1年単位の変形労働時間制は、仕組みを理解するだけでは導入できません。
就業規則の整備、労使協定の締結、労働基準監督署への届出など、法令に沿った手続きを踏む必要があります。
特に、対象期間の設定や労働日数の上限、特定期間の扱いなどは細かなルールが多く、手続きを誤ると制度自体が無効と判断されるリスクもあります。
この記事では、1年単位の変形労働時間制の導入の流れを、制度を検討中の会社が、何から手を付ければよいのかが整理できるよう、実務の順番に沿ってわかりやすく解説しています。
- 1年単位の変形労働時間制導入の全体の流れ
- 就業規則で定めるべきポイント
- 労使協定で必ず決めなければならない事項
- 労働日数・労働時間の法定上限
- 協定届の作成と労働基準監督署への提出方法
1年単位の変形労働時間制導入の流れ
1年単位の変形労働時間制導入の流れは以下の通りです。
① 就業規則の整備
↓
② 労使協定の締結
↓
③ 協定届を作成し労使協定と一緒に労働基準監督署に提出
1年単位の変形労働時間制の導入が必要かどうか検討
1年単位の変形労働時間制にはメリット・デメリットがあります。そのため、合う会社もあればそうでない会社もあります。
こうした判断を行うにあたっては、以下の記事で1年単位の変形労働時間制のメリット・デメリットを解説していますので、参考にしていただければと思います。

就業規則に定める
始業・終業の時刻、休憩時間、休日は就業規則に必ず記載する必要のある事項と労働基準法で定められています。
1年単位変形労働時間制を導入する場合、これらの項目は全て影響を受けることになります。
そのため、1年単位の変形労働時間制を導入する際は、就業規則の整備が必要となります。
1年単位の変形労働時間制では様々なパターンの規定例が考えられますが、以下は、各労働日の始業・終業時刻までは変更しない形のものを想定しています。
第○条(1年単位の変形労働時間制)
- 第□条(通常の労働時間の始業・終業時刻の条文を想定)にかかわらず、1年単位の変形労働時間制を適用する従業員の所定労働時間は、労使協定で定める起算日から1年間を平均して週40時間以内とする。
- 1年単位の変形労働時間制を適用する従業員の始業・就業の時刻および休憩時間については第□条(通常の労働時間の始業・終業時刻の条文を想定)の通りとする。
第△条(1年単位の変形労働時間制の休日)
- 第○条の1年単位の変形労働時間制を適用する従業員の所定労働日および休日については別途定める会社の年間カレンダーによる。
- 前項の年間カレンダーで定める休日の日数は、対象期間の初日を起算日とする1週間に1日以上、年間で85日以上を確保するものとする。
- 業務の都合により会社が必要と認める場合は、あらかじめ1項の休日を他の日と振り替えることがある。会社は、前項による休日の振替を行う場合、特定期間中を除き、労働日が連続して6日を超えないよう振替を行う。また、特定期間においては、1週間に1日の休日が確保できるよう振替を行う。
労使協定の締結
1年単位の変形労働時間制を導入するには、労働者代表と労使協定を結ぶ必要があります。
労使協定で決める必要のあることは以下のとおり。
労働者の範囲
1年単位の変形労働時間制の対象となる労働者の範囲を決めます。
事務など特定の業種の労働者を範囲から外すこともできます。
対象期間
変形させる期間を決めます。
変形させられる期間は1ヶ月を超え1年以内の期間の間ですが、ほとんどの場合、1年の期間で変形させます。
変形期間が1年の場合、1年の労働日数は280日が限度となります。
また、対象期間中の1日の労働時間の限度は10時間(※)、1週の限度時間は52時間となります。
加えて、週の労働時間が48時間を超える週は連続で3以下とする必要があります。
上記の限度はあくまで変形した結果の所定労働時間に関する限度であり、時間外労働として手当等を支払って行わせる分には10時間や52時間を超えることができます。
※ 隔日勤務のタクシー運転手の場合16時間
特定期間
対象期間中の特に忙しい期間を定めることができます。
特定期間中は連続労働日数が優遇され、原則6日連続のところを、「1週間に1日の休日が確保できる日数」とされます。つまり、第1週の初めに休日をとし、その次の週の最後の日を休日とすれば、最大で12日連続勤務とすることができます。
特定期間がない場合、必要のない場合は定める必要はありません。
労働日と労働日ごとの労動時間
対象期間中の労働日と労働日ごとの労働時間を定めます。
実務上は、労働日ごとの労働時間を定めることが大変なこともあり、繁忙期といえども1日の労動時間を増やすということはあまりなく、労働日を増やすことが多いです。
(そもそも、1日の労働時間を変形させるのがメインであれば、1カ月単位のほうが向いています)
この場合、会社カレンダーを作成し、年間を通じて1週間の平均労働時間が40時間以下となるよう労働日と休日を調整します。
ちなみに、年間を通じて1週間の平均週労働時間が40時間以下となる場合の、年間総労働時間は2085時間(※)(うるう年の場合2091時間)となります。
※ 40時間×365日÷7日
参照:東京労働局
協定届を作成し労働基準監督署に提出
1年単位の変形労働時間制を導入する上で、会社が労働基準監督署に提出する必要があるものは以下のとおり。
- 労使協定
- 協定届
- 会社カレンダー
いずれも、提出用と会社控えで2部必要となります。
協定届とは、監督署提出のための書類で、労使協定やカレンダーの内容をまとめたものとなります。
1年単位の変形労働時間に関する協定届(リンク先PDF 出典:東京労働局)
この他に、就業規則の変更を伴う場合は就業規則等、時間外の労働をさせる予定があるのであれば36協定を提出する必要があります。
実務上は、36協定の提出時期と1年単位の変形労働時間制の労使協定の提出時期を合わせるのが一般的です。
1年単位の変形労働時間制の運用
導入の手続きが済んだら、いよいよ運用となるわけですが、運用に当たっては、労働時間や割増賃金の計算に注意する必要があります。詳しくは以下の記事をどうぞ。

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