就業規則の「災害補償」条文の作成のポイントと規定例

2024年3月15日

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就業規則の「災害補償」条文の作成のポイントと規定例

 

就業規則の最後の方を見てみてください。

そこには「災害補償」という条文がほぼ間違いなく設けられています。でも、活用したことはない、という会社がほとんどではないでしょうか。

それもそのはず。いわゆる「災害補償」というのは、今の時代、ほぼ労災保険で対応するからです。

それでも、就業規則には定められている「災害補償」とは何なのか。

この記事では、就業規則の「災害補償」条文の作成のポイントと規定例と併せて、労災保険との関係についても解説していきます。

 

1. 法令から見た「災害補償」のポイント

1.1. 労働基準法上の災害補償

会社で労働災害が起こった際、労働基準法は会社に対しその補償をすることを義務づけています。

例えば、業務災害による負傷や疾病にかかった費用については、会社の費用で行うか、もしくはかかった分を会社が負担しないといけないとされています。(療養補償)

また、業務災害による負傷や疾病のため休業する場合、平均賃金の100分の60を支払わないといけません。(休業補償)

このほか、打切補償や障害補償、遺族補償、分割補償、葬祭料といった補償が労働基準法には定められています。

参考:労働基準法|e-Gov 法令検索

 

1.2. 災害補償と労災保険との関係

ですが、こうした労働基準法の災害補償を実際に会社が行うことはまずありません。

なぜなら、労働基準法では「この法律に規定する災害補償の事由について、労働者災害補償保険法又は厚生労働省令で指定する法令に基づいてこの法律の災害補償に相当する給付が行われるべきものである場合においては、使用者は、補償の責を免れる。」とされているからです。

つまり、労災保険から労働基準法の災害補償と同等の給付が行われる場合、労働基準法の災害補償は行わなくよいとされているわけです。

たまに「社員の労災保険加入手続きを取らなくても大丈夫か」「労災保険料を労働者から徴収しないのか」といった質問をもらうことがありますが、上記からわかるとおり、労災保険は本来会社が補償しなければならないもの(労働基準法の災害補償)を代わりに補償する制度です。なので、労働者ではなく、会社が加入し保険料を収める制度となっているわけです。

 

1.3. 労働基準法の災害補償が使われる場面

以上のことから、労働基準法の災害補償が実際に使われることはほとんどありません。ただ、それでもないわけではありません。

具体的には、労働災害により休業する場合の、最初の3日間の休業補償です。

労災保険の休業(補償)給付は、3日間の待機期間を置いて、それでも休業が必要な場合、休業(補償)給付が給付されます。

つまり、この3日間の待機期間中は労災から給付がないため、労働基準法の災害補償で対応しなければならないわけです。(あくまで最初の3日の休業が対象なので、休業が1日や2日で終わった場合も休業補償は必要)

なお、労災保険の暫定任意適用事業(※)で、労災保険に加入していない場合、そもそも労災保険の給付が受けられません。そのため、労働災害が起こった場合は労働基準法の災害補償を行う必要があります。

※ 農林水産の事業のうち、常時使用労働者数が5人未満の個人経営の事業のことを。なお、労災保険では、農業に限り事業主が特別加入をする場合には、常時使用労働者数が5人未満であっても適用事業となる。

 

2. 「災害補償」条文の必要性

災害補償は就業規則の相対的必要記載事項となります。

労働基準法上の会社の義務であるため、基本的に本条文を省略するということはありません。

 

 

3. 「災害補償」条文作成のポイント

3.1. 法律内容どおりに記載する

ここまで見てきたとおり、一部を除き、実務上はあまり使うことのない規定です。ただ、就業規則の相対的必要記載事項ではあります。

そのため、会社に合わせて規定を変えるというよりは、必要なことを最低限定めておくことが肝心です。

 

 

4. 就業規則「災害補償」の規定例

第○条(災害補償)

  1. 従業員が業務上負傷しまたは疾病にかかったときは、労働基準法の規定に従って、療養補償、休業補償、傷害補償を行う。また、従業員が業務上負傷し、または疾病にかかり死亡したときは労働基準法の規定に従い遺族補償および葬祭料を支払う。
  2. 補償を受けるべき者が、同一の事由について労働者災害補償保険法から前項の災害補償に相当する保険給付を受けることができる場合、その価額の限度において前項の規定を適用しない。
  3. 1項により補償を受けるべき者が、同一事由について民法による損害補償または自動車損害賠償責任保険法に基づく給付を受けた場合は、その価額の限度において1項の規定を適用しない。
  4. 業務上の負傷または疾病に係る休業により賃金が支払われない期間の社会保険料の従業員負担分については、原則として、各月分を会社が立て替えた後に本人に請求するものとし、従業員はその請求月の翌月末日までに支払うものとする。
  5. 業務上の傷病が療養開始後3年を経過しても治らないときは、打切補償を行い、その後の補償は行わない。なお、療養開始後3年を経過した際に、労働者災害補償保険法の傷病補償年金を受けている場合、または同日後に傷病補償年金を受けるに至った場合、打切補償を支給したものとみなす。
  6. 従業員が故意または重大な過失によって負った傷病等について、労働者災害補償保険法から不支給の決定が出た場合、会社も災害補償を行わない。

 

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6. その他の就業規則作成のポイントと規定例

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社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。 「会社の成長にとって、社員の幸せが正義」をモットーに、就業規則で会社の土台を作り、人事制度で会社を元気にしていく、社労士兼コンサルタント。 就業規則作成のスペシャリストとして豊富な人事労務の経験を持つ一方、共著・改訂版含めて7冊の著書、新聞や専門誌などでの寄稿実績100件以上あり。

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