フレックスタイム制の導入方法|就業規則・労使協定の整備と提出手続き

フレックスタイム制を導入するには、単に「始業・終業時刻を自由にする」と会社が労働者に伝えるだけでは足りず、就業規則の整備や労使協定の締結といった、法令に沿った手続きを踏む必要があります。

特に、就業規則と労使協定の役割を取り違えたり、清算期間の定め方を誤ったりすると、フレックスタイム制を導入したつもりでも、適法に運用できていない状態になってしまうことがあります。

この記事では、フレックスタイム制を導入する際の流れを整理したうえで、就業規則および労使協定に定めるべき事項について、実務上のポイントを踏まえて解説します。

この記事でわかること
  • フレックスタイム制導入の全体的な流れ
  • フレックスタイム制導入にあたり就業規則に定める内容
  • 労使協定で必ず定めなければならない事項
  • 清算期間を1か月以内・1か月超で定める場合の違い
  • 監督署への労使協定の提出が必要となるケース
目次

フレックスタイム制導入の流れ

フレックスタイム制導入の流れは以下の通りです。

① フレックスタイム制の導入が必要かどうか検討

② 就業規則の整備

③ 労使協定の締結

④ 変更した就業規則を労働基準監督署に提出(1か月を超える清算期間を定めた場合は労使協定も提出)

以下で詳しく見ていきます。

フレックスタイム制の導入が必要かどうか検討

フレックスタイム制にはメリット・デメリットがあります。そのため、合う会社もあればそうでない会社もあります。

こうした判断を行うにあたっては、以下の記事でフレックスタイム制のメリット・デメリットを解説していますので、参考にしていただければと思います。

あわせて読みたい
フレックスタイム制とは|制度の仕組み・メリットとデメリットをわかりやすく解説 フレックスタイム制は労働者に人気のある働き方である一方、その内容は「出社時間を自由に決められる制度」といった、表面的な理解にとどまっているケースも少なくあり...

就業規則等の整備

フレックスタイム制を導入するには、就業規則(労働者が10人未満の場合は、それに準ずるもの)に、「始業時刻と終業時刻の両方を労働者にゆだねる旨」を記載する必要があります。

また、後述するフレックスタイム制の労使協定で必ず定めなければならない事項についても、就業規則で同様に定めを行います。これは労使協定だけでは業務命令権を確保できないため、就業規則でこれを補うためです。

規定例は以下のとおりとなります。(なお、規定例の第□条とは、始業・終業時刻を定めた条文を指します)

第○条(フレックスタイム制)

  1. 第□条にかかわらず、企画部に所属する従業員については、フレックスタイム制を適用し、当該従業員の始業・終業時刻については、従業員の自主的決定に委ねるものとする。
  2. 始業・終業時刻において従業員の自主的決定に委ねる時間帯(フレキシブルタイム)と、所属長の承認がないかぎり所定の労働に従事しなければならない時間帯(コアタイム)は、別表の通りとする。フレキシブルタイム
  3. 会社は、業務上必要があると判断した場合、フレックスタイム制の適用を受ける従業員の適用を除外することができる。
フレキシブルタイムコアタイム
始業 午前6時から午前10 時まで

終業 午後3時から午後7時まで

午前10 時から午後3時まで(正午から午後1時までの休憩時間を除く)

第△条(清算期間および総労働時間)

  1. フレックスタイム制を適用する従業員の標準となる1日の労働時間は8時間とする。
  2. 清算期間は1か月間とし、起算日は毎月○日とする。
  3. 清算期間中に労働すべき総労働時間は、8時間にその清算期間の所定労働日数を乗じた日数とする。

労使協定の締結

フレックスタイム制では、就業規則等への規定の他、労使協定を結ぶ必要があります。

労使協定には、以下の項目を定める必要があります。

  1. 対象となる労働者の範囲
  2. 清算期間
  3. 清算期間における起算日
  4. 清算期間における総労働時間
  5. 標準となる1日の労働時間
  6. (コアタイム)
  7. (フレキシブルタイム)

清算期間を「1か月を超える期間」定める場合

・有効期間

対象となる労働者の範囲

誰にフレックスタイム制を適用するかを定めます。

必ずしも全社員に適用する必要はありません

同じ会社内でも、SEのように1日のうちいつ仕事してもいいような業種にだけ適用して、外回りの営業のように早朝や夜中にするわけにはいかない仕事には適用しないということができます。

清算期間

フレックスタイム制を適用する期間のことです。

労働者は、清算期間内に、後述する「清算期間における総労働時間」の時間数、働くことになります。

以前は、清算期間は「1か月以内」でしか定めることができませんでしたが、2019年4月1日より「3か月以内」の期間で定めることができるようになりました。

清算期間における総労働時間

フレックスタイムのの清算期間の中で、労働者が「これだけは必ず働かないといけない労動時間」のことです。

いわば、フレックスタイム制における所定労働時間です。

一方、清算期間における総労働時間は、法定労働時間の中で収まっている必要があります。

この法定労働時間のことを、フレックスタイム制では法定労働時間の総枠といい、求め方は以下の通りとなります。

40時間(※)×(変形機日の暦日数÷7)

※ 業種やその規模によっては44時間。ただし、1か月を超える清算期間を定める場合は業種や規模にかかわらず40時間。

例えば、歴日数が31日の月の場合、177.14時間が法定の総労働時間の最大となります。

この例で、フレックスタイム制で清算期間における総労働時間を定める際は、177.14時間以下にしないといけません。

つまり、「法定労働時間の総枠≧清算期間における総労働時間」である必要があるわけです。

標準となる1日の労動時間

年次有給休暇を取得した際に支払われる賃金の算定基礎となる労働時間となります。

フレックスタイム制の中で、労働者は最低限この時間は働かなければいけない、という労働時間ではないので注意が必要です。

年次有給休暇の賃金の算定に使われるものなので、この時間を極端に短くすれば、有給分の給与をケチれることになりますが、清算期間とあまりにかけ離れた労動時間を定めるのは、当然マズイです。

コアタイムとフレキシブルタイム

コアタイムとは、この時間だけは必ず出社していないといけない、という時間です。

一方のフレキシブルタイムは、この時間からこの時間のあいだで始業・終業時刻を決定してくださいというもの。

どちらも、必ずしも定める必要はありませんが、これらがないと労働者の意思で深夜業も可能となるため、なるべく定めておいたほうが良いでしょう。

ただし、コアタイムがあまりに長い、あるいはフレキシブルタイムがあまりに短いのは制度の趣旨に反するため望ましくありません。

有効期間

1か月を超える期間の清算期間を定める場合、労使協定に有効期間を定める必要があります。

労使協定の提出義務

フレックスタイム制の労使協定については清算期間が1ヵ月以内の場合は労使協定等を監督署に提出する必要はありません、

一方、清算期間が1か月を超える場合は労使協定を監督署に提出する義務が発生します。

労使協定の様式例

労使協定の様式例については、厚生労働省や各都道府県の労働局がこれを公開しています。

参考:フレックスタイム制の労使協定(愛知労働局):愛知労働局(リンク先はPDF)

変更した就業規則を労働基準監督署に提出

フレックスタイム制を初めて導入する場合、就業規則の変更が行われるはずなので、変更した就業規則を監督署に提出する必要があります。

就業規則の提出に関する解説は以下の記事をどうぞ。

就業規則の提出方法ー提出を忘れていた場合や複数事業場がある場合も解説

フレックスタイム制の運用

導入の手続きが済んだら、いよいよ運用となるわけですが、運用に当たっては、労働時間や割増賃金の計算に注意する必要があります。詳しくは以下の記事をどうぞ。

あわせて読みたい
フレックスタイム制の労働時間と割増賃金|法定労働時間の総枠の考え方 フレックスタイム制は、始業・終業時刻を労働者に委ねる制度ですが、だからといって、会社が労働時間を管理しなくてよくなるわけではありません。 フレックスタイム制で...

▶ 就業規則の作成・見直しサービスを見る(名古屋の社労士が対応)

こちらの制度は、就業規則にどう定めるかでリスクが変わります。

制度理解だけでなく、自社に合った条文設計や運用まで落とし込むことが重要です。

「不安がある」「何していいかわからない」という方はぜひこちらを!

併せて読みたい関連記事

労務知識ガイドの一覧に戻る

よかったらシェアお願いします!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

社会保険労務士川嶋事務所の代表。
「会社の成長にとって、社員の幸せが正義」をモットーに、就業規則で会社の土台を作り、人事制度で会社を元気にしていく、社労士兼コンサルタント。
就業規則作成のスペシャリストとして豊富な人事労務の経験を持つ一方、共著・改訂版含めて7冊の著書、新聞や専門誌などでの寄稿実績100件以上あり。

社労士のすべてがわかる?四コマ
目次