就業規則の「育児時間」条文の作成のポイントと規定例

労働基準法に「育児時間」という制度があることをご存知でしょうか?

もしかしたら、知らない人の方が多いかもしれません。

実際、様々な理由があって、実務で活用されることも少ない「育児時間」という制度ですが、就業規則作成においては重要な制度であるため、知らなかったという方はこの記事で内容をご確認いただければと思います。

目次

「育児時間」とは

育児時間とは、生後満1年に達しない生児を育てる女性が、法定の休憩時間の他に、「1日2回、それぞれ少なくとも30分」の育児時間を会社に請求することができると、法律上認められているものです。

女性労働者からの請求を要件としているため、女性労働者が請求しない場合、会社がこれを与える必要はありません。

「育児時間」条文の必要性

育児時間は、労働基準法に定めのある制度となります。

また、通常の休憩時間とは別に与えられるものであるため「休憩」の一種、あるいは時間単位の「休暇」と考えることができます。

休憩や休暇に関する規定は就業規則の絶対的必要記載事項となるため、就業規則に育児時間の記載は必須となります。

法令から見た「育児時間」のポイント

実務上はほぼ使われない

就業規則への定めが必須となる育児時間という制度ですが、実務上、この制度が使われることはほぼありません。

というのも、女性が育児時間を取得できる「子どもが生後満1年に達しない時期」というのは、育児休業を取得できる期間と重複しているからです。

そのため、育児時間は、育児休業を取得しない人や、育児休業を早めに切り上げた人、もしくは条件を満たせず取得できない人など、かなり限られた人しか活用できない制度となっており、結果、使用されることがほとんどありません。

育児時間の取得は勤務時間の開始から、または終わり際でもOK

育児時間は通常の休憩とは異なり、位置の指定はありません。

どういうことかというと、通常の休憩は労働時間と労働時間のあいだで取得する必要があるとされているのに対し、育児時間にはそうした縛りはないということです。

そのため、育児時間については、勤務時間の開始からや終わ際に取得することも可能です。

所定労働時間が1日4時間以内の場合、1日1回でOK

育児時間の原則である「1日2回、それぞれ少なくとも30分」というのは、1日の所定労働時間が8時間の労働者を想定したものです。

そのため、所定労働時間がこの半分となる1日4時間以内の労働者については、育児時間を「1日1回」としても問題ありません。(昭三六・一・九 基収八九九六号)

「育児時間」条文作成のポイント

基本的には法律通りに

法令を下回る制度設計はできないため、育児時間を法定より条件を良くする以外、「育児時間」に関する就業規則の規定については、会社がアレンジできる余地はありません。

そのため、基本的には法律通りの内容を就業規則に定めることになるかと思います。

無給か、有給か

育児時間により、女性労働者が業務を行っていない時間についてはノーワーク・ノーペイの原則により、無給で問題ありません。

一方で、会社の裁量で有給とすることは可能です。

また、有給とする場合も、額の決定の仕方については会社の裁量となります。

就業規則「育児時間」の規定例

第○条(育児時間)

  1. 生後1年に達しない生児を育てる女性従業員が、あらかじめ申出た場合は、所定休憩時間のほか、1日に2回、1回につき30分の育児時間を与える。
  2. 前項の時間は無給とする。

規定の変更例

育児時間を有給とする場合

第○条(育児時間)

  1. 生後1年に達しない生児を育てる女性従業員が、あらかじめ申出た場合は、所定休憩時間のほか、1日に2回、1回につき30分の育児時間を与える。
  2. 前項の時間は有給とし、支払う額は所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金とする。

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