ハローワークの方からこういう案内をもらったことはないでしょうか。

「公正採用選考人権啓発推進員を選任してください」

目次

公正採用選考人権啓発推進員とは

「公正採用選考人権啓発推進員」って、そもそも何? という話ですが、公正採用選考人権啓発推進員の役割は、以下の通りです。

「公正採用選考人権啓発推進員」は、公正な採用選考システムの確立や人権啓発研修の実施など、社内の人権啓発に関する中心的な役割を担っていただく方です。

公正採用選考人権啓発推進員」を選任されていますか?(ハローワーク飯田橋)

なんというか「言ってることはわかるけれど、何をやったらいいのかわからない」の典型みたいな役職ですね。

で、こうした案内が来たときに、会社として気になるのは「それは義務なのか?」ということではないでしょうか。

公正採用選考人権啓発推進員を選任は義務ではない

根拠法がなく努力義務ですらない

結論から言ってしまうと、公正採用選考人権啓発推進員を選任は義務ではありません。それどころか努力義務すらありません。

なぜなら、この公正採用選考人権啓発推進員という制度には根拠法がないからです。

公正採用選考人権啓発推進員のWikipediaには日本国憲法22条と職業安定法がその根拠であると書かれていますが、実際には、職業安定法全文とその施行規則を端から端まで読んでも「公正採用選考人権啓発推進員」という言葉はおろか、それを匂わすような人員の選任に関する条文も出てきません。

日本国憲法22条が定める職業選択の自由や、職業安定法の目的を達成するための制度、と考えれば、まあギリギリ根拠になってるのかなあ、というレベルです。

繰り返しになりますが、直接的に根拠となる条文はありません。

選任対象となる事業所の条件は各都道府県でバラバラ

根拠となる法律や省令がないことの証左として、公正採用選考人権啓発推進員の選任基準は、以下の通り、都道府県によってバラバラ。

愛知県

  • 常時使用する従業員の数が30人以上の事業所
  • 職業紹介事業、派遣事業を行う事業所

岐阜県

  • 常時使用する従業員の数が30人以上である事業所
  • 常時使用する従業員の数が30人未満であって、就職差別事件又はこれに類する事象を惹起した事業所
  • 労働者派遣元事業所、民営職業紹介事業所
  • 岐阜労働局所管の制度・事務事業等に係る公益法人等の関係団体
  • 地方公共団体を代行して公的施設の管理等の業務を担う民間事業者等

三重県

  • 常時使用する従業員数が30人以上の事業所

東京都

  • 常時使用する従業員の数が50人以上である事業所
  • 上記のほか、公共職業安定所長が推進員を選任することが適当であると認める事業所
  • 職業紹介事業又は労働者派遣事業を行う事業所

大阪府

  • 常時使用する従業員数が25人以上の事業所
  • 上記の他、公共職業安定所長が適当と認める事業所

神奈川県

  • すべての職業紹介事業を行う事業所
  • すべての労働者派遣事業を行う事業所

なぜ、選任基準が都道府県でバラバラであることが根拠法がないことに繋がるかというと、こういった選任基準は大抵、法律、省令、もしくは厚生労働省からの通達できまっているから。

他の推進者と比較しても異質な公正採用選考人権啓発推進員

例えば、公正採用選考人権啓発推進員のように、会社が選任しなければならないとされる人は他に障害者雇用推進者や高年齢者雇用推進者などがいます。

しかし、こうした人たちの選任については根拠法がきちんとあるため、当然、選出しないといけない(あるいは、努めないといけない)企業規模等の基準は全国共通です。

もっと言うと、「○○推進員」という人の選任を義務づけるような労働法関連の法律はまず見たことがありません。

というか、法律上でよく使われる「○○推進者」という言葉を使えないから「員」にしてるのかもしれません。

公正採用選考人権啓発推進員は選任すべき?

さて、ぶっちゃけた話、公正採用選考人権啓発推進員を選任すべきなのでしょうか?

まず、職業紹介事業や派遣事業の許可には、この推進員の選任が必須となっているので、そうした事業を行う会社では選任が必須となります。

では、それ以外の事業所はどうかというと、まあ、好きなようにしてくださいとしか言えません。

ただ、このように公正な採用選考が強く言われる背景には同和問題がその一つにあります。そのため、そうしたことが問題になりやすい地域ではより必要性は高いと言えるでしょう。

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この記事を書いた人

名古屋の社労士事務所、社会保険労務士川嶋事務所の代表。
「会社の成長にとって、社員の幸せが正義」をモットーに、就業規則で会社の土台を作り、人事制度で会社を元気にしていく、社労士兼コンサルタント。
就業規則作成のスペシャリストとして、名古屋市内・近郊の中小企業をサポートする一方で、共著・改訂版含めて8冊の著書、新聞や専門誌などでの寄稿実績100件以上あり。

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