就業規則の「表彰」条文の作成のポイントと規定例

「会社に貢献してくれた社員を表彰したい」

「社員に頑張ってもらうために表彰制度を設けたい」

表彰制度を設ける理由は会社によって様々です。

また、表彰制度は法律に縛られず、会社がそのルールを自由に定められるため、会社の個性が出やすい制度ともいえます。

この記事では、そんな表彰制度を設ける際の、就業規則上の注意点について解説していきます。

この記事でわかること
  • 就業規則における「表彰」条文の法的位置づけと、表彰制度がある場合に記載が必要となる理由
  • 表彰制度を設ける目的を明確にする重要性と、形骸化させないための考え方
  • 表彰制度を廃止・変更する際に、労働条件の不利益変更や労使慣行として問題となるケース
  • 会社の実情に合わせて使える「表彰」条文の基本的な規定例と、表彰制度がない場合の対応方法
目次

「表彰」条文の必要性

表彰は、就業規則の相対的必要記載事項となります。

そのため、労働者の表彰制度がある会社については、就業規則への表彰条文の記載は必須となります。

ただし、会社に表彰制度を設けることは法律上の義務ではないこともあり、労働者の表彰制度がない会社については定める必要はありません。

「表彰」条文作成のポイント

表彰を設ける理由

法律上の義務ではないにもかかわらず、多くの会社で表彰制度を設けているのはなぜか、といえば、その理由は会社によって様々です。

功労があった者に対して何かしてあげたいという気持ちからの場合もあればば、労働者のモチベーションやモラールの向上を期待する場合もあります。

とはいえ、ただ漫然と表彰を行っても、労働者側がそれに応えてくれるとは限りません。

そのため、制度を設けるのであればきちんと目的をもって、それに合わせた表彰事由を定めるべきでしょう。

表彰制度をなくす場合、労働条件の不利益変更となることも

金一封や副賞を贈呈している場合は特に注意

設けた表彰制度を後になってなくすという場合、労働条件の不利益変更となる可能性があります。

特に、表彰の際に金一封や副賞を授与している場合、そうした贈呈がなくなるので、その可能性は高まります。

では、こうした特典を、就業規則等でルール化されていない場合はどうでしょうか。

実は、仮に就業規則等でルール化や明文化がされていなくても、それが「労使慣行」として認められる場合、それを労働者に不利な形で変更することは、労働条件の不利益変更となります。

そのため、やはり後で表彰制度をなくす、ということには慎重になる必要があります。

労使慣行が成立する要件

前項の労使慣行が成立する条件についてもみておきましょう。

労使慣行の成立には以下の4つの要件をすべて満たす必要があるとされています。

①長期にわたり反復継続されてきたこと、

②労使双方が慣例に対して規範意識を持って従ってきたこと

③事実上の行為準則として機能していること

④当事者が明示的にこれを排除していないこと

労使慣行の成立とその改廃及び就業規則との関係(出典:戸谷義治 琉球大学学術リポジトリ リンク先PDF)

なお、上記の①から④の要件を満たしていたとしても、労働基準法等に違反する場合、その効力は否定されます。

就業規則「表彰」の規定例

第○条(表彰)

  1. 従業員が次の各号のいずれかに該当する場合には、その都度審査の上、表彰する。
    ① 業務上有益な創意工夫、改善を行い、会社の運営に貢献したとき
    ② 長年にわたって誠実に勤務し、その成績が優秀で他の模範となるとき
    ③ 事故、災害等を未然に防ぎ、または非常事態に際し適切に対応し、被害を最小限にとどめるなど特に功労があったとき
    ④ 社会的功績があり、会社および従業員の名誉となったとき
    ⑤ そのほか前各号に準ずる功労が認められたとき
  2. 表彰は、表彰に該当する事由がある度その都度行う。

規定の変更例

表彰がない会社の場合

 (条文を削除。また、他の規定等に表彰等が書かれている場合はそれらも削除)

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