就業規則の「半日単位年休」条文の作成のポイントと規定例

2024年3月22日

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就業規則の「半日単位年休」条文の作成のポイントと規定例

 

午前中に病院に行きたい、午後から子どもの授業参観がある、そういった労働者側の要望に応えるため、年次有給休暇の半日単位取得を認めている会社は多いと思います。

年次有給休暇の半日単位で取得については法律に定めのない部分ではあるものの、年次有給休暇自体のルールから外れるような運用は認められません。

そのため、本記事では、法律に則った正しい半日単位取得について、就業規則の規定と併せて解説を行っていきます。

 

法令から見た「半日単位年休」のポイント

年次有給休暇の取得の原則は「1日単位」

年次有給休暇の取得単位の原則は「1日」です。

例外的に、労使協定を締結する場合は時間単位(1時間単位)での年次有給休暇の取得も可能です。

では、半日単位取得の立ち位置はどうかというと、実は半日単位年休に関しては、法律上、特に定めはありません。

 

通達における半日単位取得

ただし、以下のように、行政の通達では、半日単位年休について触れられているものがあります。

法第39条に規定する年次有給休暇は、一労働日を単位とするものであるから、使用者は労働者に半日単位で付与する義務はない。(昭和63年3月14日基発150号)

つまり、会社としては半日単位年休制度を定める義務自体がなく、会社が認めないのであれば、労働者に半日単位での年次有給休暇の取得を認めなくても構わないというわけです。

とはいえ、これは半日単位で取得させてはいけない、ということを意味しません。

労働者から請求がある場合で、会社が任意に与える限り、半日単位での年休の取得は問題ないわけです。

 

年5日取得と半日単位年休

年5日の取得の中に半日単位取得分を含めることは可能

半日単位年休を取得した分については、会社に義務づけられている年5日の取得に含めて良いとされています。

つまり、半日単位年休を2回取った場合の1日分を、年5日の取得に含めて良いということです。

これは、仮に1日分の時間単位年休を取得したとしても、年5日の取得に含められない時間単位年休と大きく違う点です。

 

半日単位での指定は可能か

また、年5日の取得にあたっては、労働者が年5日分の取得を行わない場合、会社が年次有給休暇の取得時季を指定していいとされています。

この際、会社は半日単位の年休の指定をできるのか、という疑問が生まれます。

これについて、厚生労働省は労働者の希望ないし同意が必要、としていますが、厚生労働省の見解に法的な根拠がないことを理由に可能と考える専門家もいるようです。

ただ、ダブルトラックが発生すると、取得義務の日数に1日未満の端数が生まれるため、この部分に限っては、労働者の同意等がなくても、半日単位の指定は可能と考えられます。

 

 

「半日単位年休」条文の必要性

「休暇」に関することは就業規則の絶対的必要記載事項に当たります。

年次有給休暇は「休暇」ですので、半日単位年休を認める場合は就業規則にその定めが必要となります。

 

 

「半日単位年休」条文作成のポイント

半日の考え方

労働基準法では、原則として1日を暦日で考えます。つまり、午前0時から午後12時を1日と考えるわけです。

この1日の半日ということは、午前0時から正午、正午から午後12時に分けるのが本来の、法律に基づいた考えといえます。

ただし、実務上は必ずしも正午を基準に考えないといけないということはなく、監督署もその辺を厳しく見ている節もないため、所定労働時間を半分にするような分け方でも、特に問題はないと考えられます。

 

始業・終業時刻を定める

半日単位年休を取得すると、その日の始業・終業時刻に変更が加わります。

始業・終業時刻については就業規則の絶対的必要記載事項に当たるため、半日単位年休の条文には必ず、変更が加わった後の始業・終業時刻を記載しておく必要があります。

 

半日単位取得が可能な限度

労働者に対し、半日単位年休を無制限に認めてしまうと、最大80日もの半日単位年休の取得が可能となってしまいます。

それでも構わないのであれば別に良いのですが、実際には業務の遂行上、問題が発生する会社の方が多いことでしょう。

また、そもそも年次有給休暇の原則は1日単位での取得であり、それを踏まえて時間単位年休については年5日までという限度が設けられていることを考えると、半日単位年休についても一定の限度を設けておく方が無難といえます。

 

 

就業規則「半日単位年休」の規定例

第○条(半日単位年休)

  1. 従業員は、会社が認めた場合、半日単位で年次有給休暇をの取得することができる。
  2. 年次有給休暇を半日単位で取得をした場合、0.5日分の年次有給休暇を取得したものとして取り扱う。
  3. 年次有給休暇の半日単位での取得は、付与日からの1年間で○回までを限度とする。
  4. 半日単位の年次有給休暇を取得した場合の始業・終業時刻は次の通りとし、休憩はなしとする。
    ① 前半休 午後2時~午後6時
    ② 後半休 午前9時~午後1時

 

 

規定の変更例

半日単位年休を午前休と午後休に分ける場合

第○条(半日単位年休)

  1. 従業員は、会社が認めた場合、半日単位で年次有給休暇をの取得することができる。
  2. 年次有給休暇を半日単位で取得をした場合、0.5日分の年次有給休暇を取得したものとして取り扱う。
  3. 年次有給休暇の半日単位での取得は、付与日からの1年間で○回までを限度とする。
  4. 半日単位の年次有給休暇を取得した場合の始業・終業時刻は次の通りとする。
    ① 午前休 午後1時~午後6時(休憩45分)
    ② 午後休 午前9時~正午

 

 

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社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。行動経済学会(幽霊)会員 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

2024年3月22日