産前産後休業とは、母体の保護のため、子どもを産む前および子どもを産んだ後の女性に認められている休業です。
産前産後休業については、就業規則の規定としては取り立てて注目すべき点は少なく、法律通りに定めるのが一般的です。
一方、女性の妊娠出産に関しては、健康保険の出産手当金や育児介護休業法の育児休業など、他の制度との関係が複雑になりがちなので注意したいところです。
この記事の目次
1. 法令から見た「産前産後休業」のポイント
1.1. 産前産後休業の概要
産前産後休業とは
産前産後休業とは産前産後休業とは、産前の6週間(多胎妊娠の場合は14週間)と、産後の8週間の就業を禁止するものです。
ただし、産前については女性労働者から請求があった場合のみ就業禁止で、産後については請求の有無にかかわらず就業は禁止です。
また、産後であっても、産後6週間を経過した女性で、医師が支障がないと認めた場合に限っては就業させることができます。
女性労働者からの請求
概要にあるとおり、産前に関しては女性労働者から請求があった場合のみ、会社はその女性労働者を就労させることができません。
逆にいうと、女性労働者から請求がない場合、就労させることは問題ないわけです(もちろん、体調は問題ないかの確認など一定の配慮は求められます)。
産後については前述の通りです。
出産の範囲
産前産後休業における出産の範囲とは「妊娠4か月以上の分娩」をいい、生産のみなならず死産を含みます(昭二三・一二・二三 基発一八八五号)。
ここでいう1か月とは、歴月ではなく「1か月28日」で計算するため、ここでいう4か月以上とは「85日以上」となります。
そのため、妊娠中絶であっても妊娠4か月が過ぎた後であれば、産前産後休業が適用されます。
出産当日の扱い
出産当日は産前の6週間に含まれます。(昭二五・三・三一 基収四○五七号)
出産予定日から出産日が延びた場合
出産予定日が延びた場合、その分、産前休業は延長されます。
1.2. 健康保険の出産手当金との関係
出産手当金とは出産日以前42日(多胎妊娠の場合は98日)から出産日の翌日以降56日までの範囲内で、女性労働者が会社を休み、給与の支払いがなかった期間を対象に、健康保険から支払われる手当金です。
出産前42日(6週間)、出産後56日(8週間)からわかるとおり、出産手当金は産前産後休業の期間を対象に支払われるものです。
出産手当金について詳しくは、けんぽ協会のHPをご覧ください。
1.3. 育児休業との関係
少しややこしいのですが、産前産後休業と育児休業はまったく異なる制度です。
そして、産前産後休業は女性のみが取れる制度である一方、育児休業は男女関係なく取得が可能です。
この2つは同時取得はできないので、女性の育児休業については産後休業終了から子が1歳になるまで取得することになります。
一方、男性育児休業については産後休業がない代わりに、子の出産予定日から育児休業を取得することが可能です。実際の出産日が遅くなっても速くなっても出産予定日から取得できるので、場合によっては子どもが生まれる前から育児休業を取得することもできます。
2. 「産前産後休業」条文の必要性
産前産後休業は法律に定めのある制度であり、また「休業」については就業規則の絶対的必要記載事項となるため、産前産後休業の規定は必須となります。
3. 「産前産後休業」条文作成のポイント
3.1. 基本的には法律通りに
法令を下回る制度設計はできないため、産前産後休業の条件を法定よりもよくする以外、「産前産後休業」に関する就業規則の規定については、会社がアレンジできる余地はありません。
そのため、基本的には法律通りの内容を就業規則に定めることになるかと思います。
3.2. 無給か、有給か
産前産後休業により、女性労働者が業務を行っていない時間についてはノーワーク・ノーペイの原則により、無給で問題ありません。
一方で、会社の裁量で有給とすることは可能ですが、その場合、健康保険の出産手当金がもらえなくなる可能性があるので注意が必要です。
4. 就業規則「産前産後休業」の規定例
第○条(産前産後休業)
- 会社は、6週間(多胎妊娠の場合にあっては14週間)以内に出産する女性従業員から請求があった場合は、本人の希望する日から産前休業を与える。
- 会社は、女性従業員が出産したときは、8週間の産後休業を与え、就業させることはない。ただし、産後6週間を経過し本人が就業を申し出た場合は、医師が支障がないと認めた業務に限り就業させる。
- 前各項の休業期間は、無給とする。
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