会社を経営していると「この労働者をクビにしたい」と思う瞬間、きっとあるのではないでしょうか。
しかし、よく知られているように、日本では解雇は簡単ではありません。
これについては、小手先の就業規則の規定の工夫でなんとかできるものではないですが、とはいえ、就業規則でできない部分がないわけでもありません。この記事ではそんな解雇(普通解雇)の規定例とそのポイントをみていきます。
また、併せて、解雇と一緒に定められることの多い「解雇予告」の条文についても見ていきます。
「解雇(普通解雇)」および「解雇予告」条文の必要性
解雇は就業規則の絶対的必要記載事項である「退職に関する事項」に当たるため、必ず規定する必要があります。
また、解雇の規定と併せて定めることの多い「解雇予告」に関しても「退職に関する事項」ではあるのですが、ここでいう「退職に関する事項」とは「任意退職、解雇、契約期間の満了による退職等労働者がその身分を失うすべての場合に関する事項」をいい、解雇予告がここに含まれるかは曖昧なところがあり、実際、定めのない規定例もみられます。
ただ、解雇予告自体は規則に定めあろうとなかろうと、法律の内容のまま行うことになるものです。そのため、基本的には予告手続きの漏れがないよう規定を定めておいた方がいいと思われます。
「解雇(普通解雇)」条文作成のポイント
規定自体はあまり工夫しようがない
解雇に関する就業規則の条文については、会社ごとに大きく変える必要性の低いものとなります。
整理解雇が行われるのはどんな業種でも事業の縮小や経営上の必要性のためなので変更の余地はありません。
また、労働契約の不履行を理由とする場合も、その不履行の内容が会社ごとに変わるということもありません。
つまり、会社によって解雇事由が変わる、ということがほぼないため、条文についても会社ごとに大きく変える必要がないわけです。
これは「解雇予告」についても同様です。
包括規定を忘れない
以上のことから、解雇については規定の内容よりも、実際の運用の方が重要です。
ただし、規定が不十分だったり、余計なことが書かれいたりすると運用の方にも支障が出ます。
代表的なところでいうと、解雇事由の最後に「その他前各号に準ずる理由があるとき」といった包括規定がない場合です。
こうした包括規定がないと、解雇事由に記載のない内容での普通解雇ができなくなってしまいます。
また、解雇事由に関しても「著しく」「再三にわたって」などの「余計な」形容詞があると、一発アウトな事由が起こったときの解雇の妨げとなることがあるので、書かない方が無難です。
就業規則「解雇(普通解雇)」の規定例
第○条(解雇)
次の各号のいずれかに該当する場合、従業員を解雇する。
① 事業の縮小その他やむを得ない業務上の都合があるとき
② 天災事変その他やむを得ない事情があるとき
③ 勤務態度が不良で就業に適しないと認められるとき
④ 能力が不足していて就業に適しないと認められるとき
⑤ 協調性を欠くなど、他の従業員に悪影響を及ぼすとき
⑥ 作業に誠意がないなど、他の従業員に悪影響を及ぼすとき
⑦ 職場の秩序を乱すなど、他の従業員に悪影響を及ぼすとき
⑧ 身体または精神の障害により業務に耐えられないと認められるとき
⑨ その他、会社の従業員として適格性がないと認められるとき
⑩ その他前各号に準ずる理由があるとき
第○条(解雇予告)
1 前条の定めにより、従業員を解雇するときは、解雇の日の30日前までに本人に予告し、予告しないときは平均賃金の30日分に相当する解雇予告手当を支給する。ただし、次に掲げる者を除く。
① 試用期間中であって、採用後14日以内の者
② 日々雇用される者(1か月を超えて雇用される者は除く)
③ 2か月以内の期間を定めて雇用する者(ただし、その期間を超えて引き続き使用されるに至った者を除く)
④ 懲戒解雇され行政官庁の認定を受けた者
2 天災事変その他やむを得ない事由により事業の継続が不可能となった場合における解雇で、行政官庁の認定を受けたときは、前項の規定は適用しない。
3 1項の予告日数は、予告手当を支払った日数だけ短縮することができる。
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