賞与・昇給・契約更新で揉める本当の理由|会社がやるべき対策とは

ちょうどこれからの時期は夏季賞与のシーズンですね。残念ながら、賞与をもらえる身分ではないので、社労士として賞与届の手続きに追われながら、賞与をもらえる方々を少し羨ましく思っていたりします。

まあ、それはさておき、この時期になると増えるのが、「去年より賞与を減らしたら、社員から詰め寄られた」「賞与がないなら、辞めると言われた」

といった、賞与に関連する労使トラブルのご相談です。

また、時期は違いますが「賞与」を「昇給」に入れ替えた内容も、定番の相談だったりします。

こうした、賞与や昇給に関する不満に加え、契約更新の際のもめ事などについても、実は原因は同じところにある、というのが今回の記事で解説する内容です。

目次

賞与も昇給も契約更新も、本来「確定していないもの」

まず前提として、賞与も昇給も、法律上当然に会社に支払い・実施義務があるものではありません。会社が任意に設けている制度であり、業績や個人の評価によって変動するのが本来の姿です。

契約更新も同様で、有期契約については、契約期間が満了すれば当然に終了するのが原則で、「次も更新されること」が最初から保証されているわけではありません。

つまり、この3つはいずれも、本来「もらえるかどうか」「続くかどうか」が確定していないものなのです。

期待を裏切られたとき、人は大きなショックを受ける

しかし、毎年同じ時期に一定の賞与が支払われたり、当たり前のように昇給が続いたり、契約が何度も更新されたりすると、いくら本来は不確定なものであっても、労働者の側は「今回も同じだろう」と期待するようになります。

そして、「期待」がある状態とない状態とでは、それが叶わなかったときの精神的なダメージがまったく違います。手応えがあった試験に落ちた場合と、記念受験で落ちた場合とでショックの大きさが違うのと同じです。

期待を裏切られたと思うとき、労使トラブルは起こる

これはあくまで実務上の経験則ですが、労働者が「期待を裏切られた」と感じたとき、往々にして労使トラブルは起こります。

  • もらえると思っていた賞与が減額・不支給になった
  • 毎年上がると思っていた給与が上がらなかった
  • 更新されると思っていた契約が更新されなかった

上記のうち、特に契約更新については、法律上も無視できない話があります。

というのも、有期契約であっても、更新を重ねることで労働者側に「今後も更新されるだろう」という期待に合理性が認められると、正社員の解雇と同じような規制(雇止め法理)がかかってくることがあるのです。「1年契約だから、期間が来れば自動的に終わり」という感覚のまま更新を重ねていると、いざ止めたいときに簡単には止められなくなっている、というのはよくある落とし穴です。

会社からすれば「勝手な期待」と思うような話でも、それが労使トラブルの引き金になりうるのは事実なのです。

期待はさせるな、約束をしろ

では、会社は労働者の期待にすべて応えなければならないのでしょうか。そういうわけではありません。

会社と労働者のあいだには、労働契約や就業規則という、労使間での「約束事」が本来あるはずです。約束した範囲を超えた期待や、約束に反する期待に、会社が応える義務はありません。

労働者が「勝手な期待」を抱いてしまう会社は、往々にしてこの約束事が曖昧です。約束してないから揉める。

逆に言えば、期待させる前に、きちんと約束をしておくことが、労使トラブルを避ける一番の近道ということです。

 

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会社がやるべき対策

賞与・昇給・契約更新、それぞれの場面での「約束の仕方」は次のとおりです。

  • 賞与:支給が会社の裁量であること、判断基準(業績・個人評価など)を就業規則・賃金規程に明記する
  • 昇給:「原則として毎年昇給を行う」といった、実態と合わない古い条文が残っていないか確認し、判断基準を明確にする
  • 契約更新:更新の判断基準・更新上限の有無を、契約締結時に労働条件通知書・契約書で明示する

そのうえで、実際に支給額・昇給・更新可否を決めるタイミングでは、判断根拠を記録に残し、労働者に一言説明を添えることも忘れないようにしましょう。

「なぜそうなったか」が伝わるだけで、納得感は大きく変わってくるからです。

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まとめ:期待させる前に、約束(契約)をしておく

賞与・昇給・契約更新は、いずれも会社の裁量に委ねられている部分が大きい制度です。

だからこそ、「なんとなく」の運用のまま続けてしまうと、労働者の側に勝手な期待が積み重なり、ある日その期待を裏切ったときに、大きなトラブルへと発展してしまうわけです。

労働者に期待させるのではなく、まずは会社側からきちんと約束をする。そのために、自社の就業規則・賃金規程・雇用契約書が、実態に合った形で整備されているか、一度見直してみてはいかがでしょうか。

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この記事を書いた人

名古屋の社労士事務所、社会保険労務士川嶋事務所の代表。
「会社の成長にとって、社員の幸せが正義」をモットーに、就業規則で会社の土台を作り、人事制度で会社を元気にしていく、社労士兼コンサルタント。
就業規則作成のスペシャリストとして、名古屋市内・近郊の中小企業をサポートする一方で、共著・改訂版含めて8冊の著書、新聞や専門誌などでの寄稿実績100件以上あり。

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